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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

雨のお台場で、映像の未来に触れた午後

2008年09月20日 | 本・新聞・雑誌・活字

昨日、お台場の日本科学未来館へ、ある映像作品を見に行った。

立教大学と日本科学未来館が共同制作した『かぐやの夢~月と日本人・二つの「かぐや」の物語』である。

二つの「かぐや」とは、月周回衛星「かぐや」と、千年前に生まれた『竹取物語』の「かぐや」を指す。衛星「かぐや」が送ってきた月面の映像と、立教大学が所蔵する『竹取物語絵巻』、そして勅使河原宏さんの指導によるダンスなどが融合され、これまでにないテイストの映像作品となっていた。

しかし、一番の特徴は、これが「超高精細4K映像システム」によって制作されていることだ。4Kとは、画像の解像度、すなわち、きめ細かさが、ハイビジョンテレビの4倍に相当するということ。「4Kによるストーリーをもった映像作品」としては世界初だそうだ。

ハイビジョン自体が、高画質を標榜しているが、確かに4Kはそれを大きく凌ぐ映像だった。

まず、特大の4Kプロジェクターが投射する巨大なスクリーン。タテ6m、ヨコ10mはある。これが800インチだ。科学館の大きなホールの壁面いっぱいに映し出される様子は、それだけでもかなり感動的。

海辺の風景もクリア、かつリアルで、目の前に海があるようだ。そして、超望遠レンズで撮られた月が、スクリーンの中央に浮かぶ。肉眼や普通の望遠鏡で見る月とは全く違う。手が届きそうな、という表現があるが、まさにそんな感じだ。

衛星「かぐや」にはハイビジョンカメラが搭載されており、その映像はNHKで放送されて、何度か見ていたが、その映像を4K、800インチで見ると、これまた「体験」の質が変わってくる。

ゆっくりと月面を移動する映像を眺めていると、自分が「かぐや」に乗船しているような錯覚に陥るのだ。画面の中に自分が入り込んでしまうような<アイマックス>の巨大映像が好きで、国内・国外で見てきたが、それに近い感覚だった。

フィルムとも、もちろん普通のビデオとも違う、新たな「映像体験」だ。

構成・演出は、立教大学現代心理学部教授の佐藤一彦さん。佐藤さんは、私にとって、テレビの世界での先輩であり、修行時代には直接多くのことを教えてもらった方だ。以前から、演出はもちろんだが、技術的なことについても造詣が深い。

これまで、デジタルシネマというと、慶大などが先行していたが、佐藤さんを擁した立教が、いきなり最前線に躍り出てきた感じだ。

「2010年代になると、この4K映像システムが、映画館はもちろん、公共ホールや学校、病院などに整備され、劇映画の上映だけでなく、スポーツ中継や音楽ライブ、遠隔医療などに利用されると考えられている」と佐藤さん。これは大変なことなのだ。

上映会終了後は、館内にある、大好きなミュージアムショップへと向かった。

ここで、高校時代の同級生で、写真家の遠藤湖舟くんの作品が、ポストカードとして売られているのを発見。その天体写真はNASA関連サイトでも絶賛されている。いわば世界的なのだ。写真集『宇宙からの贈りもの』(講談社)にも収録されている、月や星の写真のポストカード6枚セットを購入した。

もう一点、どうしても欲しくなって、HONDAのロボット、アシモのフィギュアも買ってしまった。ちょいうれし。

雨のお台場で、映像の未来に触れた午後だった。

遠藤湖舟写真集 宇宙からの贈りもの
遠藤 湖舟
講談社

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月の科学―「かぐや」が拓く月探査
青木 満
ベレ出版

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