☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『鉄拳』(1990) Tekken @東京フィルメックス2019

2019年11月29日 | 邦画(1990年以降)
『鉄拳』Tekken

【作品概要】
日本 / 1990 / 128分
監督:阪本順治(SAKAMOTO Junji)

© 1990/写真提供:リトルモア
高知県を舞台に、事故で右腕を負傷したボクサーを再起させようとするジムのオーナーを描いた監督第2作。菅原文太と大和武士が共演。超現実的とも言うべきラストの壮絶なアクションは必見。
(フィルメックス公式ホームページより)

【感想レビュー】
フィルメックスの“特集上映 阪本順治”で観ました。
菅原文太さん、格好良いし楽しみ〜、というミーハーな気持ちでしたが、冒頭からもう面白くて面白くて、ヒィヒィ笑いながら観ました

このぶっ飛んだ感じ、これは、なんだ、これは、えーと、、、
あ!少年漫画の世界観っと思ったとたん、さらに楽しめました

ボクサーとしての成功のシーンは、エコーがかかったように朧げな感じであっさりとしたものでした。
怪我をしてからの再生が物語のメインだからでしょうか。
焦点が、成功よりも、再生に当てられていることに感激して、エネルギーや勇気をたくさん頂きました
ラストのラストまで素敵でした
死闘の後の、まさかの爽やかな蕎麦…
そんなことって…!

コミカルやユーモアがふんだんに織り込まれていて、もう観ていて忙しいです

菅原文太さんは、格好良いし、なんかキュートですし、
原田芳雄さんも格好良いし、なんだか可愛らしいし、

そういえばお二人とも亡くなられたなぁとしみじみしつつ、でもこうやってスクリーンいっぱいに永遠に残っていくことに、改めて映画の尊さを感じました。

周りの方たちも笑っていらして、良い雰囲気の上映でした。

謎の集団が出てくるのですが、上映後のQ &Aで阪本監督がその集団のことを、“今でいうヘイト”と仰っていて、とても腑に落ちました。

本格的なアクションも迫力満点でした
靴に鉄板入れてたとか、撮影では、本当に身体に当てていたとか、恐ろしいお話しもたくさん聞けました

終始、阪本監督のテンションが低めだったのは気になりましたが

『鉄拳』観れて、本当に良かったです



『気球』 (2019)Balloon @東京フィルメックス2019

2019年11月28日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『気球』Balloon
【作品概要】
中国 / 2019 / 102分
監督:ペマツェテン(Pema Tseden)

大草原に暮らす家族を主人公に、一人っ子政策が人々に与える影響をチベット文化の視点から描いた作品。ペマツェテンの前作「轢き殺された羊」の主人公を演じたジンパが父親役を演じる。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映された。
(フィルメックス公式ホームページより)

【感想レビュー】
『タルロ』を観て以来、もう、とっても楽しみに楽しみしていたペマツェテン監督作品です
観ることが出来てとても幸せです

冒頭、放牧中の羊達やおじいさんという牧歌的な風景🐏🐏🐏✨
チベットっぽい〜となりつつも、なんだか見にくい、なんだか違和感、と怪訝に思っていると、あっと驚く仕掛けが…‼︎
もう、もう、開始早々に掴まれました

荒い傷がたくさん付いたフィルターのようなもの越しに展開されていくそのシーン。
その傷だらけのフィルターのようなものにあちこちと屈折し反射する柔らかな太陽光線の美しいこと!!


家族三世代が、チベットの過去現在未来を描き出します。
馬がバイクに取って代わり、とおじいさんの台詞にもありましたが、でも、どの世代も信心深いのが印象的でした。

子どもたちの就学率が上がって、識字率も上がって、科学が一般に広まったら、チベットの人たちの信仰心は変化していくのでしょうか。

弛まぬ生死の営みが、家族三世代を通し、また羊さんを通し、交錯しながら物語は進みます。

風のそよぐ高原、土埃、羊達の猛々しさ、厳しい土地で生きる人間の逞しさ、力強い肉体、子ども達の無邪気さ、すべてが豊かで、『タルロ』に引き続き、観たそばから愛着を持ってすっかり虜になってしまいました

主役の俳優・ジンパさんがスリムクラブの真栄田さんに似ているなぁと思ったが最後、もう真栄田さんにしか見えなくなってしまった時はどうしようかと思いましたが…

光の多様な映像表現がとてもとても美しい映画でした
あぁ、ずっと観ていたいです

スクリーンで観れて大大大満足でした

『轢き殺された羊』は見逃しているのでいつかいつか上映されますように…!



『春江水暖』(2019) Dwelling in the Fuchun Mountains @東京フィルメックス2019

2019年11月26日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『春江水暖』 Dwelling in the Fuchun Mountains
【作品概要】
中国 / 2019 / 154分
監督:グー・シャオガン(GU Xiaogang)

杭州の富陽の美しい自然を背景に、一つの家族の変遷を悠然と描いたグー・シャオガンの監督デビュー作。絵巻物を鑑賞しているかのような横移動のカメラワークが鮮烈な印象を残す。カンヌ映画祭批評家週間のクロージングを飾った。
(フィルメックス公式ホームページより)

【感想レビュー】
内心、154分…集中力が持つかしら…と半ば心配しながら観始めました

年老いた母を、家族・親戚一同で祝う、中国の古き良きスタイル。
うんうん、なんか中国っぽい〜とのんびり観ていたのも束の間、あれよあれよと事態は動き出します

山と河。

いわゆる、中国のイメージそのままな画を背景に物語は進みます。

家族三世代の価値観の違いは興味深く、小津安二郎監督の『東京物語』を想起しながら、あぁ、どこも同じなんだなぁと思いつつ観ました
(上映後のQ&Aで、影響を受けた監督は、ホウ・シャオシェンやエドワード・ヤンとのことでした。)

登場人物達のリアルな空気感も圧巻でした。
そこに、その人物達がまるで生活しているかのような実在感…
これは、Q&Aで分かったのですが、やはり役者ではなく、監督の実際の親戚を起用したとのことでした。
予算の削減にもなるし、リアルさが出るから、とのことでした。
納得…。
やはり、歯とか肌とか髪の質感にリアルさは宿りますね…

でも、それがとってもとっても素晴らしくて、興醒めせずに入り込める何かがそこにあるような気がいたしました。

そして、この映画の凄さは、なんといっても!
作品概要にもあるように、“絵巻物のような”映像なのでした

画面の手前で泳ぐ人物、奥で歩く人物、それぞれの速度の違いを、絵巻物をめくるように映し出す長尺の映像は、初めての体験でした

ちょっと心配になる位にやり続けるのですね
(これも、Q&Aで感じましたが、監督が、かなりのマイペースなテンポで、さらにとってもソフトなお声でお話しをし続ける…(❗️)…ので、映画に監督の性質って反映されるのだなぁ、とも思いました)

リアルタイムのような生々しさで、杭州の移り変わりが描かれていて、そこもとても興味深いのですが、なんといっても、この絵巻物のような演出こそが斬新なポイントだなと思いました

個々の人々の時間の感じ方が複雑に折り重なって、この世界が在るということが、その長尺の絵巻物のような映像によって見事に描き出されているようでした。
凄い臨場感でした

映画が時間の芸術であることに、改めて思い至りました




『静かな雨』 (2019)Silent Rain @東京フィルメックス2019

2019年11月25日 | 邦画(1990年以降)
【作品概要】@東京フィルメックス2019
日本 / 2019 / 99分
監督:中川龍太郎 (NAKAGAWA Ryutaro)
配給:キグー

宮下奈都のデビュー小説を仲野太賀とこれが映画初出演となる衛藤美彩の主演で映画化した作品。大学の研究助手の行助と鯛焼き屋を経営するこよみ。親密になりかけた二人の関係はこよみが交通事故に会ったことをきっかけに暗転する……。

監督:中川龍太郎
原作:宮下奈都『静かな雨』(文春文庫刊)
脚本:梅原英司 中川龍太郎
チーフプロデューサー:和田丈嗣 
プロデューサー:藤村駿 木ノ内輝
アシスタントプロデューサー:新井悠真 
ラインプロデューサー:保中良介
撮影:塩谷大樹 照明:西尾慶太 
録音:伊豆田廉明 音響効果:柴崎憲治
美術:安藤秀敏 菊地実幸 
ヘアメイク:榎本愛子 スタイリスト:都甲真名美
助監督:近藤有希 監督補佐:佐近圭太郎 
制作担当:久保田辰也 編集:田巻源太
スチール:四方花林
音楽:高木正勝
製作:WIT STUDIO
制作:WIT STUDIO、Tokyo New Cinema
企画協力:文藝春秋
配給:キグー
© 2019「静かな雨」製作委員会 / 宮下奈都・文藝春秋
(フィルメックス公式ホームページ、『静かな雨』公式ホームページより)
【感想レビュー】
あんまりネタバレにならないように書きます。

月とか、雨とか、陰影とか

モチーフが印象派の音楽のような映画だなぁと思いました
ドビュッシーの『月の光』のように、水面に映る月を視ているというような間接的な視点をこの映画にも感じて、詩的な佇まいに開始3、40分も経つと自然と引き込まれていきました

登場人物達の日常のルーティンも、淡々としているようでいて、少しずつトーンに変化があったりして、面白く観ました

繰り返し繰り返し、リアルが迫ってくるからでしょうか…

足を引き摺る音とか、少しずつ違うアングルの画とか、ちょこちょこと時間差で出てくる新しい登場人物達とか…!

とにかく、飽きません!

台詞は少ないように感じましたが、ナレーションでの会話は、けっこう多かったような気も。
流れている映像と会話との時間的、空間的な隔たりに、“世界”(作中に出てくるキーワードのような単語)をより立体的に感じさせられました。

また、映像を彩る劇中音楽が素敵でした
あくまで映像が主役です、というように控えめに微かに流れている時と、少しずつ少しずつ存在感が増して、まるでコンチェルトのトッティのようにオケも鳴らします!みたいな時と

あとは、ベーコンエッグが心に残りました
ふと思い出して作ってみましたとも!
白身が流れなくて素晴らしいですね。
り、理にかなってる

上映後のQ&Aで、中川監督が、画角についての質問に答える中で、枠についてお話しされていたのですが、いざベーコンを並べ終えてハタと気付いたのでした。

ここにも、“枠”が…

2020年2月7日より全国順次ロードショー!
だそうです