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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

新型テレビのCM 「民放が放送拒否」の怪

2013年07月08日 | テレビ・ラジオ・メディア

「おらは死んじまっただあ~」で始まる歌といえば、ザ・フォーク・クルセダースの「帰って来たヨッパライ」だ。

懐かしいです(笑)。

なぜ、そんな歌詞を思い出したかと言えば、日曜の新聞各紙で見た記事のせいなのだ。

パナソニックの新型テレビ。

そのCMの放送を、民放各局が拒否している、というお話。

この記事における、民放側の主張を読んで、最初に浮かんだのが、あの「帰って来たヨッパライ」の歌詞の一節だったのです。

交通事故で天国にやってきたにも関わらず、一向に改心しないヨッパライを、神様が一喝する場面。

「なあ、お前。まだそんなこと、やってんのでっかあ~」(声は北山修さん)という、アレです・・・・


パナソニック新型テレビ、民放各局がCM放送拒否

テレビ画面に放送番組とインターネットのサイトなどが一緒に表示されるのは問題だとして、民放キー局がパナソニックの新型テレビのCM放送を拒否していることがわかった。大手広告主のCMを放送しないのは異例だ。

民放関係者によると、問題にしているのは4月下旬に発売された新型の「スマートビエラ」。テレビ起動時に、放送中の番組の右側と下に、放送とは関係ないサイトや、ネット動画にアクセスできる画面が表示される。

民放側はパナソニックに対し、視聴者が放送番組とネット情報を混同するおそれがあるとして、表示方法の変更を求めている。放送局が提供するデータ放送に不具合が生じるケースもあるとしており、パナソニックと協議を続けているという。

一方、パナソニックはいまのところ、番組とネット情報を明確に区分しているとの立場だ。同社広報は、「スマートテレビは新しいサービス。放送局側と協議して放送と通信の新たなルール作りを進めているところなので、現時点ではコメントを控えたい」としている。

(朝日新聞 2013.07.07)


・・・・テレビ局側がどう思っていようと、「テレビ」という家電が、今後はテレビ放送もネットもOKな、スマートテレビ的なものになっていくのは、もはや必然でしょう。

これからは、「放送中の番組の右側と下に、放送とは関係ないサイトや、ネット動画にアクセスできる画面が表示される」のが当たり前になります。

ユーザーにとって、そのほうが便利だから。

ユーザー・ファーストって、そういうものだし。

たとえば若者たちの間では、テレビを流しながらPCやスマホで感想などを書いたり読んだり、というテレビの「見方」は別に珍しくない。

スマートテレビにすることで、若者に限らず、テレビ放送を見てくれるなら結構なことだと思わなきゃ。

それを、今どき、「視聴者が放送番組とネット情報を混同するおそれがある」だなんて、視聴者に対しても失礼だ。

「テレビでは、テレビ放送だけを見ろ」と言わんばかりの姿勢も、大いに疑問。

テレビ局側の本音としては、

ネットと同じ画面に置かれたら、放送番組をちゃんと見なくなる。

それは広告媒体としての価値の低下で、企業は広告出稿を渋る。

テレビ局の広告収入が減る。

それは困る。

というようなことだろうか。

いやはや、「まだそんなこと、言ってんのでっかあ~」です(笑)。


TBS、自民党の「どっちもどっち」

2013年07月08日 | テレビ・ラジオ・メディア

自民党、TBSテレビへの出演拒否を解除 
「事実上の謝罪」とはなんなのか

自民党は2013年7月5日、TBSテレビへの党役員の出演・取材に関する一時停止を解除したと発表した。

自民党は国会最終日の6月26日に放送された「NEWS23」について、「公平公正を欠く部分」があったとして、翌27日から抗議を開始したが、参院選公示日(7月4日)までに「誠意ある回答」が得られなかったとして、4日に取材などの一時停止を通告していた。

自民党「事実上の謝罪と受け止めた」

自民党は5日、公式サイトに「TBS 『NEW23』への抗議を巡る経過」(原文ママ)と題した記事を投稿。経過説明とともに、6月27日の西野智彦報道局長宛ての抗議文、28日の「NEWS23」南部雅弘プロデューサーからの回答文、29日の南部プロデューサー宛ての抗議文、7月5日の西野報道局長からの回答文を掲載した。

また5日夕方には、西野報道局長が小此木八郎筆頭副幹事長と萩生田光一総裁特別補佐を訪ね、

「ご迷惑をおかけしました」
「問責決議可決に至る過程についての説明が足りていなかった」
「民間の方のコメントが野党の立場の代弁と受け止められかねないものであった」
「今後一層様々な立場からの意見を、事実に即して、公平公正に報道して参る所存」

と説明したといい、これらの発言を受けて、

「わが党としてもそれらすべてを合わせてTBSテレビ側からの事実上の謝罪と受け止め、党役員の出演や取材に関して一時停止を解除しました」

と話している。

TBS「訂正・謝罪はしていない」

一方、6日の毎日新聞朝刊は、TBSの龍崎孝政治部長のコメントを掲載した。

「報道局長が自民党を訪問し、抗議に対し文書で回答するとともに説明したが、放送内容について訂正・謝罪はしていない」

として、「事実上の謝罪」を真っ向から否定している。自民党サイトに掲載された5日の西野報道局長の回答文も、

「弊社としましては、『問責決議可決に至る過程についての説明が足りず、また民間の方のコメントが野党の立場の代弁と受け止められかねないものだった』等と、御党より指摘を受けたことについて重く受け止めます」

「弊社としましても、今後一層様々な立場からの意見を、事実に即して、公平公正に報道して参る所存です」

などというもので、直接的な謝罪表現は使われていない。この両者、「事実上」をめぐって、まだまだ平行線をたどりそうだ。

(J-CASTニュース 2013.07.06)


・・・・正直言って、「どっちもどっち」というのが第一印象です(笑)。

自民党は、TBSに対して、きちんとした「反論」もせずに、いきなり「出演・取材拒否」のカードを切った。

TBSも、理不尽ともいえる「出演・取材拒否」と戦いもせず、謝罪と相手が受け取れるような、中途半端な「文書」を提出した。

「本当のところ、この件、どうなのさ」という視聴者(国民)の疑問に、両者とも、明確に答えていないと思うのです。

うーん、やはり「どっちもどっち」だなあ。


今週の「読んで、書評を書いた本」 2013.07.08

2013年07月08日 | 書評した本たち

宮崎駿監督の新作「風立ちぬ」

その公開(20日)まで、2週間を切った。

ゼロ戦を設計した堀越二郎が登場するということで、ただ今、予習中(笑)。

吉村昭 『零式(れいしき)戦闘機』(新潮文庫)です。

読んでみると、ゼロ戦がいきなり生まれたわけではないことが、よくわかる。

三菱重工や中島飛行機の経験と蓄積があり、それを踏まえた堀越たちの果敢な挑戦でした。

それにしても、当時の海軍が突きつけた要求はとても高かった。

「チーム堀越」は、それをいかにクリアしていったのか。

これは堀越の伝記ではなく、ゼロ戦とそれに関わった人々を描いた、優れた記録文学です。




今週の「読んで、書評を書いた本」は、以下の通りです。

嶋 浩一郎 『なぜ本屋に行くとアイデアが生まれるのか』 
祥伝社新書

平敷安常 『アイウィットネス~時代を目撃したカメラマン』 講談社

野呂邦暢 『棕櫚の葉を風にそよがせよ』 文遊社

岡崎宏司 『フォルクスワーゲン&7THゴルフ 連鎖する奇跡』 
日之出出版

* 書いた書評は、
  発売中の『週刊新潮』(7月11日号)
  読書欄に掲載されています。