ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

〝蟻殺すわれ…〟

2019年05月25日 | 俳句

 昨夜、パソコンのキーボードの間を黒い物がチョロチョロと…ウン?何?蟻でした。思わず走り出てきたところをひねり潰してしまいました。そのあっけない死に、ちょっと…考えてしまいました。〝なんで~こんなところに迷い込んで来たのよ~〟と、自分を弁護しながらもちょっぴり心が痛みました。

 そのとき、ふと先日読んだ『加藤楸邨の一〇〇句を読む』(石寒太著・飯塚書店)の1句が浮かんできました。

  蟻殺すわれを三人の子に見られぬ

 昭和12年の作(句集『寒雷』所収)、楸邨32歳だそうです。楸邨の長男・穂高氏の著書『楸邨俳句365日』に、この時の様子を書いたエッセイがあり、それを寒太氏が紹介していますので、ここに転載しますね。

 楸邨にして蟻殺すとは夏の真昼の殺戮(さつりく)であり異様である。いつも三人一と絡げで動いている子らの目は無心。見られたと感じたのは作者の人間性。父親であり了すには気の衰えや混沌の露わを固く禁ぜねばならぬのだ。足下を奔る蟻の秩序を蹂躙(じゅうりん)でもするしかない学問・生活・句作上の壁、出口のないこの頃の父の鬱積の真相を私が知ったのは、執着強い父の生き方に反撥した中学時代、反抗期のさ中のことだった。

 と、この句は「父の鬱積の真相」であったととらえているのです。

 私が考えるにこの時は、どうも楸邨を取り巻く個人的情況だけでなく全ての世の中の情況が〝負〟に向かっている時代だったような気がします。昭和12年は西暦1937年、当時の楸邨はまだ32歳。次の略歴を見るとよく分かるでしょう。

 加藤楸邨(1905~1993)は、(中略)1929年に結婚し、旧制埼玉県立粕壁中学校に教員として奉職。1931年、粕壁中学の同僚たちに強引に誘われ、それまで興味のなかった俳句をはじめる。さらに粕壁の病院に応援診療に来ていた水原秋櫻子と出会い、これを契機として秋桜子に師事、「馬醉木」に投句を開始。すぐに頭角を現して、1933年に第2回馬酔木賞を受賞。1935年、「馬酔木」同人に推される。1937年、秋桜子の慫慂(しょうよう)を受けて決意し、教員を辞して東京文理科大学(現筑波大学)国文科に入学。妻と三人の子を連れて上京し、石田波郷とともに「馬酔木」発行所で編集および発行事務を務めながら大学に通う。(Wikipedia参考)

 このように、初めての馴れぬ都会生活とどうしようもない年齢差での大学生活の中で、収入と言えば、放課後から手伝う「馬醉木」編集手当と夜の家庭教師料だけだったという…これが一人ならまだしも、妻と三人の子を養わなければならなかったという情況を考えればどんな心境だったかと言うことは容易く想像できるでしょう。そこまでしての学業への執念が、次第に軍国色の濃くなりつつある世の中で危ぶまれるという…そういう中で必死に歯を食いしばって耐えている楸邨の姿…。

 次の年に詠んだ〈鰯雲人に告ぐべきことならず〉という楸邨の代表句があります。〝鰯雲〟が出ると私はすぐに思い浮べる句なんですが、先程の本で寒太氏は、「時代は一日ごとに軍国主義に傾き、国民の思想統制は厳しくなっていった。思うことも自由に話せない。打ちあけようにも、話す相手もいない。そんな鬱々とした気分がつづいている。空には鰯雲がびっしりと浮かんでいる。」と鑑賞されています。

 ネットで他の楸邨の蟻の句を捜してみると、〈我意の目を落し膝もて蟻を殺す〉もありました。この句がいつ頃の作か、どの句集に所収されているのか、分からなかったのですが、この句の場合は殺す気で、すなわち本気で殺したような気がしますが、いかがでしょう?

 蟻は三夏の季語ですが、いろんな意味でよく詠まれています。私の第一句集にも〈蟻の列わが病影を過りゆく〉がありました。

 写真は、我が家の(?)〝蟻〟です。蟻にもいろいろあるんでしょうが、庭にいるのはちょっと大きめ…山蟻ほどではありません。この蟻の巣は小さいから〝蟻塚〟とは違うんでしょうね。以前カンボジアで見た蟻塚の大きかったこと、ビックリしました。

 なかなかすばしこくって、写真を撮らせてくれなかったのですが、この蟻さんカメラが分かって意識したのか、ちょっと止まってくれたんですよ。へエッ、これも発見ですかね~。

 

 

 余計なことですが、今巨人とカーブの試合をテレビで観ながらこれ書いています。8回表7-1なので、このままいけば11連勝かしら。ヤッターです!最初の頃のあの弱さは何だったんでしょうかね~笑いが止まりません…などと言っていたらホームランを打たれました。まだ安心してはいけませんよ。ほら、もう7ー5になって…さあ、残るは9回裏です!フレーフレーカープ!

 

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