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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

天窓のあるガレージ

2012-11-03 17:49:03 | 読んだ本
日野啓三 1987年 福武文庫版
むかし読んだ文庫本をあさったりしてるうちに出てきたんで、ひさしぶりに読んでみたら、けっこう良かった。
初めて読んだ当時は、そんなにおもしろいと思わなかったと思う。
ってのは、私が好きな、日野啓三らしいと私が思う、無機物的なものへ焦点をあてることの多い幻想的な感じってのは、この後の時代になって出てくるらしいから。
そのへんのとこ、今回あらためて、文庫版あとがきと解説を読んだら、そう書いてあった。
著者本人のあとがきでは、「私小説的傾向の濃い家庭小説を書いていた時期と、(略)都市的、虚構的な作品が書かれた時期との、ちょうど転換点に立つ作品群である」とされている。
菊田均氏の解説では、「同じ題材と同じ作中人物から成る一篇の長編小説ではないが、ある一つのものが(さまざまの形をとりながら)持続し展開し変化しつつ流れている」と、その一貫性がありつつも書き手の視点が転換していくさまが説明されている。
そういう意味で、これって連作小説?と思ったりしたんで、きのうからの続きという意味で採りあげたんだが、まあ連作うんぬんからは、もう離れようか。

「地下都市」
かつて写真の風景だけを頼りに小説を書いたことのある「私」が、トルコのカッパドキアを実際に訪れる。
「昼と夜の境に立つ樹」
小説家の「私」は、原住狩猟民エベンキ族出身のガイドと二人きりで、北シベリアの大針葉樹林を車で走っていたが、道に迷い、夜になる。
「ワルキューレの光」
四月半ばに北欧を旅していた「私」は、オスロからさらに北の町へ、オーロラを見に行ったところ、「生命の水を恵んでくれ」という老人に出会う。
「渦巻」
新聞社の企画に応じて、カメラマンとあちこちを取材の旅で訪れる「私」は、スリランカのコロンボで仏教遺跡を見たりしているうちに、よその国の土地を歩きまわるばかりではなく、自分の土地を知らなければと思う。
「29歳のよろい戸」
由緒ある家柄に生まれた主人公の女性は、部屋によろい戸のある屋敷で、厳格な父親に育てられる。
「天窓のあるガレージ」
主人公の少年は、自宅のからっぽのガレージに入りびたり、スチール製の机や本棚に囲まれ、そこを自分の宇宙船とイメージしている。
「夕焼けの黒い鳥」
節子は、夫の信三に誘われて初めてグアムへのゴルフ旅行に一緒に行き、泳げないけれど海のなかへ入っていく体験をする。

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