『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

続・新年会の教訓

2010年01月18日 06時35分16秒 | ■世事抄論

 

 第二部の「立食パーティ」が始まった。だが「都心のホテル」とは異なり、コンパニオンの姿などどこにも見当たらない。
 『それでは乾杯の音頭を……』と、司会者が“遅れて駆け付けた”(という)町長を促す。だが注がれたビールのグラスを持っているのは、町長と周辺の数人のみ。その他大勢の参加者は、どこかぎこちない様子で立っている。土地柄だろうか。明らかに個人商店の経営者とおぼしき人や、年配者の姿が目立った。

 各自が手酌と言うわけにもいかない……そう思った私は、やむなく両手にグラスを掴んで周りの数人に渡し、ホスト覚悟でビールを注ぎ始めた。そのとき、いつの間にか横に立っていた女性が私にグラスを勧め、さりげなく男性陣にビールを注ぎ始めた。

 注がれた年配の男性が彼女にビールを注ぎ返し、さっそく名刺を彼女に渡した。渡しながら、『何か看板の仕事があったら』と告げている。彼女はと思って見ていると、ややためらいがちにバッグから名刺を取り出し、『スナックをしております』と小声で彼に渡した。なるほど手慣れているはずだ。だがコンパニオンの代役ではなく、あくまでも商工会の会員という。私も彼女と名刺を交換した。
 
 この交換を機に、私のテーブルにいた六、七人の名刺交換が始まった。……理髪店、花屋、建物の清掃管理会社の幹部、造園業者、個人経営の広告代理店、何屋さんかよくわからないが、建具・家具関係者。広告編集関係の会社。いずれも個人商店感覚の会社であり、零細企業経営者の雰囲気があった。名刺を配る姿がたどたどしく、営業慣れしたところが少しもなかった。それだけに微笑ましく、また好感が持てた。

 そこへ、昨夏の総選挙で落選した元代議士の先生が割って入って来た。彼は何十枚もの名刺を、まるで「トランプ」を配るように手際よく渡していく。その際、周囲に聞こえるような元気な声で、『これからですよ』とメガネの奥に意味ありげな笑みを湛(たた)えている。“街頭では握手、パーティでは名刺”という議員活動の基本を意欲的に貫く姿は、さすがと言うほかはない。

 眼を転じると、ステージでは抽選が始まっていた。
 ようやくテーブルに眼を注いだ。おせち料理や刺身が目に付いたが、残りはわずかしかない。たっぷりあるのは、「そば」と「うどん」コーナーだけのようだ。だが先ほどの挨拶と来賓紹介でげんなりしていた我が胃袋は、五時を回ったくらいの時間帯を食事時とは感じない。それでも一杯のそばを口にし、煙草の煙から逃れるために会場をあとにしようとした。

 そのとき、『……81番……。81番……81番の方はいらっしゃいませんか?』と大きな声が繰り返されている。はて81番……。頭の片隅にあるような、ないような……と思い、入場の際に渡された『ご縁袋』(5円が入ったポチ袋)に何気なく眼をやった。「81番」が印字してあり、何等かは知らないが、とにかく何かが当たったのだ。このクジ運拙きアラカンに。

 景品はいかにも「何とか平野」の町にふさわしく、地元産の「お米」だった。だが、少し酔いを覚えた五体には、ずっしりと重かった。

        ★   ★   ★

 ――年の初めにお米が当たるなんて、縁起がいいわ。5キロってとこかしら、これ高いのよ。でもとっても美味しいの。地元のJAのものなのね。
 ……ところで、お帰りは? え? タクシーだったの? お米が重たかったから、バスは止めにしたっですって? 

 …………で、そのタクシー代とやらは、おいくらかしら? ……え! そんなに! まあ。それって、お米の2倍の料金のようだわ。……なんて惜しいことを! せっかくの“価値の創造”が“価値の相殺”……以下にになっちゃうなんて……。


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