many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

酒について

2017-11-18 17:55:37 | 読んだ本
キングズレー・エイミス 吉行淳之介/林節雄訳 昭和51年 講談社
『反死連盟』読んだあとだったかな、9月に古本市で買ったエイミスの、小説ぢゃない著書。
いや、いまだに『ラッキー・ジム』は見つけてないんだが、あまり熱心に探す気はない。
原題『ON DRINK』英国で1972年に出版されたこの本は、そのまんま酒についての本。
この訳書は、ページの下に、註解、エイミスによる註、翻訳の林氏の註、おなじく吉行氏の註がついてんだけど、いきなり最初の吉行註で、
>(略)とりあえず、私の「後書き」を読んでから、本文にとりかかってもらいたい。(略)
>(略)林節雄氏の「解説」の文章も読んでからのほうが、適当だとおもう。
なんて書いてあるんで、すなおにそれにしたがって読んでみた。
「後書き」には、「ところで、この本はやはりかなりハイブラウなもので、最初は取りつきにくいかもしれない。したがって、興味のないところは飛ばして、まず拾い読みすることをおすすめする。」なんて書いてある。
「解説」には、「これは酒の本であると同時にエイミスの文学の延長であり一部であるから」なんて書いてある。
そんなにむずかしいのかなとやや警戒したんだけど、まあふつうにあたまっから読んでって、さくさくと楽しく読むことができた。
エイミスの文章は難解らしいけど、それを感じなかったのは、この翻訳が上手なんだろうという結論でいいのかね。
さてさて、なかみはどんな酒をどんなふうに飲んだらいいかとか、そういうことがならんでたりするんだけど、たしかにハウツーって感じでもないし、ウンチクって感じでもなく、読み物としておもしろい。
ところどころ「G・P」ってのが番号つきで掲げられてて、それはジェネラル・プリンシプルの略で、公理のことだという。
公理って、あれだよねえ、数学でのあったりまえみたいなルールのこと、同じものと等しいものは互いに等しい、とか(だっけ?)。
一読して私が気に入ったのは、たとえば
G・P・4 冷やして飲む酒は、できるだけ冷やして出すことのほうが、できるだけ濃くして出すことよりも大切である。(p.104「酒のいろいろ」)
G・P・5 フルーツジュース、野菜ジュースなどのジュース類、甘味料、強い風味のあるリキュール類などをミックスする酒は、信用の置ける範囲のもので最も安い品物を求めること。手もちのロシア製、ポーランド製の本場のウォトカなどを無駄使いしてはいけない。(p.108「酒のいろいろ」)
といったとこだ。
この「酒のいろいろ」の章は、カクテルのつくりかたがたくさん出てるんだが、吉行註によれば、
>文中のカクテルの処方どおり実際につくってみてもよいが、結局は読んでその文章の味を愉しむための章である。
ということになる。
おもしろそうなレシピがあった、「タイン・ローズ」(THE TIGNE ROSE=マルタ島タイン基地の薔薇)という名前のカクテルで、
 ジンを微量
 ウイスキーを等量
 ラム酒を等量
 ウォトカを等量
 ブランデーを等量
>強く望みたいことは、どの酒も微量におさえることだ。しかも、それを守っても、ショート・ドリンクス用のグラスは背丈が短くて大した分量が入らないのにひどくきく。(略)
>夢想するだけの酒であって、飲む酒ではない。
ということで、「飲む酒ではない」というのは、この酒を教えてくれた砲兵少尉が土曜の昼にこれを3杯ふるまわれて、朦朧とした気分が月曜の朝まで続いたというエピソードが紹介されているからである。
味がどうこう言う以外に、カクテルをつくる手際なんかのことについても文章がいちいちおもしろいのがいい。
たとえば、ノルマンディーって酒のところでは、
>(略)グラスに入れ、猛烈に掻きまわす。氷を加えて猛烈に掻きまわす。(略)
なんて具合で、そうかそこまで掻きまわさなければうまいカクテルにはならないのかと合点がいく。
掻きまわすことについては、このカクテルのつくりかたの前に、うちでバーをやるときの必要な道具についての章があるんだけど、そこではシェーカーを除外している。
>ジェームズ・ボンドには失礼ではあるが、マティーニは掻きまわすものであって、シェークするものではない。濃厚な果物のジュースやリキュール類を使った飲物の場合には事情は多少異るが、そのときでも1分間余分に掻きまわしておけば、満足できる結果がいつも得られることを、これまでに私は見てきた。(p.80「酒飲みとしての道具類」)
ということで、掻きまわせば済むというのが主張されてる。
もっとも、シェーカーの問題点としては、「あまりにも小さすぎて、せいぜい6人前ぐらいの酒しか入れることができない」ということも挙げているんだが。
電気ミキサーについては、掃除しなくていいなら使えばいいと言ってるけど、やっぱ
>私の経験によれば活発に動くスプーンで間に合わないようなことは何ひとつとしてない。
ってことで、手で掻きまわせばいいというのがどこまでいっても主題であるようで。
んー、私はジン飲むときベルモットをちょっと垂らすけど、全然かきまぜないでグラス揺らすだけで飲んぢゃう。
章立ては以下のとおり。
・酒飲みのための文献
・ワイン考(その1)
・ワイン考(その2)
・ワインを買う人のためのガイド
・どの料理にどの酒を飲むか
・海外では
・酒飲みとしての道具類
・君流儀の酒を置く戸棚
・酒のいろいろ
  ショート・ドリンクス
  ロング・ドリンクス
  ホット・ドリンクス
・けちんぼ野郎のためのガイド
  けちんぼなかみさんのたものガイド
・二日酔
・呑み助のための節制食
・飲み過ぎないための方法
『本』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
« 笹まくら | トップ | 新版 酒呑みのまよい箸 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

読んだ本」カテゴリの最新記事