『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

・極上の “Less”

2011年05月10日 17時18分10秒 | ■世事抄論

 つい最近、行きつけの喫茶店で「料理人」という「M氏」と知り合いになった。数日後、筆者のブログに対して「メール」が来た。最初から遡って観ていただいたようだ(※抜粋。下線・強調は筆者)。
 

 『……"Less is more(少ないほど豊か)"(※註1)という話題がありましたね。私の修行中にもよく言われた言葉です。3年から5年の経験を積むと、料理人として必要な技術はほぼ習得します。そこでこの期間に勉強した知識から、やりたいことが山ほど出てきます。

 これくらいの経験の料理人に、たとえば「ホタテ」を使った一皿を作らせると渾身の逸品を作り上げます。「持てる技術」を総動員するのはいいとしても、たった「ひと皿」のために、10種類以上もの「食材」を使うようなものが出てきます。「主素材」が何であるのか判らないようなお皿です。このような例は、自分の「技術」に本当の自信が無いことの表れでしょう。

 経験値が上がってくると、「ひと皿」に“のる”素材の数は減り、よりシンプルに、しかし、食材同士の組合せは『絶にして妙』となり、素晴らしい「ひと皿」となります。

 私はフレンチの経験が長いのですが、「ひと皿」を構成する要素は、「主素材」、「付け合せ2品」、そして「ソースと言ったところでしょうか。「構成素材」が少ないとごまかしがききませんから、本当の意味での「技術」や「センス」の差が出ます。

 どの業界も"Less is more(少ないほど豊か)"が大切ですね。極上のLess”を得るためにも、「基本」が大切ということを改めて考えさせられるところです』

     ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 『極上のless』とは、何と洒落た表現だろうか。筆者はすっかり気に入り、さっそくこのコラムのタイトルに拝借した。
 それにしても、『“極上のLess”を得るためにも基本が大切』というのは、総ての分野に共通しているように思う。
 建築や料理にしても。またビジネスや芸術においても。つまりは文学や美術、そして音楽においても、どこかにそのエキスが潜んでいるような気がしてならない。

 高校生の頃、「エレキバンド」を組み、ドラムを担当していた。このとき「ドラム演奏」に関して言われていた言葉に『おかずが多い』というのがあった(今でも通用しているように思う)。どうやらこの言葉も、“極上のLess”に通じるものがあるようだ。

 「エレキバンド」において、ドラムは本来、「テンポ」と「リズム」の「指標」といえる。「リード」「サイド」「ベース」という「三つのギター」を導きながらも、目立ちすぎてはいけない。この“目立ちすぎる”ような「ドラミング」すなわちドラム演奏を『おかずが多い』と言う。「主素材」はあくまでも「ギター」ことに「リードギター」にあるからだ。

 「エレキギター」は、通常の「アコースティックギター」と異なり、かなりボリューム(音量)が出る。そのため、ドラムはそのボリュームに負けないよう、いきおい「ビート」を効かせることとなる。ただでさえ大きな音のドラムが、やたら本来のリズムを超えた「ドラミング」に走ってはうるさいばかりだ。

 しかし、アドリブが当たり前のジャズの場合、ドラムは一定のリズムをさりげなく刻みながらも巧みな「ドラミング」により、ピアノなどのメロディ楽器を引き立たせる。さらに楽器同士のいわば“緩衝帯”として、楽器相互の「強弱」のバランスを取り、またときには魅力的な「メロディの変調」を導いていく。「ディブ・ブルーベック・カルテット」の5/4拍子という『TAKE FIVE(テイクファイブ)』のドラミングは、その典型と言えるかもしれない。

 ともあれジャズの場合、「スネヤドラム」が「ホタテ」となり、「バスドラム」と「ハイハット(シンバル)」がその「付け合わせ」といえるのかもしれない。そして「トップシンバル」は、無論「ソース」ということになるのだろう。……そんなことを考えながら、久しぶりに聴いた『TAKE FIVE』のドラムソロに軽い興奮を覚えた。

 

     ★★★★★★★ 付け合わせ ★★★★★★★
 
 ――“極上のless”……味わい深い言葉だわ。“Less is more”って「少ないほど豊か」って意味でしょ? 何であれ、“種類” も “量” も控えるってことなのでしょうね。“かぎられたごく少量のもの” をじっくり味わうためにも、という意味が込められてて……まあ、何てステキ。

 ……え? それで今晩のメニュー、もう決めたとおっしゃるの? Less is more menu” ? 

 ……ええ。ええ。限りなくシンプルな「主素材」に、ぎりぎりまで抑えた「付け合わせ」……というわけ? なんだかよくわからないわ。……で、その「メニューの正体」は? 

 「豚キムチ」に「辛子めんたい」と「イカの塩辛」の「付け合わせ」

 ……Oh  my  god!



◆「Less is more」(2009.5.17) ※本ブログです。


 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ・建築家は光の奉仕者(安藤... | トップ | ・『ディープピープル(DEEP ... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

■世事抄論」カテゴリの最新記事