臨機応答・変問自在

森博嗣　2001年　集英社新書
「２」のほうは、2002年。
森博嗣氏の、小説ぢゃない、新書がけっこう面白いので、最近ぽつぽつ読み始めている。
この本には、「森助教授VS理系大学生」というサブタイトルがついている。
国立大学の工学部で建築に関すること（なのかな？私には分からない）を教えている教室で、毎回の授業で学生たちに質問をさせているが、そのなかからピックアップして集めたものだからだ。
ちなみに、森先生の授業で学生の成績は、試験などしないで、その質問の内容でつけるという。
しかし、この本は建築の専門書として作ってるわけぢゃないので、当然のことながら載せられているのは、授業の内容に関するものは少ない。
で、大勢からの質問のすべてに答えをつけて、次回の授業でプリントを配ることもあってか、答えは簡潔で、ときにブッキラボウな感じなんだが、それが面白い。
質問が曖昧だったりすると、必要以上に意を酌みとってあげようなんてことはしないで、定義がなってないとか、それは主観だとか、ピシャンと叩いちゃうとこがいい。
Ｑ　名古屋の夏は何故こんなに暑いんですか？
答　君が暑いと思うからでしょうね。
なんて答えがいい。
Ｑ　世の中で最も大切なものは何ですか？
答　時と場合による。また、大切の定義による。
なんてのもいい。
こういうのだけ読むと、なんか面倒なことをかわしてるだけのように見えないこともないけど、まじめにハッとさせられる答えもある。
それらは、基本的に、「自分で考えろ、自分で解決しろ」とか、「どうすべきか分かってるくせに、それを回避しようとするな」とかって考えにもとづいていて、とてもいい。
いくつか、例をあげてみる。
Ｑ　新しい考えを思いつくにはどうしたらいいですか？
答　真剣になってひたすら考えること。必ず何か思いつくでしょう。思いつかないのは考えていないから。これは、どうやったら五十ｍ先へ行けますか？という質問と同じです。
Ｑ　想像力を豊かにするにはどうしたら良いと思いますか？
答　想像する時間を増やす。
Ｑ　最近やる気が出ないのですが、どうしたらやる気が出るようになりますか？
答　嫌々でもやること。やる気がなくてもやっていれば、そのうち何とかなるでしょう。
Ｑ　小説家になるためにはどうしたら良いのでしょうか？
答　小説を書くと良いと思います。
Ｑ　小説の書き方について教えてください。
答　まず、ワープロの使い方を覚える。あとは、ひたすら書く。書くまえに悩まない。以後の相談は、何かを書いてから受けつけましょう。

続編として出た「臨機応答・変問自在２」のほうは、学生ぢゃなくて、ネット上でジャンルを問わず受け付けたもの。
当然、質問者は、作家・森氏のファンが多いと想像されるんだけど、いろんな質問があって、なかには森氏の答えの傾向と対策を考えて、「定義による」でかわされないように注意してるものもある。
で、やっぱり人生相談系の質問には、ビシッと答えてくれるときがあって、そういうのがいい。
答えてる著者は、当たり前のことを言ってるだけと思ってるのかもしれないけど。
Ｑ　自分をコントロールするには、どうすればできるようになるのでしょう？
答　コントロールしようと強く思うことです。
Ｑ　賢くなるにはどうしたら良いでしょうか。
答　賢くなりたい、と思う。そのために何をしたら良いかをずっと考える。答を外に求めず、自分で考えましょう。
Ｑ　仕事や遊びで混乱し始めたとき、どのように考えるとよろしいでしょうか？
答　小さな問題を片づけて、大きな問題を見えやすくする。