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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

アナウンサーとキャスター

2009年02月03日 | メディアでのコメント・論評

雑誌『サイゾー』の取材を受けた。テーマは「テレビキャスター」。

背景には、TBSの4月改編で、平日18時~20時の「大型報道番組」のキャスターとして、現在は局アナの小林麻耶さんが起用されることなどがある。

では、アナウンサーとキャスターはどう違うのか。

アナウンサーは、ニュース(出来事)を伝えることが仕事だ。ニュース原稿を正確に、わかりやすく読むことが基本となる。

キャスターは、原稿を読むだけではない。そこには、「解説」の要素も含む、ニュース自体の“読み方”を伝える役割があるのだ。

つい先日、小林アナ(4月からはフリー)の起用に関して、「日刊ゲンダイ」の取材があり、記事の中に、以下のような私のコメントが掲載された。

「小林のアナウンス力は申し分ありません。しかし、どちらかというとバラエティーの人で、ニコニコしているイメージが定着しています。その小林が深刻なニュースを伝えたとしても、共感する視聴者がどれだけいるか疑問です。
また、報道キャスターは単に原稿を読むだけではなく、自分の言葉でニュースを伝えなければなりません。小林には政治、事件、国際問題などの各分野に関して、裏打ちされた知識や見識が求められる。
フタを開けてみないと、彼女にキャスターが務まるかは分かりません」(1月29日付 日刊ゲンダイ)

厳しいコメントかもしれないが、本来、「キャスター」とはそういうものなのである。

それは、今から47年前の1962年に、<日本初の本格的キャスターニュース番組>である「JNNニュースコープ」の放送を開始したTBS自身が最もよく知っているはずだ。

初代キャスターは、当時共同通信の記者だった田英夫さん(後に参議院議員)、そして読売新聞記者だった戸川猪佐武さん(後に政治評論家・作家)である。

小林麻耶さんは、いわば彼らが座っていた席にすわることになる。

ややオーバーにいえば、その日、その日の出来事が一体どんな意味を持つのかを、世界的な横軸と、歴史的な縦軸の中で、視聴者に伝えていくのが役割なのだ。

ただし、今のTBSが、麻耶さんに、何を、どれだけ期待しているのかは、わからない。願わくば、単なる“客寄せパンダ”でないことを、ご本人のためにも祈りたい。


ちなみに、明日4日の読売新聞夕刊に、先日取材があった「4月改編」に関する解説コメントが載る予定です。