碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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日本経済新聞で、「経済情報番組」について解説

2014年11月12日 | メディアでのコメント・論評



日本経済新聞に、最近の「経済情報番組」に関する記事が掲載されました。

この中で、解説しています。


長寿化する経済情報番組
生活に密着した内容で視聴者が関心

テレビの経済情報番組が安定した人気を得て、長寿化するケースが増えている。かつては「地味」と敬遠された話題が「お金」と生活に密着したテーマとして視聴者の関心を集めている。

「放送開始当初は半年で終わると言われていたが、予想以上に続いている」。NHKEテレの経済情報番組「オイコノミア」(水曜午後11時25分)の吉村恵美シニアプロデューサーはこう語る。

同番組は2012年4月にスタート。トレードオフ、機会費用など経済学の用語で、結婚や就職、消費税、スポーツビジネス、クリスマス商戦といった身近な経済事象を読み解く内容だ。読書家として知られるお笑いコンビ、ピースの又吉直樹が経済学者に質問をぶつけながら番組を進める。

現場映像を多く

数表や統計が頻出し、難しいイメージが伴う経済学はテレビになじみにくいと考えられてきたが、グラフや数式を最小限にとどめ、経済活動の現場の映像を多く取り入れる工夫を凝らした。当初、ターゲットとした若者だけでなく、中高年からも「勉強になる」などの好意的な反応が相次いでいるという。

吉村氏は「経済学の考え方で解決できる世の中の問題はかなりある。経済で知的好奇心を満たしたいという視聴者の欲求は高まっている」と話す。NHKで11年4月から放送している「サキどり)」(日曜午前8時25分)も、消費の動向や企業のユニークな技術などを分かりやすく紹介する番組だ。

民放で経済情報番組の先駆けといえば、テレビ東京の経済ドキュメンタリー「ガイアの夜明け」(火曜午後10時)だ。02年に始まり、恒常的に6~8%程度の視聴率を稼ぐ看板番組になった。モノづくりから流通、地域経済、雇用まで時代性を重視したテーマ選びを持ち味とする。野口雄史チーフプロデューサーは「どんな視聴者にも有益な情報を提供できる普遍性が重要」と話す。

かつてテレビ業界では、経済情報番組は「絵にならない」「地味」と敬遠される存在だった。しかし、現在は10月からフジテレビ系でお金にまつわるニュースや出来事を追う「マネースクープ」(月曜午後11時)が始まるなど、NHK、民放問わず多くの放送局が経済情報番組をレギュラー枠で放送するようになった。

こうした経済情報番組が増えている背景について、上智大学の碓井広義教授(メディア論)は「経済というと投資、株式など一般市民には無関係な分野だと思われていたが、今は景気、消費税、年金など日常生活に影響する問題だと、視聴者に認識されている。経済を理解し、自分の頭で考えないと生活が守れないという危機感が視聴者にあるのではないか」と指摘する。

生きるヒントに

実際、ビジネスで成功している企業や商品の「もうかる秘密」を伝えるTBS系「がっちりマンデー!!」は、日曜の午前7時半開始にもかかわらず、しばしば視聴率が2ケタを記録する人気番組に成長した。今年4月で10周年を迎え、長期安定飛行を続けている。

TBSでは、科学技術、製造業など様々な分野で革新的な成果を上げる日本人に密着した経済ドキュメンタリー番組「夢の扉+(プラス)」(日曜午後6時半)も、今年10月で放送開始から10年という長寿番組になった。

16日には、植物性のごみから固形燃料を作る技術を開発した井田民男近畿大教授を取り上げる。同番組の黒岩亜純チーフプロデューサーは「登場人物が持つ逆転の発想には、不安な世の中を生きるヒントがある。そこに視聴者のニーズがある」と語る。

経済情報番組の活況は、見えない社会の先行きを少しでも見通したいと願う人々の心理をも反映しているようだ。(文化部 岩崎貴行)

(日本経済新聞夕刊 2014.11.11)