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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

新版 酒呑みのまよい箸

2017-11-19 18:05:16 | 読んだ本
浅野陽 平成九年 講談社
『酒について』といっしょに9月の古本まつりで買った。
酒、食べもの関係の本が多く並んでたんで、つい、もう一冊くらい、なんて買ってしまう。
古本屋行くと、一冊だけで済むってことはないねえ、私は。
これは、なんとなくタイトルだけで、選んぢゃったんだけど。
だから著者はどんなひとかも知らなかったんだけど、読んでみたら、料理家ぢゃなくて陶芸家だった。
小田原のほうに住んでるらしく、家に客人がくると好きな料理をしてもてなす、その献立をならべたもの。
おいしいものを通じて他人と仲良くなるのが得意なんで、いい食材を手に入れることができて、それを活かすべく知恵をつかって、凝ったものつくる。
まよい箸ってタイトルから、なんか気楽なもの想像してたんだけど、そうぢゃなかった、すごい手のかかった料理だす。
だけど、いろいろ並べられても、私はあんまり食べてみたいとか作ってみたいとかって気にならない、なんでだかわかんないけど。
主張されてんのは、料理は想像力だってことで、決まりきったつくり方ぢゃなくて、そのときの材料で何かおもしろいことできないかって工夫することの重要性があちこちで言われてんだけど。
だしのとりかただって、いつもお決まりの引き出し昆布でとるんぢゃなくて、うんと煮つめてもいいとか、調味料入れる量は数字で説明しない、材料次第で加減が変わるからとか。
うまく私が同意できないのは、たぶん内容が高尚すぎるからぢゃないかと思ってはいる。
>私がしたいのはこういうことじゃなくて、普通、この料理の温度はここまでだというのを、ちょっと工夫して下げてみた瞬間にみたもの、その過程にわたしは造型意欲みたいなものをみるわけです。(p.70)
なんていうのは、はあ、そうですかとしか言いようがないんだが、それ説明されちゃうと、かえっておもしろくないというか。
掘り下げていくと、日本の文化というか精神構造の話になったりして、他民族に征服されたことないから、仲の良い人たちだけで集まって共通の美意識に従っていよう、ってことになりがちだと。
そういうのは、へたするとすぐ堕落しちゃう、もろい文化だってことで、茶道とか侘びとかは意外とあやういという指摘をしてる。
まあ、精神論はともかくとして、実際の調理であちこちに出てくるこだわりのひとつに、グラデーションってのがあって、そういうのは楽しそうだと思う。
たとえば海老を焼くとき、片側しか焼かないとか。そうすると、片側は生で、反対側は焼けてて、そのあいだには半分火が通ったとこあって。
多くの食材について、そうやって扱うことで、色とか食感とか味とか、ひとつの皿のなかで変化があるのがいいってんで、それはたしかにそうだ、つくるの大変だけど、うまくできたら楽しい。
あと、やってみたいかもと思ったののひとつは、天ぷらを揚げるのに小麦粉ぢゃなくて蕎麦粉で衣つけて揚げるってやつ、それはうまそうだ。
でも、いろいろオリジナリティーを追求するようなこと言ってるわりには、揚げ物に陳腐にレモンかけて食べるんだよね、そいつはどうかと思うよ。
それにしても、いろんな食材をつかいますねえ、あまどころとかしどけとか、私のボキャブラリーには無い。
あ、どうでもいいけど、メモっときたい一行知識があった、「飛竜頭はポルトガル語のfilhosからきた言葉だそうです。filhosとは糯米と粳米の粉を半々に混ぜて揚げた食べものだということです。」
ちなみに、「新版」ってなってるのは、昭和54年に文化出版局から出た初版が絶版になってたのを、再度出版することになったからだそうです。

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