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《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

●演劇鑑賞まとめ/『散歩する侵略者』『いちごをたべたい』(九州大学演劇部)

2018年05月06日 00時21分40秒 | ●演劇鑑賞

 《九演》に期待するもの

 今回は『:散歩する侵略者』と『:いちごをたべたい』の2つの舞台について、補足しながら最後の “締め”としたい。

 今回の舞台〈〉の鑑賞文については、友人より『九演に対する評としては、いつになく厳しいのでは……』というメールを受けた。『厳しい』という言葉に暫し沈思黙考の体であったが、筆者としては“励ましと期待”の気持ちの表れと思っている。九演》すなわち「九州大学演劇部」(※注1)は、全国でもトップレベルの「学生演劇集団」だ。そういう《九演》に対する“社交辞令的な賛辞”など、非礼というものだろう。

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 さて、今回の〈A・B〉2つの舞台の組み合わせは、なかなかのバランスといえる。《定期公演》とあって、公演全体のボリュームや登場させるべき部員総数などを周到に加味しながら、メイン&サブの〈舞台〉のテーマ&ストーリーなどの組み合わせを考慮したのだろう。

 書画に例えるなら、舞台〈〉はちょっと小ぶりの「山水画の条幅」であり、〈〉は印象派風の「油絵の小品」といえる。無論、前者は墨痕鮮やかなモノクロであり、後者はこじゃれた金色装飾の額縁に、色彩豊かなキャンバスが収まったというところだろうか。

 そう考えると、カラフルな照明や分かりやすいBGMの舞台〈〉に対し、〈〉は敢えて“地味な照明や音響・効果”に徹したのかもしれない。つまりは〈散歩する侵略者〉を取り巻く“不条理性”や“不可思議性”を際立たせ、さらに“捉えがたい感情や意識”という内面の表現には、《全ての美術、大・小道具、衣装、照明、音響・効果等》を“モノトーン感覚”で貫くべし……とでも言うかのように。

 筆者がそう考えた理由は、公演当日の「案内チラシ」(※注2)の「スタッフ」名が、〈A・B2作品共通のスタッフ〉として表記されていたからだ。すなわち、「照明、音響、装置、小道具、衣装、宣伝美術、制作」の全てにおいて、各スタッフは〈A・Bいずれの作品も手掛けたことを意味する。無論、両舞台における“力点の置き方”に各人各様の違いはあるのだろうが……。

 以上のような“モノトーン感覚”で貫くべしとの意図が実際にあったとしたら、それは“一般的な学生演劇のレベルを超えて”いる。もっとも観劇者としては嬉しいことであり、《九演》舞台の尽きない魅力にまた一歩近づいたことになるのだが……。

               ★

 それにしても、〈〉におけるBGMの選曲やオペレーションは素晴らしいの一語に尽きる。ことにヒロイン〈姉さん〉の複雑に揺れる心情をラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」で表現したところなど心憎い〈音響〉効果であり、このときの〈照明〉とのオペレーション・コラボも申し分なかった。

 優れた〈照明〉あっての〈音響〉、そして無論、優れた〈音響〉あっての〈照明〉ということを、全身全霊を通して体得することができた。筆者は観劇中“(聞こえるものの見えない音楽・効果音”を“(見えるものの聞こえない)照明とともに視覚的に”感じながら、同時に“(見えるものの聞こえない照明”を“(聞こえるものの見えない)音楽・効果音”とともに聴覚的に”感じてもいた。

 このような“感じ方”こそ、《九演》が2014年11月に《海峡演劇祭2014参加作品》として上演した『桜刀』において体験したときの〈照明〉と〈音響・効果〉に通じるものでもあった。願わくば、あのように秀逸なデザイニングやオペレーションを確実に引き継ぎ、そこからさらに進化させて欲しい。

 それは九州のみならず、全国的に見て抜きん出た《九演》の使命であるのかもしれない。少なくとも筆者はそう思っているし、近い将来その一端を明らかにする機会があればと密かに願っている。


  ※注1:九州大学伊都キャンパス  ※注2:この「案内チラシ」自体の装丁やレイアウトそのものが、すでに〈A・B〉両舞台の “一体性” ……というより “不即不離性” といったニュアンスを醸し出しているようだ。


 散歩する侵略者(作/前川知大、演出/久保文恵)  

キャスト/加瀬鳴海:川口紗梛、加瀬真治:東馬場徳、桜井:中島怜音、船越明日美:大和真彩子、船越浩紀:白上惠太、天野光夫:塩塚直輝、立花あきら:下田花音、丸尾:小貫真太郎、長谷部:末廣勝大、車田:本西祐也 

公演情報散歩する侵略者』(九州大学演劇部2017年度後期定期公演) 


  『いちごをたべたい』 (作・演出/大野奈美、助演/菅本千尋

キャスト/姉さん:野上紗羽、賢治:橋本大智、イチ:槌井雄一、想太:久永海斗、萌:伊東佳穂、友輔:本名慶次、ちーちゃん:小島彩

◆公開情報いちごをたべたい』(九州大学演劇部2017年度後期定期公演)


  なお当日受け取った「案内チラシ」には、今回上演された〈2作品共通のスタッフ〉として、以下の名前が表記されていた。

スタッフ/【照明】石橋知佳、菅本千尋、野上紗羽、東馬場徳、塩塚直輝、末廣勝大 音響】河北佐那子、久保文恵、川口紗梛、染矢光信、小貫真太郎、小島彩、槌井雄一、橋本大智、本名慶次、大和真彩子 【装置】伊東佳穂、高橋拓也、川口紗梛、坂上義実、久永海斗、大野奈美、下田花音、白上惠太、中嶋怜音、本西祐也 【小道具】塩塚直輝、東馬場徳、染矢光信、小貫真太郎、槌井雄一、橋本大智 【衣装】小島彩、川口紗梛、菅本千尋、石橋知佳、下田花音、白上惠太 【宣伝美術】大和真彩子、野上紗羽、染矢光信、小島彩、下田花音、本名慶次 【制作】大野奈美、久永海斗、坂上義実、菅本千尋、石橋知佳、末廣勝大、橋本大智   


  最後に散歩する侵略者』の演出を手掛けた久保文恵、『いちごをたべたい』の作・演出を担った大野奈美、同助演の菅本千尋各嬢以下、これら2つの舞台に携わった全てのキャスト・スタッフ諸君」の、学業を含めた今後いっそうの精進を祈りつつ、敬愛と感謝の意を込めて本鑑賞の結びの言葉としたい。(了)

 

 tea break――  

◆『辻井伸行:月の光&亡き王女のためのパヴァーヌ』[10分07秒](デヴュー10周年記念特別コンサートから) クリック

 

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 ――それにしても、宇宙人が “概念” を奪うですって? あたくしの “美貌” や “品格” が奪われるなんて……ああ、やだやだ。……でも、奪われるのは “概念” なんでしょ? ……だったら平気。“概念” は奪われても、あたくしの “美貌“ や ”品格“ の “本質” が奪われるわけでもないでしょうから……。

 それにしても、あなたのお部屋……何というありさまなの? ああ! やだやだ。足の踏み場もないって……ほんとにあるのね。連休前に全部片づけるっておっしゃってたのに。

 ……え? 何ですって? 宇宙人に “片付け” という “概念” を奪われたって言うの? ふう~ん。……でもそれは絶対にないわ。あたくし1,000,000%の自信があるの。……あなたはこの世に来るとき、片付け”という “概念” を忘れて来たのよ。

 ……ああ! 神様。 今からでも遅くはありません。どうか、この方に “片付け” の “概念” をお与えくださいますように。……ほら、あなたも一緒にお願いしましょ。……ねえ? 聞いてる? ……ね~え? え? あれっ?……寝ちゃったの……? 

 


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