言わずと知れた横浜の経済、文化の立役者、などという言い方をしては、あまりにも軽くて失礼か。
生糸業で財を成し、近代日本美術を支え、自らも書画をたくさん残し「三渓園」を造った.
その原三渓の膨大なコレクション「原三渓の美術」展を横浜美術館に見に行く。
会期は9月1日までだが、国宝<孔雀明王像>の展示が今日までだった。
横山大観、下村観山、小林古径らの、初めて目にする作品を前にボルテージが上がる。
そんな大作の中で、三渓の筆による穏やかで、慈愛に満ちた蓮の花や燕子花も印象に残った。
圧巻は国宝<孔雀明王像>だ。平安時代の宗教画の傑作と言われている。
井上馨、元大蔵大臣からけた外れの高額で購入し、コレクター三渓の名を知らしめたと言われている。
色彩、構図の美しさや華やかさを、私の稚拙な言葉で表すことは到底できない。
気が付いたら私は手を合わせ目を閉じていた。(隣にいた画学生と思われる女の子はガラスに
貼りついてルーペで必死に見ているというのに)
私は祈らずにはいられなかった。
美術館を出て、夕暮れのカフェで、一人コーヒーを飲んだ。
道行く人を眺めながら、ほんの少し海風を感じながら、久しく味わっていなかった心安らぐ時間を
過ごした。