事例紹介コラムです。
12月中旬にスポーツ欄に「Jの成長戦略」という特集が載っていました。上中下と3回シリーズになります。今回は「中」の「スタジアムで魅了」というタイトルで、明治安田生命Jリーグによる専用スタジアム建設での戦略論です。以下、抜粋して紹介。
クラブライセンス制度の導入で債務超過のクラブが無くなった今こそ、クラブの発展に向けたリスタートの時ではないか。「経営を改善するにはやはり、スタジアムの質を高める事が大切。企業向けのスイートルーム等を備えて、単価の高いチケット売れるようにすべき」とJリーグ大河常務のコメント。
【収支大きく影響】
スタジアム条件がクラブの収支に大きく影響するのは明らか。「ホームスタジアムのアクセスの悪さ、観戦環境の悪さが経営を圧迫」とJ1広島の小谷野社長のコメント。Eスタはアストラムラインで36分、そこから徒歩で15分以上かかるアクセス利便性の影響で、平日夜の試合は5千人ほど減少し、クラブライセンスで指摘されや屋根の問題で、雨天時は2千から3千人が減少。しかも、駐車場からシャトルバスを出すなどのアクセス対応で年間4千万から5千万円費用負担。陸上競技場のためにピッチが客席から遠いのも評価が低い。5万人収容の客席で、今シーズンの平均入場者数は1万5千人を割ったとか。
J1広島は経営に苦しみ、20億円を超えた債務超過を'12年3月に減増資で解消させたばかり。「そこまでの悪因はスタジアム条件によるダメージが大きいから。スポンサーが協賛金を払ってくれているのに、砂に水を注ぐような状態では許されず、その状況を避けるためにもスタジアム問題を解決したい」と小谷野社長のコメント。
【早期実現の要望】
J1広島は'12年にJ1初優勝。サポーターから市中心部に専用スタジアム新設を求める声が高まり、早期実現を要望する署名を40万人を数えたとか。機運の高まりを受け、県、市等が昨年に「サッカースタジアム検討協議会」を設立。3万人前後収容とし、先月までの協議で建設候補地の絞り込みを進めてきたが、最終報告書には、広島市民球場跡地と広島みなと公園を併記。
J1広島は一貫して、利便性の高い市民球場跡地を主張。「市民球場が無くなってから、さびれ始めた中心街の紙屋町に活気を戻したい」という思いをもとに、「スタジアムづくりは街づくり」をうたい文句にして新設要望運動を推進。
Jリーグも同様の認識で、「スタジアムで街づくりを」と、クラブに代わって各地の自治体にスタジアム建設をバックアップ。単に求めるスタジアムの機能の説明だけでなく、用地面積や場所に合った街づくりのプランまで作成し、資金調達方法やスタジアムの事業収支計画も揃えて提案。
現在注目しているのが、米軍から変換された神奈川県内の広大な土地。ショッピングセンター、フィットネスクラブ、医療施設等を合わせた都市開発のプランを提示し、自治体との交渉を開始。
クラブライセンス制度の導入をきっかけに、各地にスタジアム建設の動きが見られ、水面下では相模原、平塚、富山、松本、岡山などにも動きがあるとか。早急にスタジアムをクラブ経営を圧迫するものから、潤す装置にしていかなければならず、潤うのはクラブだけでなく街もというのが理想型。
また、日経新聞の他の記事の中で「G大阪 V字回復(下) 新競技場 経営も攻め」というコラムがありました。ガンバさんで今年秋にお披露目になる予定の新専用スタジアムについて、詳しく述べられています。以下、抜粋して紹介。
「あの新スタジアムがG大阪の成長戦略そのもの」とG大阪野呂社長のコメント。'13年J2降格の影響に伴うスポンサー収入減少など、減収は約5億円。その下振れ分は'14年シーズンで取戻し、営業規模は30数億円に回復したが、ゴールではない。
建設資金を個人や法人の寄付で賄う新スタジアムは'15年完成、'16年より使用。万博競技場は大入りでも1万9千人が限界。新スタジアムは収容人数が約4万人。場内の飲食店展開等の営業をクラブの裁量で実施でき、アイディア次第で大きく増加が可能。
「年間の入場者収入を現状の6億から12億円に倍増させ、グッズ販売も3億から5億円に増やしたい」と野呂社長のコメント。J2降格も重なり、野呂社長自身も「1年が10年に感じるほどの重圧」を振り返って表現するくらいに、一からのスタジアム建設は困難の連続だったが、そのどん底状態を脱出。
「中期的に40億、50億円のクラブを目指し、新しいG大阪になる挑戦」と攻めの姿勢。
その一つが'14年シーズンから積極的に推進するアジア戦略。欧州ビッグクラブを押しのけてのファン獲得は困難だが、取らなければならない姿勢。例えば、インドネシアは人口2億4千万人の巨大マーケットで高いサッカー人気。ミャンマーでの事業を拡大するパナソニックからの要請で、ミャンマーへ出張サッカー教室を開催。メーカーが消費市場の開拓でアジアへ進出する波に乗れる今は大きなチャンス。
また、G大阪の誇る育成ノウハウは輸出品になる事も認識。アジア戦略担当者はインドネシアへ6回訪問し、手応えとともに国際化に合わせた人員も増強。スタジアムとアジア。収穫は先でも未来への種が今蒔かれていると締めくくっています。
上の記事の「各地にスタジアム建設の動きが見られ、水面下では相模原、平塚、富山、松本、岡山などにも動きがある」という部分が気になります。まぁ、仮に動きが始まっていても広島さんのように、時間がかかるだけで前に進めないケースもあるので、イコール専スタを近いうちに建設という事ではないと思います。あと、専スタ建設には署名運動だけでなく、ガンバさんのように建設募金も必須だと思います。政田の時には20万人以上の署名が集まりましたが、これが募金になっても同じようにうまく集まると思うのは甘いかもしれません。そこは県民性というのも作用するかも。
立地について、シティライトスタジアム(旧カンスタ)は新幹線も停まる最寄駅から10数分と交通アクセス面で恵まれていたら、今まで観客動員数が他のJ2クラブよりも多かったという見方も思います。語る会でもよく話ですがホームスタジアムが空港の辺とか、政田の辺とかにあればそこまで動員数があったのかという事になります。なので、岡山にいつか専スタができても、それがどこにできるかがとても重要だと思います。
横から他の競技団体や行政から意見が入ってくれば、そううまくは事が運ばないかもしれません。立地的には個人的にはずっと北長瀬駅周辺にいい土地があるじゃないかと思っていましたが、今後再開発が進んでいきます。現実的に他に駅に近いベストな場所があるのかと。岡山駅にこだわらなければ、例えば中庄駅近辺とかある事はありますが。
村井チェアマンが旗振り役になって、専スタ建設を推奨しています。当ブログとしては、この専スタ推進の部分は好ましいと思いますが、他の商業主義の部分がどうも・・・ なぜ世界最多の観客動員数を誇るブンデスリーガだけを観ようとせず、アメリカに気を回すのかよくわかりません。サッカーの興業もブログのアップも究極は同じだと思います。いくら器を磨いても、中身を磨かなければ、観客(読者)は去っていくと。ブログの内容はまだまだ修行が足りませんが、サッカーの興業は付加価値の部分が大きいと思います。中でも一番の看板商品は「選手」。なので、地域・社会貢献やファン・サポーターと選手との距離など言い方は様々ですが、選手を街に出したがらないところはしんどいですね。
専用スタジアム関連(一般):⑪ / ⑩ / ⑨ / ⑧ / ⑦ / ⑥ / ⑤ / ④ / ③ / ② / ①
G大阪新スタジアム関連⑦:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20131129
〃 ⑥:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20130116
〃 ⑤:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20120627
〃 ④:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20100813
〃 ③:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20090713
〃 ②:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20090430
〃 ①:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20080719
J1広島新スタジアム関連③:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20141220
〃 ②:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20140212
〃 ①:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20120928