事例紹介コラムです。
先のW杯で日本の他アジア勢は惨敗し、ドイツは優勝しました。Jリーグ村井チェアマンも「Jリーグが長らく参考にしてきたドイツの今大会の躍進は、同国サッカー界の長年の努力が結実したもの。中長期視点で設計された国内の育成システムと、それを支える協会とリーグの協働関係。平均入場者数世界一という国内リーグ・ブンデスリーガの活況と代表チームのワールドカップ優勝は無縁ではない。今回のドイツ代表は、23人のうち実に17人がブンデスリーガで活躍。ワールドカップは、まさに出場国の総合力の戦い」と総括しています。
当ブログでも、最近ではすっかり色あせ感が充満している「Jリーグ百年構想」のそもそものモデル国であり、最近ではクラブライセンスも模範としているドイツについて今後も注目する事が多いと思います。
日本サッカーを強くするために「ドイツシリーズ」としてスタートしたいと思います。ちなみに村井チェアマンのコメントの中で、「アメリカとメキシコにも注目」とありますが、メキシコもアメリカも頑張っておられるとは思いますが、天下の悪法「ポストシーズン制」「2ステージ制」の導入国なので、同列には扱えないと認識しているので、また違う形でお届けするつもりです。以下、抜粋して紹介。
【ドイツ代表の成績】
W杯は優勝4回、準優勝4回、決勝戦には8回進出している。 特にベスト8以上進出については、今大会で16大会連続。ベスト4以上進出についても、今大会で史上初の4大会連続。また、2位以上、3位以上、ベスト4以上、ベスト8以上の全てにおいて単独の世界最多進出国。ユーロ優勝回数は3回、準優勝3回、都合決勝戦には6回進出。この数字もヨーロッパ最多。FIFAランク1位経験チーム7ケ国のうちの1つ。
【移民と育成制度改革】
ドイツ代表はなぜブラジルW杯で優勝できたのか。長期間に渡る監督レーブの指揮、自前で建設したキャンプ地の充実、ケルン体育大学にある卓越した分析チームの存在、ブンデスリーガの発展など、様々な理由が挙げられる。W杯優勝に至った要因として、ブンデスリーガの充実という面から主に「歴史」「移民」「改革」の3つの観点で今回取り上げる。
①歴史
長いサッカーの歴史があり、肥沃な土壌がある。ドイツ協会が発行する守備の戦術書には、1800年代後半からのフォーメーションの移り変わりを記載。事例は多く、広く深いサッカーの母体がドイツにはあり、重要な事は、その「歴史」が「移民」にとってサッカーを始めるきっかけになっている。
②移民
現ドイツ代表における移民の存在は、良く知られているが、元々ドイツ国内には、無数の名もなき移民選手が今も存在。
③改革
'00年のユーロ惨敗を受けて、ドイツサッカー連盟(DFB)は育成改革に着手。各クラブにはユースの育成システムを作るよう指示され、多くの子供に目を配れるようにと全国が細かく区分。この「改革」では移民選手も対象。
「移民」は「歴史」の中でサッカーと出会い、「改革」がもたらした環境の中で生粋のドイツ人たちとともに育まれる。こうした特異な環境が、ドイツ代表がブラジルの地でW杯優勝できた要因になっているのではないか。
フットボールチャンネル該当記事:http://www.footballchannel.jp/2014/07/18/post46816/
【ドイツの育成改革】
「個々のクラブが独自に色を出すと、クラブ間で、育てられた・育てられなかったという大きな差が発生してしまうからリーガが最低限のルールは決めてから始めた」という事で、 '00年にドイツは育成改革に着手。1部と2部の計36クラブにユースアカデミーを持つことを義務化。クラブに育成のスペシャリストを配置して、選手たちが将来プロに巣立っていけるだけの環境と人間形成を重要なポイントとして指定。
この育成システムには「ローカルプレーヤールール」があり、3つ大事なポイントがある。
①必ず12人以上のドイツ人をクラブに所属。
ボスマン条約でEUでは自由に仕事ができると決議されたので、ブンデスリーガにフランス人やイタリア人が入ってきても、彼らは外国人扱いにはならない。プレミアリーグのように、イングランドのリーグなのに、ほとんどが外国人の選手という状況が発生。それを防ぐためにチームに12人以上のドイツ人選手の所属を義務化。12人×36クラブのドイツ人がブンデスリーガに所属可。
②DFB管轄のユースアカデミー出身者を8人以上所属。
ユースアカデミー出身者の定義とは、ドイツサッカー連盟に15歳から21歳まで3年以上所属した選手。そうなると、ドイツ全体としてきちんと子どもたちを育てないといけない状況に。
③トップチームには自らの育成機関から4人以上を所属。
トップチームを強化すればいいのではなく、更にクラブが自分たちで育てた選手を4人所属させなければいけないので、いい加減な育成をしていると、例えば、トップチームに登録されたその4人は戦力にならず、全体の戦力に影響が出る状況に。
4人が無事トップ昇格できる状況になっても、その以前に昇格したクラブのユースアカデミー出身者がいる場合もあり、その時点で全員は昇格できないが、DFB管轄の組織から輩出された選手として他のクラブが必要とする場合があるので、元チームからレベルを少しだけ下げるとしても、他クラブへ移ることでプロになれる仕組みができている。こういった仕組みづくりをブンデスリーガが中心となって構築した結果が、今回のW杯で成果として出ている。
フットボールチャンネル該当記事:http://www.footballchannel.jp/2013/10/30/post10184/
【ファンとサポーターの関係】
日本では「ファン」「サポーター」と呼び分けることがあり、「サポーター」はクラブを支援している人という認識で、「ファン」は基本的には選手一個人を応援する人という認識がある。日本には選手が移籍するとそのまま追っかけていく人もいるが、そういう(選手)ファンの人がスタジアムへ足を運べる事が動員を上げる意味でも大切で、サッカー文化を醸成するにはまず大切なことだと認識。ドイツのサッカーと比較すると、今後日本サッカーは多くの「ファン」が「サポーター」へシフトしていくことが一つのポイントになるのではないかと推測。
ドイツでは選手の名前を書いている横断幕が無い。仮にある選手の横断幕があれば、その選手にとってはいい話だが、他の選手達にとっては決して良くは映らない。ドイツの現場には、「○○サポーターズクラブ」「○○市応援団」という横断幕がほとんど。スタンドの横断幕には、地域名を書いてクラブのマークが付いている横断幕が多い。横断幕の主達が言いたいのは、その地域から応援しに来ているという事であり、スタンド側からアピールしている。そうすると選手たちも、今日も「あの地域から応援団が来ている」と認識され、モチベーションが上がる。
日本でも「ファン」がより多くの「サポーター」へ移行するためにも、横断幕で自分たちの存在を選手たちやクラブにしっかりとアピールする。そんな流れができてくると面白いのではないかと思われる。
フットボールチャンネル該当記事:http://www.footballchannel.jp/2013/11/01/post10239/
3つ目の話題は、そのまま新潟さんなどの事例に結びつくし、当ブログでも浅口や庭瀬の活動が該当します。浅口はまだ中旗の中に地域名を観るくらいしかPR要素は無く、胸を張れるものではありませんが、何しろ他にそういうところがなかなかないのでねぇ・・・
今後時々ドイツネタが出てくると思います。日本サッカー界ももう一度ドイツのサッカーを根本的に見習うべきだと思います。観客動員数世界一のブンデスリーガ。なぜ、世界一なのか。ブンデスは1ステージ制です。日本のサッカーは代表を強くしたいのか、単に観客数を増やして儲けに走りたいのか、そこではないでしょうか。'92年にプロ化が決まった時も代表を世界レベルにするためにはプロ化しかないと言われたはず。2ステージ制に象徴される商業主義も、結局はファン・サポーターから足元を見られ、弱くなった代表について飽きられ、「失われた5年」を浪費するだけというのがわからないのでしょうか。アギーレ氏への契約交渉も足元を見られて混乱していると聞いており、ひょっとしてまたW杯未経験監督に?という不安も出てきました。とにかく日本のサッカーはまだ未成熟感を強く感じます。DFBから顧問を招いて、手取り足取り徹底的に指導を受けるのもいいかもしれませんね。
ドイツサッカー関連:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20140711