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総合型地域SCについて22

2017-03-03 00:01:21 | 総合型地域SC・地域振興

 リスペクト(事例紹介)コラムです。
 先日、スポナビのコラムに懐かしいキーワードが出てきました。「フェライン」という言葉ですが、読者の皆さん、ご存じでしょうか。これを知っている方は相当スポーツ文化や、総合型地域SCに詳しい方です。以前のこの記事で当ブログで紹介しましたが、その後もネット上ではほとんど出てこない言葉です。そのコラムを以下、抜粋して紹介。
   
【Jクラブの存在意義をあらためて考える】
 今年は、DAZN元年でもあり、こんな機会だからこそ、5年後、10年後を見据えた健全で地域に密着したクラブ経営を目指して欲しい。それを実現するためにも、Jクラブがそれぞれのホームタウンに暮らす人々にとってどのような存在であるべきか、今一度考えることが重要。かつてJリーグを発足するにあたり手本にしたドイツ・ブンデスリーガに所属するクラブの在り方を、あらためて掘り下げて紹介。きっと、Jクラブがホームタウンの地域住民からの帰属意識を高める上で、非常に重要なヒントとなるのではないか。
【ドイツのクラブはすべてが「フェライン」】
 日本ではJ1からJ3までの54クラブのうち53クラブは、株式会社という運営形態。暗黙のうちにどこのクラブもプロ化する段階で株式会社を設立するのが実情。一方ドイツでは、ドイツ国内に存在する約25,000のサッカークラブが「フースバルフェライン」(レヴァークーゼンのみ唯一の例外)。
 ふースバルはサッカー、フェラインとは本来「一つになる」という意味を内包し、仲間や同志の集まりを意味。英語ではアソシエーション、日本語では協会、社団に相当し、日本では特定非営利活動法人(NPO)に近い存在。ちなみにその中でも、法人格のあるものを登記法人「eingetragener Verein(e.V.)」と言い、フースバルフェラインはすべてがこの「e.V.」。
 フェラインはある特定の目的を持った人間が最低7人集まれば簡単に設立可能。申請が比較的簡潔であることに加え、公益性の認証を受ければ、税制上の優遇処置や、小規模であれば、フェライン会員が所得税控除を受けられる処置も。設立の目的も自由であることから、ドイツには趣味趣向に合わせて、消防団、自然保護、青少年育成、子育て、病人、高齢者介護、合唱、オーケストラ、音楽隊、スポーツ、観光、民族、園芸など、多種多様なフェラインが存在。ちなみにスポーツを目的とした「スポーツフェライン」は、ドイツ国内に約9万存在するが、そのうちの約25,000がフースバルフェラインで全体の約1/4。

 ちなみに今では、ブンデスリーガに所属する多くのクラブは、トップチームを運営する営利団体を保有。ドイツサッカー協会(DFB)が'98年より運営会社の設立を許可したことで、'99年にはドルトムントがボルシア・ドルトムント有限株式合資会社を、また'02年にはバイエルンがバイエルン・ミュンヘン㈱を設立。そして'16-17シーズン現在では、31の運営会社が設立(1部14社、2部6社、3部6社、4部5社)。ちなみにDFBが運営会社設立を認めた大きな理由としては、各クラブがトップチームに関して営利団体として利益を追求する事が、リーグ全体にとっても有益であると判断した事。また、トップチームのパフォーマンスがフェライン自体の存続に関わってくると、フェライン本来の公益性を損ねてしまう恐れがあるため、トップチームの運営を別にすることで、フェラインへの経済的なリスクを軽減できることも重要な要因。なお、ブンデスリーガ1部18クラブ('15-16シーズン)のうち16クラブが黒字となっていることからも分かるように、この運営形態はリーグにも好影響を与えていると言える。
【フェラインの会員になるメリットは?】
  フェラインとは会員のもの。本来フェラインの活動は原則会員が支払う会費によって運営され、ブンデスリーガに所属するフースバルフェラインに言及すると、それら会費の収入に加えて、試合の興行収入やスポンサーからの広告収入、放映権の分配金などもフェラインの収益。
 フェラインはJクラブが運営する「ファンクラブ」とは全く違う存在。会員はあくまでもフェラインの一員であって、サービスを受ける「お客様」ではないので、会員になることのメリットを問われても、クラブの一員になり、アイデンティティーを共有することができる事のみ。その代わり、会員は年に1回行われる会員総会で投票する1票の権利を与えられることになる。これは公平にすべての会員がフェラインの決定事項に関与できることを意味しており、会員の最大の特徴。
 ドイツにもいわゆるファンクラブは多く存在。フォルトゥナ・デュッセルドルフにも100を超えるファンクラブが登録。彼らはフォルトゥナが規定している内容に沿って申請を出すことで、フォルトゥナ側から正式にその存在が認められることになるが、これはあくまでもファンが自分たちの意思で立ち上げたもの。
【アクティブ会員とパッシブ会員】
 フェラインの会員は、厳密にはアクティブ会員とパッシブ会員が存在。フォルトゥナの約22,000人の会員のうち、トップチームやアカデミーでプレーする選手や監督コーチ陣、またフロントスタッフなどはアクティブ会員に分類され、それ以外の方々がパッシブ会員に分類。ただしこの2つの立場に上下関係はなく、同じフェラインに属する会員として存在。
 選手もフェラインの会員なのだから、本来一般の会員とフラットな関係であることが理想。フォルトゥナではそういった分け隔たりのない会員同士の交流を積極的に実施。選手達もその意味をしっかりと理解して参加することで、選手であってもファンであっても、お互いが顔の見える存在、意見を交換できる立場でいられるよう努力。フォルトゥナという1つのアイデンティティーを共有。
 ちなみにフォルトゥナではさらに、定期的な会員フォーラムを実施。フェラインの方針に対し、可能な限り多くの会員の声をくみ取れるような対話の場を提供。これにより、たとえ自分がパッシブ会員であっても、その「フェライン=コミュニティー」に所属していると実感。その中でも公平な振る舞いができ、時に納得がいかないことがあれば意見することで、帰属意識は向上。会員はフェラインのお客様ではなく、フェラインの一部。そのようにして、自分の生活が「社会=コミュニティー=フェライン」の中にあると実感できることが、元々ある帰属意識をフェラインへの強いアイデンティティーへと育てる大きな要素になるのではないか。
【本当の意味での「自分のクラブ」に】
 フォルトゥナでは3カ月に1回のペースで会員フォーラムを開催。フェライン側の役職者と一般会員がフラットな場でクラブ運営に関するディスカッションを行うことが目的。Jクラブが地域密着を目指す上で重要なことは、ビッグネームの選手を連れてきて、ファンを喜ばせることではなく、スター選手による一時的な観客数の増加よりも、その地域の方々に、本当の意味で自分のクラブだと思ってもらうことの方が重要。
 このシンプルな答えが分かっているようで分かっていないクラブが、残念ながら日本にはまだまだ多いのではないか。確かにお金を払って試合を観に来てくれる方々は、大切なお客様だが、お客様であると同時に、クラブを成長させていくための支援をしてもらう支援者であるべき。彼らの声を聞き、彼らとともに歩むことで、共通のアイデンティティーが生まれ、そしてそのコミュニティー(=クラブ)の結束が強まっていく。ドイツ人は地域愛が非常に強いが、そういった本質的な部分をクラブ側が理解し、サポーターと良い相互関係を築くことが、スタジアムを満員にすることにつながっている。
 まずはJクラブで働くスタッフや、プレーする選手達の意識改革が必要。DAZN元年である今こそ、そういった人材育成や取り組みに、時間と労力を費やしていくべき。全国に広がるプロサッカークラブが、それぞれの地域で人々の生活を豊かにする。そんな存在になっていって欲しい。そういう意味でもドイツの「フェライン」の在り方は、Jリーグ全体にとっても非常に参考になるマインドだと思うと締めくくっています。
スポナビ該当コラム:http://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201702240004-spnavi

 読めば読むほど、当ブログの論調と一致します。Jリーグは少し前に、極端にアメリカ(MLS)に傾いた時期がありました。その時にドイツ派だった傍士氏は理事から退任され、商業主義とともにアメリカに傾倒しました。今は少しはより戻しが起こっているのでしょうが、アメリカ派はまだ存在しておるのではと個人的に推測しています。村井チェアマンは本当はどちらのでしょうか。本音はドイツだと信じていますが。
 簡単に見れば、トップチームの株式会社と、それ以外の公益法人の両立という事で、実はJリーグでもそういうクラブが増えていっています。そういう面では公益法人を運営できないのは、Jリーグにふさわしいクラブにはなれないのか。あと、フェラインはソシオ制度にも似ていますね。また、このフェラインの存在価値は、日本でいうと後援会にもつながります。というと、後援会組織を運営できないところはJリーグクラブにふさわしくないという事なのかと。会員は単なるお客さんではなく、クラブを構成する一員。これは大事ですね。当ブログでよく言ってきた「チェック機能」も働いています。「横からものを言われたくないから後援会を作らない」という価値観があれば、それは極めて愚かなもの。自ら自分の成長を止めている行為で、とても100年は続かないでしょう。
 あと、最近「Jクラブの付加価値」で取り上げてきた「ホームタウンミーティング」がまさに、上で言う「会員フォーラム」ですね。「会を開いてもらっている」「忙しいから誰も出席できない」と思っているところはしんどいなぁ。まさに「わしらファースト」。
 このコラムでは「まずはJクラブで働くスタッフや、プレーする選手達の意識改革が必要」とありますが、読者の皆さんはどう思われますか? 「言いたい事をズバリ言ってもらった」なのか、「うちのクラブはフロントも選手も、しっかりファン・サポーターをリスペクトし、地域に根付いていますよ」なのか。
 100年続く地域に根差した公共財となるJクラブになれるかどうかは、「帰属意識」がどこまで生めるかではないでしょうか。単にスタジアムに観に行くだけの存在をキープさせているだけではそのうち、時代の流れとともに消えていくのではないかと。あくまで一般論ですが。
「総合型地域スポーツクラブ・地域振興」カテゴリ:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/c/e0683bb785e8a608b9c7931217a72003
ドイツサッカー関連③(フェライン関連):http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20140724 
   〃        ②:
http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20140720
   〃        ①:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20140711

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