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生涯を完結させるまでに歌いたい歌、最近始めたヴァイオリンとフルートはどこまで演奏できるようになるか、と時々ワンコ

死は人生の終末ではない。 生涯の完成である。(ルターの言葉)
声楽とヴァイオリン、クラシック音楽、時々ワンコの話。

題名のない音楽会でリリ・ブーランジェの作品「春の朝に」が演奏されていました。

2016-12-11 23:44:54 | リリー・ブーランジェ

 本日の題名のない音楽会の題名は「女性指揮者の音楽会」で、三ツ橋敬子マエストラが神奈川フィルを指揮して、リリ・ブーランジェの「春の朝に」と、クララ・シューマンのピアノ協奏曲第一番の第一楽章と、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」を振っていました。

 リリ・ブーランジェの演奏がテレビで放送されているのを見る(聞く)のはこれが初めてという気がします。「春の朝に」は声楽を伴わない管弦楽作品で、ラヴェルに通じるような色彩感に溢れた前に前にと進んでいく明るい曲です。「D'un matin de printemps」で検索すれば動画サイトの音源が多数ヒットします。5分弱の作品のようなので気楽に聞けると思います。興味を感じられた方は是非お聞き下さい。どうやら管弦楽版だけでなくピアノ伴奏を伴う器楽独奏の音源も幾つかの楽器で複数アップされているようです。日本ではあまり知られていないかもしれませんが、ヨーロッパや特にフランスでは人気曲かもしれません。

 題名のない音楽会の中でも、リリ・ブーランジェは女性で初めて「ローマ大賞」を受賞した作曲家として紹介されていました。ここで「ローマ(大)賞」についてwikipediaの記載を引用させてもらって紹介すると、1663年にルイ14世によって建築、絵画、彫刻、版画に対して設けられ、王立アカデミーの審査により入賞者が選考され、毎年の1位と2位の者にローマに留学するチャンスが与えられたそうです。1803年に音楽も対象に加えられ、カンタータ(交声曲)の作曲が課題とされていました。ところで音楽賞には30歳までという年齢制限が設けられていて、モーリス・ラヴェルは入賞こそしているものの1位を取ることは出来なかったとか、リリ・ブーランジェが応募した際も審査員の事前の政治的取り決めで2位にしようと決めていたにも関わらず、リリ・ブーランジェの応募曲「ファウストとエレーヌ」の演奏が始まると、その演奏が終わる前にリリ・ブーランジェを1位にすることに決めたということが伝わっているそうです。何れにせよ最終投票をする審査員40名中音楽関係者は僅かに5名で、残りの35名は建築や美術の関係者だったことから、音楽的に斬新過ぎると理解しきれない建築・美術関係の審査員から支持されず入賞できない傾向があったのは確かなようです。ラヴェルが1位を取れなかったことも、その様な審査員の構成があったことは間違いないでしょう。そしてラヴェルが1位を取れなかったことでローマ大賞の改革を求める声が高まり、ローマ大賞ひいてはパリ高等音楽院の改革にもつながって行ったそうです。

 リリ・ブーランジェはローマに留学したものの、健康上の理由で留学期間の中途で帰国せざるを得ず、24歳の若さで1918年の3月15日にその生涯を閉じました。2018年が没後100年のメモリアルイヤーになりますので、日本においても記念演奏会が多数行われないかと期待しています。


Lili Boulanger  Quatre Melodies: Attente  Reflets Le Retour  Dans l'immense tristesse

2015-03-30 22:28:09 | リリー・ブーランジェ
 リリ・ブーランジェ歌曲集というCDに、歌曲集「空の開けたところ」とカップリングされているのがこの「4つの歌」ですが、残念ながらペトルッチ(IMSLP)に楽譜は公開されてなく、頼みの梅丘歌曲会館にも取り上げられていません。Amazon.com、Amazon.uk、さらに読めないのを承知でAmazon.frまで楽譜が販売されていないか探してみましたが見つかりません。

 動画サイトで検索してみると、4曲のうちの1曲目から3曲目までは音源がアップされているのを確認しました。私が購入したCDを含め全てソプラノと思われる女声が歌っています。調性音楽の範疇に納まりつつも緊張感の強い和声が其処かしこで何気なく鳴っています。自己の存在を主張しすぎない控えめなピアノですが、私にはリリ・ブーランジェらしさ、リリの個性・アイデンティティを感じます。何れも静かな穏やかな曲でありながら静かな緊張感があり、リリ・ブーランジェらしい浮遊感を感じます。

 音源以外に情報が無いので、これ以上コメントすることがありません。せめてそれぞれの曲のタイトルの和訳を載せておきましょう。

 Attente=待つこと Reflets=反射 Le Retour=復帰 Dans l'immense tristesse=大きな悲しみ

 楽譜さえ入手できれば自分でも歌って見たいと思っています。何とか楽譜を入手できないか今後もトライし続けます。

L. Boulanger  Elle était descendue au bas de la prairie  彼女は野原を谷間へと降りていった

2014-11-21 00:12:00 | リリー・ブーランジェ
 フランシス・ジャムの詩によるリリー・ブーランジェの歌曲集「空の広がり」全13曲の最初の曲が「Elle était descendue au bas de la prairie」、かの「梅丘歌曲会館」に原詩と日本語訳が公開されていて、この記事の曲名の日本語訳はそこから引用させて頂いています。

 詩を読む限り、少年から青年への過渡期の異性への思いを歌った、詩に基づけば男声が歌うべき歌と思われますが、動画サイトの音源では女声が歌っているものしか見当たりません。

 リリー・ブーランジェの曲を聴き始めてからそれなりにイメージを育んできましたが、この曲はリリー・ブーランジェの作品としては力強さとかスケール感が前面に出てこずに、ぬくもりにつつまれたアンニュイ感といいますか、春の霞がかかった詩に歌われている通りの花畑の情景が浮かんで来ます。特にピアノ伴奏の雰囲気が良いですね。歌いすぎず、歌の旋律に寄り添わず付かず離れずの程よい距離感を保って、声を浮かび上がらせてくれます。ただ、E-durで上のAを2拍半ppで伸ばす箇所があります。今の私には厳しいので、長2度下げてD-durにすれば歌いこなせるかと思います。

 最近は日本の音大声楽科を卒業してからフランスへ留学される方がめずらしくなくなっている様に思います。が、リリー・ブーランジェを勉強して日本に戻っている声楽家はどれくらいおられるのでしょうか。フランスもののコンサートを狙って通っていれば、そのうち出会えると良いのですが。リリー・ブーランジェ没後100年となる2018年までに出会えて教えを受けられればと願っています。

Lili Boulanger Hymne au Soleil    リリー・ブーランジェ  太陽賛歌

2014-11-18 22:04:16 | リリー・ブーランジェ
 コントラルト独唱と合唱のための「太陽(への?)賛歌」です。動画サイトに複数の音源がありますが伴奏はいずれもピアノなのでオリジナルもピアノ伴奏によると思われます。ペトルッチ(IMSLP)サイトでピアノ伴奏楽譜が公開されています。ピアノのパートは通常の高音部譜表と低音部譜表との大譜表で、普通に伴奏してもらえそうです。3分半程度の小品と言えば小品ですが、スケール感はなかなかに雄大なものがあります。太陽を讃える直截な感情の高揚があります。

 ABA’形式で、Aの部分が混声四部、Bがコントラルト独唱になります。Bのコントラルト独唱部のみを抜き出して独唱用のコンサートピースとして歌うにはいささか短いと思います。

 各パート一人づつのカルテット+コントラルト独唱のクインテットで歌っても良いと思ったら、後半のA’で一小節分だけ男声がdiv.して男声四部になるんですね。そうすると合唱の各パートを二人づつにして9名で歌うのが良いかもしれません。暫く顔出していませんが会社の合唱サークルの常連メンバーで歌うのに人数的にはちょうど良いようにも思われます。だけど他のメンバーにとってはフランス語というハードルは高そうだなぁ。そうそうペトルッチに公開されている楽譜には英語の歌詞も載っているので、多少雰囲気は変りますが「Hymn to the Sun」ということで提起してみますか。あせらずに2018年の没後100年のメモリアルイヤーに何とか歌ってみたいものです。

A.Musset L.Boulanger Pour les funérailles d’un soldat ブーランジェ 兵士の葬儀のために

2014-11-17 22:18:37 | リリー・ブーランジェ
 アルフレッド・ド・ミュッセの詩に、リリー・ブーランジェ作曲の、バリトン独唱と合唱のための「兵士の葬儀のために」です。8分程の曲ですがオーケストラ版がオリジナルでしょう。動画サイトに四つほど音源がありましたが全てオーケストラ版です。また四つの内の三つに生の映像が貼られていましたが、全て(ヨーロッパの?)教会の様でコンサートホールで収録されたと思われるものはありません。おそらく全ての音源はオフマイク(音源から離れた位置)でステレオワンポイントかそれに準じるマイクセッティングで録音されたようで、雰囲気は良いのですが個別の音源の分離は良くなく、弱音部の声は楽器の音に消されがちではあります。

 ペトルッチ(IMSLP)のサイトでピアノ伴奏版が公開されています。全体の半分くらいはピアノパートの五線が三段組になっています。音の密度、同時に鳴る音の数自体はさほど多くはありません。オーケストラ版からピアノ版にリダクションするときにかなり音を間引いているのかも知れません。

 長めの前奏の後、バスがパートソロで歌い、その後間奏、続いてテノールのパートソロが入り、混声四部に引き継がれ、一小節だけ重なる形でテノール・バリトン・バスの男声三部に受け継がれ、三連譜の連打のアレグロアジタートの間奏が入り、ピアノは三連譜をひたすら打ち続けながらバリトンの独唱となります。そして再びレントに戻り混声四部で静かに終わります。

 このバリトン独唱部だけを抜き出して歌ってもさほどおかしくはないと思います。バリトン独唱部分のピアノ伴奏譜は通常の2段組みの大譜表なので普通の腕前のピアニストであれば特に問題なく弾いてもらえると思いますし。幸い大人の学芸会にはフランス音楽大好きなピアニスト氏が複数いるので声をかけてみましょう。リリー・ブーランジェチクルスやりますよ!