碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「デザイナーベイビー」は刑事ドラマと医療ドラマのハイブリッド

2015年09月30日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、NHKドラマ10「デザイナーベイビー」について書きました。


NHKドラマ10「デザイナーベイビー」
特色は刑事ドラマと医療ドラマのハイブリッド

ある病院で新生児が誘拐される。優秀な物理工学博士(池内万作)と、元トップアスリート(安達祐実)の間に生まれたノゾミだ。

捜査に当たるのは妊娠8ヵ月の刑事・速水(黒木メイサ)。先週の初回は、早々に犯人と思われる夫婦が判明し、捕えようとしたが・・・という展開だった。

舞台となる病院が何やら怪しい。アリバイ不明の医師・須佐見(渡部篤郎)は、誘拐犯夫婦と因縁があるらしい。彼とライバル関係にある医師・崎山(渡辺いっけい)が手掛ける、高度生殖補助医療にも裏がありそうだ。

高度生殖補助医療とは、卵子と精子の両方を操作して行う不妊治療。デザイナーベイビーの発想はその先にあり、遺伝子操作によって親が望む外見や知能などを持つ子供を生み出そうというのだ。

“神の領域”だった部分に、医学がどこまで手を突っ込んでいいのか。技術面、倫理面での問題点も指摘されている。

つまり、このドラマの特色は、刑事ドラマと医療ドラマのハイブリッドになっていることだ。誘拐も単なる営利目的ではないはずで、捜査陣は最先端医療の闇に触れることになるかもしれない。

3年前、私生活で第一子の女児をもうけた黒木は、“妊婦刑事”役も実に自然。妊婦だからこそ見えてくる真実もある。やや複雑な設定ながら、新機軸の刑事ドラマが期待できそうだ。

(日刊ゲンダイ 2015.09.29)