[安全保障関連法案に反対する「放送人の会」有志の声明]
放送人の会」は、放送に関わる個人が、組織・地域・世代・国籍の違いをこえて交流し啓発しあうとともに、 市民との積極的な意見交換を図ることによって、放送人の育成、放送文化の継承と発展充実に寄与することを目的とする集まりです。
放送人にとって、「表現の自由」はかけがえのない権利です。戦争になれば、はじめに抑圧されるのがこの自由です。戦後日本の放送は、アジアへの侵略・植民地支配、そして自国民の多大な犠牲という負の遺産を背負ってスタートしました。この14年間、「放送人の会」は、日中韓の制作者の交流の場を通して、加害・被害の溝をこえる努力を続けてきました。
しかるに、安倍政権は圧倒的多数の憲法学者が「違憲」とする「集団的自衛権行使容認」を閣議決定し、「安全保障関連法案」を強引に採決しようとしています。この間の政治家による放送メディアに対する干渉や暴言は目にあまるものがあり、立憲主義、民主主義はまさに危機に瀕しています。
安倍首相の「戦後70年談話」は、欧米列強への“挑戦”の失敗を反省するばかりで、アジアへの謝罪が欠落したものになっています。「戦後」が再び「戦前」に逆行しかねない今、現政権の姿勢を、言論・表現に関わる放送人は見過ごすことができません。
私たち「放送人の会」有志は、現在および将来の放送と放送文化を守るために、安全保障関連法案の廃案を強く求めます。
2015年8月28日
呼びかけ人
曽根英二、桜井均、渡辺紘史、村上雅通、金平茂紀、堀川とんこう、藤久ミネ
賛同者氏名
伊藤雅浩 井上佳子 碓井広義 太田昌宏 緒方陽一 小河原正己 荻野慶人 尾田晶子 加賀美幸子 各務孝 勝部領樹 加藤滋紀 鎌内啓子 河村正一 北川泰三 北村充史 北村美憲 木村成忠 工藤英博 隈部紀生 河野尚行 小山帥人 今野勉 斎明寺以玖子 坂元良江 佐々木彰 佐々木光政 菅野高至 鈴木典之 鈴木嘉一 須磨章 橋練 田中直人 田原茂行 辻本昌平 戸田桂太 外崎宏司 中崎清栄 中島僚 永野敏一 長沼士朗 中村芙美子 並木章 西村与志木 林健嗣 藤村忠寿 前川英樹 牧之瀬恵子 松尾羊一 三宅恭次 村上佑二 諸橋毅一 八木康夫 山県昭彦 山崎裕 山路家子 山田尚 横山英治 吉田賢策 吉村豪介 吉村直樹 他 計68名
会員有志の「声明」に至る経緯と「会としての」基本的考え方
「安保関連法案と放送人の会」
2015.8.28.
会 長 今野 勉
会 長 今野 勉
会員各位
7月25日の理事会において、現在国会で審議中の安全保障関連法案について「放送人の会」として反対意見を表明すべきではないかという提案がありました。
理事会では、これについて賛同する意見とともに、「個々人の自由意思による参加で成立している放送人の会としては馴染まないのではないか」等の疑問も提示されました。
理事会としては、戦後70年との関係で「テレビは戦争をどう伝えたか」というテーマで番組上映と議論の場を設定し会員が参加することで「会」としての問題提起としたい、という整理が行われました。
そのうえで、あらためて数名の理事から安保関連法案に対して何らかのアピールが必要であるという強い意向が伝えられため、8月24日に会長である私を交えて議論を行いました。
そこで安保法案についての意見表明とシンポジゥムついて、以下のような方向で対応することで意見の一致を見ましたので、その旨を理事の皆様にお知らせしご了解を頂いたところです。
1. 「放送人の会」は会員全員が自由な意思表示を行うことができる組織です。したがって、この件についても何らかの意思表示をしたい会員が、会報あるいはホームページ等にその意見を表明し、会員に呼びかけることは会の趣旨に沿うことであると考えます。
2. 意見表明に会員個人が賛同することは自由であると考えます。仮に会員全員が賛同したとしても、それは各個人の意思表示であるということです。
3. その場合、その個人が所属する組織は「放送人の会」であり、その「放送人の会有志」として意見表明がされることは許されると考えます。
4. 「安保法案に反対の声明」とその賛同者の名前(名前の公表に同意した者のみ)を会報とホームページに掲載します。
以上の基本的考え方に沿って、別添の「意見表明」を呼びかけ人から会員各位にお送りしますので、別紙用紙で会員の皆様のお考えをお聞かせください。
理事の中にも「有志」とはいえ「会」の名前を使うことについての懸念、等の意見がありました。私としてはそうした意見を受け止めた上での判断です。会員各位も「声明」内容だけでなく、会としてのあり方も含めて自由にお書きください。個々人の自由意志、それこそがこの「会」のもっとも大事なことだと考えています。公表のご了解をいただいた会員のご意見を会報等で共有し、さらに議論を深めたいと思います。
有志の声明についての「会員の意見」
http://www.hosojin.com/doc/iken.pdf
シンポジウム「戦後70年、放送は何を伝えたか」
戦後70年目の今年は、「安全保障法案」の国会審議と「70年首相談話」の発表が重なり、関連する多くの番組が放送されました。
前者は、日米安保体制に関する番組として、後者は歴史認識に関わる番組として、それぞれ今までにない切り口のものに注目すべきものがありました。
戦後日本の国際社会、ことにアジアへの復帰をテーマとしたものから、「安倍首相談話」に対するアジアからの批判を意識した番組まで、総じて戦後レジームに関わるものが目立ちました。
戦後70年目の日本社会が“戦後の終わり”にいるのか、“戦前の始まり”にいるのかという問題意識の表れかもしれません。しかし、相変わらず「戦争の悲惨を描けば戦争に反対したことになる」という楽観的な番組も数多くありました。
戦後70年は、戦争に関わる放送にとっても大きな分岐点です。
「放送人の会」は、以上のような視点から番組を選び出し、放送の可能性、限界などについて活発な議論をしたいと思います。
以 上
(放送人サイトより)