事例紹介コラムです。
W杯も準決勝が行われ、今朝はスコアレスの末にPK戦で辛くもアルゼンチンが勝ちました。ちょっと早起きすればいいという事で、何だかんだでW杯を時間どおり観ている自分がいます。やっぱ面白いですね。ドラマもあるし、レベルが高いプレーを観るのもいいものです。今回のW杯はやはりブラジルの惨敗が一番大きなニュースですね。ドイツ対アルゼンチンの決勝も楽しみです。そんな中で、BLOGOSというサイトで「W杯、ブラジルを粉砕したドイツ的強さの秘密」というタイトルで、ドイツ代表の事が詳しく語られています。以下、抜粋して紹介。
【充実するドイツM世代】
今をときめくドイツ代表は、1970~90年代に最強を誇りましたが、2000年のUEFA欧州選手権でどん底を迎えました。ドイツはグループリーグで1分2敗に終わり敗退。1989年にベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツは統一されたものの、サッカーのドイツ代表は純血主義にとらわれたまま。旧西ドイツは1960年代以降、トルコ、ギリシャなどから出稼ぎ労働者を受け入れてきた。いずれは母国に帰国すると考えていた出稼ぎ労働者はそのままドイツに残ったため、99年にドイツ政府は移民対策として、厳格な血統主義を守ってきた国籍法を緩和して出生地主義を導入。98年W杯フランス大会までドイツ代表は純血チームだったが、次の2002年日本・韓国大会から移民背景を持つ「M(多文化主義)世代」が徐々に増え始めた。
今大会、ブラジル戦のドイツ先発メンバーを観ると、エジルはM世代。トルコ系移民の第3世代で、「父親はドイツで育った。トルコは自分にとって特別な国であり続けるが、ドイツ代表としてプレーすることを一度も疑ったことはない」とか。W杯通算最多得点16を記録したクローゼはポーランド生まれ。7歳のときドイツに移住したが、家庭ではポーランド語。ボアテングはガーナ系、ケディラはチュニジア系、ヘーヴェデスはノルウェー系と、もはや移民背景を持つ選手がいなかったら代表チームが組めない状態。これに対し日本とロシアの代表チームは純血主義を守っているのに監督はイタリア人で、いずれもグループリーグで敗退。もはや世界のサッカーに純血主義は通じない。
【成功した選手育成】
ブンデスリーガは2000年のUEFA欧州選手権敗北以降、ユース育成の強化に取り組んだとか。1 部では「8 人は地元出身」、2 部では「15~21 歳の最低3年間はドイツ国内で育成された8人の選手と契約。そのうち4人はユース出身」というルールを設定。外国人選手枠を撤廃する一方で、最低12人の「ドイツ人選手枠」を設定。クラブが若手選手の育成などに力を入れるような仕組みを導入し、'08年のU-19欧州選手権、'09年のU-21欧州選手権 などで優勝。
エジルやボアテングなどのM世代はこうした若手育成策が結実した結果であり、また、ドイツのスポーツ政策にも注目すべき。国民のスポーツ活動を支援するドイツオリンピックスポーツ連盟の登録者数は10 年現在で人口の約3分の1に当たる 約2,763万人。競技別では、サッカー連盟は首位で約 676万人という。世界サッカーの潮流はイタリアではなく、間違いなくドイツにあり、'20年に東京五輪・パラリンピックを開催する日本もドイツのスポーツ政策に見習うところがたくさんあるのではないか。
BLOGOS該当記事:http://blogos.com/article/90166/
気になったので、ドイツと3大リーグのW杯での成績を拾い出してみました。当ブログの論調で、3大リーグの地元代表選手は育成面で弱く、国内リーグで疲れ切っているので、どこもW杯の成績が良くないと書いたところ、「スペインは前回優勝してるでしょ」という声が出ました。確かに2010年では優勝していますが、以下の成績一覧を観るとズバリ「一時の出来事」です。'54年以降で他の3大リーグ国はグループリーグ等敗退が5回以上ありますが、何とドイツは1度もありません。必ずベスト8以上に進出しています。やはりすごいです。
【ドイツ代表および3大リーグ国代表のW杯での成績】 ※予選=予選敗退、GL=グループリーグ敗退、2次=2次リーグ敗退
ドイツ代表 =優勝3回、準優勝4回、4強3回、GL等敗退なし
1954:優勝/1958:4位/1962:8強/1966:2位/1970:3位/1974:優勝/1978:8強/1982:2位/1986:2位/1990:優勝/1994:8強
1998:8強/2002:2位/2006:3位/2010:3位/2014:優勝か2位
イタリア代表 =優勝2回、準優勝2回、4強2回、GL等敗退6回
1954:GL/1958:予選/1962:GL/1966:GL/1970:2位/1974:GL/1978:4位/1982:優勝/1986:16強/1990:3位/1994:2位
1998:8強/2002:16強/2006:優勝/2010:GL/2014:GL
イングランド代表 =優勝1回、4強1回、GL等敗退5回
1954:8強/1958:GL/1962:8強/1966:優勝/1970:8強/1974:予選/1978:予選/1982:2次/1986:8強/1990:4位/1994:予選
1998:16強/2002:8強/2006:8強/2010:16強/2014:GL
スペイン代表 =優勝1回、GL等敗退9回
1954:予選/1958:予選/1962:GL/1966:GL/1970:予選/1974:予選/1978:GL/1982:2次/1986:8強/1990:16強/1994:8強
1998:GL/2002:8強/2006:16強/2010:優勝/2014:GL
Jリーグは現在、イングランド・プレミアリーグなどメディアマネーを当てにした3大リーグへ目を向け、「プレミア化」をしたい「商業主義」勢力が幅を利かせているような印象を個人的に覚えます。プレミア化したリーグ国代表は上の図のとおりで、決して長期的には強くなりません。目指すのはドイツサッカーではないでしょうか。元々、Jリーグは発足当時から最近まで、世界最多観客動員数を誇るブンデスリーガをお手本とし、スポーツシューレとともにスポーツ文化の華が咲く「Jリーグ百年構想」を進めてきたはずですが、2ステージ制ばなしが出てきた頃から薄れてきた気がします。
傍士前理事のコラムを当ブログでリンクさせていただいていますが、Jリーグ役員改選時から、ピタっと更新が止まってしまいました。ひょっとしたらあの改選の頃から、Jリーグ百年構想は歩みを止めたのかもしれないと個人的に思っています。
日本のサッカー、Jリーグはこれでいいのでしょうか。そうでなくても代表の弱体化でサッカー人気が落ちるところで、柿谷や山口の海外移籍ばなしが出てきて、来シーズンにはリーグそのもののレベルを落とす2ステージ制、まさに日本サッカーの暗黒時代突入ではないでしょうか。代表強化のために1ステージ制厳守という正義の動きは出てこないのでしょうか。