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☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『収容病棟』(2013)

2014年07月23日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『収容病棟』(2013)

【作品概要】
監督=王兵(ワン・ビン) 撮影=ワン・ビン/リュウ・シャンフイ 編集=アダム・カービー/ワン・ビン
製作=Y.プロダクション/ムヴィオラ 原題=瘋愛 配給=ムヴィオラ
2013年|香港・フランス・日本|237分(前編122分/後編115分)|中国語(雲南語)

中国南西部・雲南省の隔離された精神病院に収容されている患者たちの生活を捉えたドキュメンタリー。殺人、政治的陳情や一人っ子政策違反など、異常なふるまいを理由に収容されている患者たちの知られざる日常を映し出していく。鉄柵に覆われた閉鎖的な空間の中で、自分たちなりの世界と自由を作り出している患者たちの姿が、人間にとって正常と狂気の境は何かと問い掛けてくる。(Yahoo!映画より)

【感想レビュー】@theater
あぁ、また凄い1本を観てしまった

観た後に、あれこれ纏まったことは言えない、言いたくないドキュメンタリー映画…と形容したいけど、観た直後メモという事で書くけども…

実質4時間(!!!)も観たのに、不思議と長沢を感じさせなかった。それは、スクリーンに映っている事は真実だろうという前提があって、そこから目が離せなかったからでもある。

ドキュメンタリー映画の強さ…だとも思う。

どうしてあんな自然な彼らの姿をカメラは捉える事が出来たのだろう。
編集で切ってるのかもしれないけど、監督が彼らに話しかけているようには思えない…。
撮影隊に話しかけるともなく、ごくごくたまに、患者達の中には想いを吐露する者もいる。

ここに居ると、何でもない者だって精神を病む…みたいな事や、政府に対してだったり。

およそ300時間に及ぶ撮影テープを、4時間に編集し作品にしたのだから、当然どこを使ってどこを使わないのか、取捨選択が行われたはずだけど、しかし作り手である監督の主観性は伝わってこない。

中国の現状。
生活苦。
患者達のそれぞれが、生きにくい何かを抱えていそうだ。
それでも、お腹は空くし、眠たくなるし、用は足したくなるし(…トイレでとは限らないけど…!!)、笑うし、泣くし、真顔になるし、でも冗談も言うし、歌うし、恋愛はするし、我家に帰りたいし…。

あれ、一緒ですね、当たり前だけど、柵の中も外も一緒ですね…的な
この空間を撮ることが、中国の今を撮ることなのかも。

ひたっすら前編を観て、後編になった時、今さらながら、撮影隊も彼らと同じ柵の中に自然に居る事にハッとする瞬間がありました。
それほど、本当に自然に柵の中に居て彼らを捉えていたのですね


また一方で、仮退院で我家に帰れたある男性患者は、柵のない世界の行き止まりのない道を歩いていく。
どこまでも、歩いていく。
それは、収容病棟の堂々巡りの回廊と実に対象的だった…。

彼らの生活音が耳に残る。

終映後、トイレの洗面台の蛇口から流れる水の音を普段より大きく感じてギョッとした…。

あの場所のあの空間は、確実に今も存在しているのだろう。
主観性を一見排除したかのようなタッチで描くドキュメンタリー映画に度肝を抜かれました。






『アシク・ケリブ』(1988)

2014年07月23日 | 西洋/中東/アジア/他(クラシック)
『アシク・ケリブ』(1988)

監督:セルゲイ・パラジャーノフ

【作品概要】
1988年/ 74分 デジタル・リマスター版
原作は世界的に知られるロシアの詩人レールモントフによる恋物語。主人公のアシク・ケリブは貧しいながらも心優しい吟遊詩人。大切な娘マグリとの結婚を、その父に認められるために修行の旅に出る。マグリには1 0 0 0 の昼と夜の後に戻ると約束して… 。
(ユーロスペースHPより)

【感想レビュー】@theater
昨年観た『火の馬』も、衝撃的でしたけど、今回もまた怒濤の世界観に打ち震えております

豊かな大地、鮮やかな民族衣裳、踊り、儀式、活劇風な動き。物語は段落ごとに見所をともなって進んでいきます。民族音楽がとにかく素敵です。かと思うと、ギターのトレモロの途中からサンサーンスのロンドカプリチォーソへなっていく編曲が数箇所あって、意表を突かれました

喜びも哀しみも怒りも、力強いのです。理不尽な境遇に遭った自己も投影されているのでしょうかね…。

差し込まれる画や装飾品の数々
劇中の赤と白の色の対比
とにかく鮮烈な印象を受けます。

パラジャーノフの力強いエネルギーが、そのイメージ世界が、怒濤のように流れ込んでくるといった印象でした

生涯で5作品という事で、今回の映画祭で他の作品も観たかったなぁ…