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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「ペルソナの密告」圧巻の演技だった竹内涼真

2023年03月30日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

竹内涼真が

「ペルソナの密告」で圧巻の演技

3つの人格を口調や目つきの変化で表現

 

先週の24日夜、ドラマスペシャル「ペルソナの密告3つの顔をもつ容疑者」(テレビ東京系)が放送された。

元刑事の獅子舞亘(沢村一樹)は、派遣の仕事をしながら一人娘と暮らしていた。

ところが近所で連続誘拐事件が発生。被疑者の元村周太(竹内涼真)から呼び出される形で捜査に協力することになる。

しかも元村は複数の人格を持つ解離性同一性障害(DID)だった。かつては「多重人格」と呼ばれていた症例だ。

7年前、獅子舞の妻(矢田亜希子)は何者かに殺害されており、それをきっかけに退職した。元村もまた幼少時から不幸の連続だった。

そんな元刑事と容疑者が一緒に事件を追うという設定が異色で飽きさせない。

沢村はひょうひょうとしていながら肝のすわった元刑事が似合っていたが、演技賞モノだったのは竹内だ。

元村の中には周太本人、数字の天才・カブト、そして凶暴なバクと3つの人格がいる。

言うこともやることもバラバラで、突然誰が表に出てくるのか分からない。その都度、口調も動作も目つきも一変させていく竹内の演技が圧巻だった。

タイトルの「ペルソナ」とは仮面であり、心理学でいう「人間の外的側面」だ。ある時、獅子舞が言う。「人は誰だって、いくつもの顔を使って生きている」と。

そうしなければ生きられない人間の業(ごう)に迫る、見事な展開の一本だった。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2023.03.29)