川井弘子先生の声楽講座に行って来ました。今回は耳鼻咽喉科医師で東京芸大で音声学も担当されている三枝英人氏とのコラボ講座で、前半が声帯が振動する様子や食物を嚥下(飲み込む)様子などの動画を交えた三枝氏のプレゼンテーションで、後半がいつも通りの川井先生の受講生の歌唱をその場で種々矯正するというものでした。
三枝先生に対する受講生の質問に、「高齢になると声帯がやせてくると思うのですがそれを防ぐ良い体操等はありませんか?」というものがありました。三枝先生の回答は、「加齢によって声帯がやせるということは(ほとんど)ないと思います。声帯が衰えるのではなく、内臓が弱る等の他の要因が声に影響していると思います。」とのことでした。高齢になっても歌い続けたいのであれば、声帯の衰えを防ぐためではなく、腹式呼吸によって上下に動かす刺激を与えることによって胃や腸を健康に保つことが重要ではないか、という趣旨の説明をされていたと私は受け取りました。
ただし、加齢によって男性の声域は高く女性の声域は低くなる傾向はあるとのこと。その原因は性ホルモンの分泌が減るからだそうです。
加齢によって声が支えられなくなるという質問は、以前から川井先生の講座では何度も質問されてきていて、その度ごとに川井先生が同じ回答をされています。それは、歳をとったから歌えなくなるというのではなく、それ以前に正しい歌い方を身につけていれば何歳になっても日常生活が普通に遅れる程度の健康を維持していれば普通に歌い続けることができる、という趣旨だと私は理解しています。若い、と言っても必ずしも20代や30代ということではなく、40代・50代でも、あるいは60代以降であっても正しい歌い方=技術を身につけていれば歌い続けられる、ということ。加齢によって歌うことに何らかの困難を感じてしまう人は、正しい歌い方=技術を身につけることなく望ましくない代替手段・代替技術、その多くは何らかの力任せ???で歌って来たためその筋力等が衰えてくると、それまで通じていたごまかし方ではごまかせなくなる、ということだと思います。正しい歌い方・正しい技術では全体のバランス重視で、必要なところだけに必要かつ十分なだけの力を使い、他のところは脱力してリラックスする。したがって理想的な歌唱技術のポイントをスイートスポットというのであれば、そのスイートスポットで歌っているときはほぼ全身がリラックスできてなおかつ必要な所にだけ必要なだけの力を加えている状態となっていて、無駄なリキミとは無縁な状態になっています。そして必要な所に必要なだけの力というのが息の支えということになります。
正しい歌唱技術を身につけていれば、普通に歩ける間は普通に歌えると思います。また声楽だけでなく、器楽=楽器演奏についても正しい演奏技術を身につけていれば普通に歩ける間は、少なくともピアノ等を除く、自分が演奏する楽器を自分で持ち歩ける間は、演奏できるのではないでしょうか?