ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

〝春分の日〟or〝彼岸の中日〟、エッ〝黒田杏子〟??

2023年03月21日 | 俳句

 今日は〝春分の日〟、二十四節気の一つで、太陽が真東に昇って真西に沈み昼夜の長さがほぼ等しい日です。この日を境にして北半球では昼が次第に長くなっていき、夜が短くなります。

  春分といふ公平な一日かな     鈴木榮子

 子供の頃、私は兄弟が多かったし、姉たち(先妻の子)もいましたから、母はこの〝公平〟ということに一番気を使ったようでした。皆に平等にしてやらなくっちゃ…といっても、まだ戦後の食糧難の頃で裕福でもありませんでしたからね。よく覚えているのは西瓜。この丸い西瓜を喧嘩しないように均等に切って食べさせる。みんな大好きですからその西瓜に大小があると、さあ大変。また年上からでしたから最後にもらう者が小さい…そうならないようにと、母の切る西瓜は見事でした。何事にもこういう調子で…そんな母を見習って育った私も切るのは上手いんですよ。ホント!

 とにかく何においても〝公平〟がいいですよね。そうしたらこの世には醜い争いなんかなくなるのではと思いますが…いかがでしょう?

 また今日は〝彼岸の中日〟でもあります。俳句で〝彼岸〟といえば春の彼岸のこと。秋の、即ち〝秋分の日〟は、〝秋彼岸〟や〝後の彼岸〟といいますから気をつけましょう。

  彼岸中日子が来る日とす約はせねど 安住敦

 〝彼岸中日〟は、「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」として国民の祝日になっていますし、墓参りへ行ってご先祖様を供養したり感謝するという日本特有の風習があります。だから、上掲句は〝うちの子は親や先祖を大切にするから、約束しなくても彼岸にはきっと訪ねてきてくれるだろう…〟という子への心からの信頼感でしょうか。

 実は我家でも然り…京都の義弟夫婦がお彼岸にお婆ちゃんに会いにこちら方面へ来たいという。それで、21日で光市のホテルを予約したのですが、天気予報を見るとこの日は一日中雨、次の日も悪いようでしたので変更することに。できれば桜の見頃をと思ったのですが、全員の都合のよい日がなかなかなくて、また、この日はいいと思うと今度は宿に空きがなかったりして、結局4月7日・8日ということになりました。その時はまたご報告しますね。お楽しみに…でも、もう桜は無理でしょうが…残念。

 ところで、この桜を見る旅というのはいくら計画してもなかなか上手くいきません。以前吉野の千本桜を見たいと、お婆ちゃんと2人で京都の義妹に見頃を調べた上での案内を頼んだのですが、行ってみたら一足遅かった!だって近くでさえ一番の見頃に行けるというのはなかなかないですもの。

 昔まだ現役の頃、退職したら毎年桜の名所を見てまわろうよと、主人と話していたんですが、未だに殆ど実行できないまま。いや、…まだ望みは捨てていませんよ。

 そういえば、先日お亡くなりになった黒田杏子さんは、30歳から「日本列島桜花巡礼」に出て全国を訪ね歩き、花の盛りが短い桜を見尽くすまでに28年を費やしたとか。その執念がスゴイですね。前にも書きましたが、杏子さんの心には、〝俳句の基本は観察〟という師の山口青邨の教えがあって、〝季語の現場に立つ〟ことを念頭に徹底して行動されたのです。亡くなられたのも山梨県での講演の二日後だったとか。要するに季語の現場で亡くなられたと言ってもいいのかも。

 確か、以前の馬酔木同人研修会でお目に掛かった時は車椅子でしたから、もう何年前になるのでしょうか。その時恐らく最初の脳梗塞で倒れられた後だったのではと思うのですが、それから見事に再起され、また季語の現場に立って詠み続けておられたのでしょう。更に、出版やイベントにもと最後まで精力的に活動を続けてられたようすです。

 『黒田杏子歳時記』の序には、「現地へ出かけてゆくことは即ちその場に存在する地霊に出合うこと」であり、「地霊は実際にその地を踏んだ足の裏から全身にのぼってくる」と、書いてあるそうですよ。 

  身の奥の鈴鳴りいづるさくらかな  黒田杏子

 『花下草上』の中の一句ですが、桜が散りしきる下に立っていると、我が身の奥の鈴が鳴り出すというような意味。その鳴り出す〝鈴〟とはきっと杏子さんの心が桜の霊に出合って共鳴して発する音なのでしょう。恐らく二つの霊魂が一体となって響き合っているからに違いありません。そんな時間が持てるものなら私も持ちたい!…でも無理です。それだけの熱情はもうありませんもの。

 概ね桜の花の盛りは5日間ほどの短さです。杏子さんは、そんな花を巡り花の下に佇つことを〈花に問へ奥千本の花に問へ〉のように、花の地霊との出合いを生涯続けようと決め、それを実行された方なんですね。代表句に〈花満ちてゆく鈴の音の湧くやうに〉という句もあります。

 写真は我家の〝白木蓮(はくもくれん)〟。あっという間に咲いて、あっという間に…散りました。花言葉は、その花の気品ある美しさから、「気高さ」「崇高」と。また春に咲き、樹木が全身で春を歓び慈しんでいるようなイメージから、「慈悲」「自然への愛」といった花言葉もあるとか。まるで、杏子さんに相応しい花ですね。こちらでは桜がまだなんですよ。ゴメンナサイ!  合掌

  白木蓮の散るべく風にさからへる  中村汀女

コメント (5)
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