本日の題名のない音楽会の題名は「女性指揮者の音楽会」で、三ツ橋敬子マエストラが神奈川フィルを指揮して、リリ・ブーランジェの「春の朝に」と、クララ・シューマンのピアノ協奏曲第一番の第一楽章と、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」を振っていました。
リリ・ブーランジェの演奏がテレビで放送されているのを見る(聞く)のはこれが初めてという気がします。「春の朝に」は声楽を伴わない管弦楽作品で、ラヴェルに通じるような色彩感に溢れた前に前にと進んでいく明るい曲です。「D'un matin de printemps」で検索すれば動画サイトの音源が多数ヒットします。5分弱の作品のようなので気楽に聞けると思います。興味を感じられた方は是非お聞き下さい。どうやら管弦楽版だけでなくピアノ伴奏を伴う器楽独奏の音源も幾つかの楽器で複数アップされているようです。日本ではあまり知られていないかもしれませんが、ヨーロッパや特にフランスでは人気曲かもしれません。
題名のない音楽会の中でも、リリ・ブーランジェは女性で初めて「ローマ大賞」を受賞した作曲家として紹介されていました。ここで「ローマ(大)賞」についてwikipediaの記載を引用させてもらって紹介すると、1663年にルイ14世によって建築、絵画、彫刻、版画に対して設けられ、王立アカデミーの審査により入賞者が選考され、毎年の1位と2位の者にローマに留学するチャンスが与えられたそうです。1803年に音楽も対象に加えられ、カンタータ(交声曲)の作曲が課題とされていました。ところで音楽賞には30歳までという年齢制限が設けられていて、モーリス・ラヴェルは入賞こそしているものの1位を取ることは出来なかったとか、リリ・ブーランジェが応募した際も審査員の事前の政治的取り決めで2位にしようと決めていたにも関わらず、リリ・ブーランジェの応募曲「ファウストとエレーヌ」の演奏が始まると、その演奏が終わる前にリリ・ブーランジェを1位にすることに決めたということが伝わっているそうです。何れにせよ最終投票をする審査員40名中音楽関係者は僅かに5名で、残りの35名は建築や美術の関係者だったことから、音楽的に斬新過ぎると理解しきれない建築・美術関係の審査員から支持されず入賞できない傾向があったのは確かなようです。ラヴェルが1位を取れなかったことも、その様な審査員の構成があったことは間違いないでしょう。そしてラヴェルが1位を取れなかったことでローマ大賞の改革を求める声が高まり、ローマ大賞ひいてはパリ高等音楽院の改革にもつながって行ったそうです。
リリ・ブーランジェはローマに留学したものの、健康上の理由で留学期間の中途で帰国せざるを得ず、24歳の若さで1918年の3月15日にその生涯を閉じました。2018年が没後100年のメモリアルイヤーになりますので、日本においても記念演奏会が多数行われないかと期待しています。