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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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【新刊書評2024】 『評伝立花隆~遥かなる知の旅へ』ほか

2024年01月07日 | 書評した本たち

 

 

「週刊新潮」に寄稿した書評です。

 

高澤秀次『評伝立花隆~遥かなる知の旅へ』

作品社 2970円

2021年4月に80歳で亡くなった立花隆。本書はその評伝であり本格評論だ。「知の巨人」といった既成のレッテルを排し、「万能知識人(ゼネラリスト)」の仕事と人生に正面から向き合っている。田中角栄から分子生物学まで多様なテーマに挑んだ軌跡。そこには「地上的なもの」と「脱―地上的(コスミック)なもの」との間で引き裂かれる思考があり、神秘思想・神秘主義への関心もある。新たな立花像構築の試みだ。(2023.11.30発行)

 

吉川 孝

『ブルーフィルムの哲学~「見てはいけない映画」を見る』

NHK出版 1870円

ブルーフィルムとは、性行為を無修正で映した映画。違法とはいえ、多くの表現者が挑戦を重ねてきたジャンルだ。著者は倫理学が専門の甲南大教授。この禁断の映画を、見る側や創る側など多角的な視点で考察していく。中でも「土佐のクロサワ」と呼ばれる“巨匠”の実像を探っていくプロセスが興味深い。様々な欲望を映像化したブルーフィルムは、人間の暗部の真実を描いているのかもしれない。(2023.11.25発行)

 

青島 顕

『MOCT(モスト)~「ソ連」を伝えたモスクワ放送の日本人』

集英社 1980円

書名は「橋」を意味するロシア語だ。モスクワ放送は、かつてのソ連にあった国放送局。1929年から93年まで外国語放送を行っていた。本書に登場するのは日本語放送に携わった日本人だ。戦後から40年以上も活動した人。学生運動より放送の世界を選んだ団塊世代もいる。彼らにとってソ連とは何だったのか。故国に向けた放送は何を目指していたのか。第21回開高健ノンフィクション賞受賞作だ。(2023.11.29発行)

【週刊新潮 2023年12月28日号】