「週刊新潮」に寄稿した書評です。
井上 毅『星空をつくる機械~プラネタリウム100年史』
KADOKAWA 2640円
1923年、ドイツで誕生した近代プラネタリウム。明石市立天文科学館の館長である著者が、「星空をつくる」ことを夢見た人たちの百年を辿ったのが本書だ。前史としての天球儀や天体運行儀。世界初の試みに挑んだツァイス社。やがて日本でもコニカミノルタなどが動き出す。プラネタリウムは宇宙を見るだけでなく、「自分自身を眺める場所である」と著者。久しぶりに足を運んでみたくなる。(2023.10.24発行)
毛利眞人『幻のレコード~検閲と発禁の「昭和」』
講談社 2310円
日本のレコード検閲は昭和9年から20年の敗戦まで続いた。また戦後の占領期にもGHQによる検閲があった。しかし、流布されている検閲伝説や発禁(発売禁止)伝説には、事実と異なるものが多いとレコード史研究家の著者は言う。当局や軍部は何をして、何をなかったのか。業界の自主規制の実態はどうだったのか。それらは現代とどう繋がっているのか。見えない検閲の深層に迫っていく。(2023.10.30発行)
井出 新
『シェイクスピア、それが問題だ!~シェイクスピアを楽しみ尽くすための百問百答』
大修館書店 1870円
来年はシェイクスピアの生誕460年にあたる。本書は稀代の劇作家を知る、良質な入門書だ。どんな人だったのかという人物像。劇場や演劇などシェイクスピア時代の文化的背景。芝居とは「現実世界の状況をありのままにみせる」ものだと言ったシェイクスピアの作品解説。さらに台本や原文の読み方指南もある。著者はシェイクスピア研究の第一人者。今も世界中で上演される理由が分かってくる。(2023.11.01発行)
【週刊新潮 2023年12月14日号】