☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『勝手にしやがれ』(1959)

2016年12月29日 | 西洋/中東/アジア/他(クラシック)
『勝手にしやがれ』(1959)

監督・脚本: ジャン=リュック・ゴダール 原案: フランソワ・トリュフォー 撮影: ラウル・クタール 出演: ジャン=ポール・ベルモンド/ジーン・セバーグ/ダニエル・ブーランジェ

【作品概要】
ジャン・リュック・ゴダール監督の長編デビュー作にして映画史上に輝く革命的傑作。警官殺しの小悪党(ジャン・ポール・ベルモンド)が、パリにやってきた米国娘(ジーン・セバーグ)に惚れるが裏切られ、路上で警察に射殺される。要約すればこれだけの話を、イタリアン・ネオレアリズモにならって撮影所ではなく、部屋や街路で昼夜かまわずルポルタージュのごとく、手持ちカメラで2人の軌跡を活写。その即興的演出、ジャンプ・カット中心の編集は追随者を次々と生んだ。
実話系週刊紙から原案を提供したのはフランソワ・トリュフォー、監修に名を連ねたのはクロード・シャブロル。批評家仲間で、先に監督進出していた彼らの友情のもと、ゴダールはB級犯罪映画へのオマージュをこめて製作。ヌーヴェルヴァーグの永遠のシンボルといえる1本。(轟夕起夫)

【感想レビュー】
多くの監督や映画に影響を与えたゴダール作品を初観賞

影響を受けたとされる作品ばかりを先に観てきたような…

吉田喜重監督の『ろくでなし』(1960)は、ラストシーンや映画の空気感に、『勝手にしやがれ』へのオマージュを濃厚に感じますし。でも、製作年がそう変わらないことを考えると、凄く早い反応だったのだなぁと思いました。

さてさて、『勝手にしやがれ』ですが。

軽めのBGMがポップな気分にさせてくれるし、劇中でかけるレコードからは、ショパンやモーツァルトのクラシックが流れる。

それが、軽口を叩くような台詞から思慮深く哲学的な台詞まで、テンポ良くポンポン展開されていく映画のテンションと素晴らしくマッチしていて心地良く観ました

臨場感のあるカットの連続は、カメラワークによるものらしい。

透明人間になって、すぐそばにいる被写体を追っていくような自然な流れで、1959年のパリの空気がイキイキと呼吸し始めるようでした

メインの2人の存在感
男女とも観ているだけでウキウキしてくるファッションでした

ゴダールの旅も始まってしまった

色んな旅を進行中ですが、マイペースにいきたいと思います



『冬の光』(1962)

2016年12月23日 | 西洋/中東/アジア/他(クラシック)
『冬の光』(1962)

監督/脚本:イングマール・ベルイマン
音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ
出演:グンナール・ビョルンストランド、マックス・フォン・シドー、イングリッド・チューリン

【作品概要】
スウェーデンの漁村で牧師をしているトマスは、自分の信仰に自信が持てなくなっていた。そんなある日、彼のもとに神経衰弱の夫を持つ婦人が現われる。彼女は夫の悩みを取り去ってくれと訴える。だが、己の愛人との関係に疲れたトマスは、ありきたりの言葉でしか答えられない。やがて、その夫が自殺したという知らせが届く……。“神の存在”をテーマに描いた「神の沈黙」3部作の第2弾。

【感想レビュー】@theater
記事をアップするのがずいぶん遅くなってしまいましたが…。

楽しみにしていた『信じる人をみる宗教映画祭』、一日しか行けなかったのは残念ですが、見逃していたベルイマンの『冬の光』、ようやく観ることができました

また、今回は『カナリア』も初スクリーンで観ることができましたし、大満足でした
『カナリア』は、DVD を持っていますが、スクリーンで観た時のスケールの違いに圧倒されました!その記事はおいおいに…。

この特集は、日本大学芸術学部映画学科映像表現・理論コース3年映画ビジネスゼミの学生達によるもので、今年で6回目だそう。

『信じる人“を”みる宗教映画祭』

この、“を”が、あぁそうなんだよなぁ…!と腑に落ちます。しっくりきます。的を射ていて素晴らしいネーミング

企画立案者の学生の方々、ありがとうございまました!!


『冬の光』
まずは、まずは…、瑞々しいモノクロの映像美が胸に沁み入りました。

プロテスタントの神父の信仰の葛藤が描かれているわけですが、その人間的な心模様にとっても親近感です。

一見、神と真摯に向き合っているはずの神父が、神の存在に葛藤しているのに対し、漠然と信じている者の方が、神の存在を広い意味で信じている様は、なんというか、とてもリアルに感じる描写でした。

教会の礼拝では、パイプオルガンの生演奏があるわけですが、バッハを勉強する私にとっては、ちょっと不真面目な演奏者の彼にシンパシーでした

あくびをしながら出番を待ち、演奏する時は、演奏そのものに集中する感じ


また、愛人の女性教師とのシーンでは、二人の関係の終焉が醜い言葉のやり取りで交わされ…、そのドツボにハマってどうしよもうない雰囲気が、ドアを出る直前に発した言葉で一変し持ち直す…そんな男女の描写も、非常にリアルに感じました。
神父といえど、一人の人間であり、一人の男性なのですね。

人生って、日々の生活の積み重ねなのだなぁ…と改めてしみじみするというか…。

思わず我が身を振り返ってしまいます

10代、20代が過ぎ、30代の始めに若い頃の悩み、課題、葛藤が一つの形を結び、解決したものもあれば、自然受け入れることができるようになったものもある。さぁ、心が軽くなったー!!…と思っていたのも束の間、…今はまた、これまでに感じたことのない漠然とした不安を感じたりして…。

…な、タイミングだったので、ズシン!ときました


それにしても。

ここ数年、本業の為もあり、歴史や宗教の文献にあたっていることが、浅はかな知識といえども映画を観る時にも役に立って嬉しいです


来年も是非行きたい特集です♪



『コンチネンタル The Gay Divorcee(HDデジタル)』 (1934)

2016年03月26日 | 西洋/中東/アジア/他(クラシック)
『コンチネンタル The Gay Divorcee(HDデジタル)』 (1934)

監督:マーク・サンドリッチ
主演:フレッド・アステア、ジンジャー・ロジャース、アリス・ブラディ、エリック・ブロア、ベティ・グレイブル
【作品概要】
フレッド・アステアとジンジャー・ロジャース主演作の第1号で大ヒットし、以降同じコンビで10作品製作された。コール・ポーターの名曲「ナイト&デイ」で正装した2人が優雅でムーディーなダンスを踊る。コン・コンラッド作曲の「コンチネンタル」は第一回アカデミー主題歌賞を得た。


【感想レビュー】@theater
『教授と美女』と同日の二本立てで観ました

恥ずかしながら、フレッド・アステアを観るのは初めてです。

お顔も身体も小柄で華奢なのだなぁ…、という第一印象から一転…‼タップで刻むその細かいリズムと、円を描きながら、時に華麗に、時に優雅に、時に力強く舞うそのお姿に、もう一瞬にして心を奪われました


シンプルなストーリーながらドタバタがもう本当に面白くて、俳優陣の表情の豊かさや動きのユーモラスさで、笑いがこみ上げてきます

踊りのシーンが多く、素晴らしくて堪能しました

レコードに紙人形を立てて踊らせるシーンなんか、もう…、もう…、悶絶ものでした

終映後、隣のマダムのひとり言、『アステア、サイコー‼』が耳から離れません

二本立てともに、多幸感溢れる作品で、心がとっても充実しました





『教授と美女 Ball of Fire(デジタル)』 (1941)

2016年03月23日 | 西洋/中東/アジア/他(クラシック)
『教授と美女 Ball of Fire(デジタル)』 (1941)

監督:ハワード・ホークス
主演:ゲイリー・クーパー、バーバラ・スタインウィック、ダナ・アンドリュース、ジーン・クルーパ

【作品概要】
ゲイリー・クーパーを長とする38人のうるさがたの教授たちが、新しい辞典を作る作業で、スラングの数々を理解し解説を加えるために、バーレスクのダンサーたちの知恵を借りようとするコメディ。(シネマヴェーラHPより)

【感想レビュー】@theater
シネマヴェーラの特集、“ミュージカル映画特集 - ジャズで踊って”へ先日行ってきました

ガーシュインの曲を次の演奏会のプログラムにいれようと思っているので、『踊らん哉 』を観たかったのですが予定が合わずに見逃し…、でもジャズを映画で体感しようと勉強してきました

もう、抱腹絶倒でした…‼自分でもビックリ…。ミュージカルは…実は苦手なのですが、この映画では、ダンサー達のパフォーマンスシーンでの歌や踊りという設定だったので、とても自然な流れでした。
そして、ストーリーもだいたい予想はつくけども、ポンポンと進むテンポの良さと、少しずつ…でも心地良く裏切られる展開なところもツボでした

“教授”陣のインテリ過ぎる台詞回しが愛おしく、“美女”の美女たる所以に惚れ惚れとし、ゲイリー・クーパー氏のあまりの美男子ぶりに目がハートに…
スクリーンに吸い込まれるように魅せられました

こんなに多幸感に溢れる作品に出逢えるとは…、なんたる幸せなのだろうとつくづく思いました

笑いに包まれる劇場の一体感にグッときました


『愛と哀しみのボレロ』(1981)

2016年03月02日 | 西洋/中東/アジア/他(クラシック)
『愛と哀しみのボレロ』(1981)

フランス/カラー/シネスコ/3h05/DCP
監督・脚本:クロード・ルルーシュ
音楽:ミシェル・ルグラン、フランシス・レイ
出演:ロベール・オッセン、ジェラルディン・チャップリン、ジェームズ・カーン

●81年カンヌ国際映画祭 高等技術委員会グランプリ

【作品概要】
モーリス・ベジャール振付のボレロが スクリーンに甦る
1936年から、半世紀にわたる音楽家4家族の大河ドラマ。フランス、ドイツ、ソ連、アメリカに生まれた音楽家たちが運命に翻弄され、やがてパリのトロカデロ広場に邂逅する。ラヴェルの「ボレロ」を、ベジャールの振付でジョルジュ・ドンが踊るラスト15分が圧巻。(アルテリオHPより)

【感想レビュー】@theater
もう凄かったです…!!!!
何が凄かったって、圧倒的なエネルギー!!‼

この、モーリス・ベジャール振付のボレロというのを、講義の資料映像か何かで観た記憶がうっすらあるのですが…。これは是非ともしっかり観たいと思って行きました

第二次世界大戦からアルジェリア戦争、そしてその後の十数年を3時間で駆け抜けるので、もうもう怒涛の勢いです

さすがにアルジェリア戦争以降は端折った感もあったけど、どうやらオリジナル版は4時間もあるらしいので、その辺りをカットしたのかなぁ…

フランス、ドイツ、ソ連、アメリカの4ヶ国を舞台に、同じ戦争に直面しているそれぞれの家族や仲間達の物語が、音楽を通して、そして世代を交代して、紡がれていきます。
とにかく登場人物の多い群像劇で、一人二役で親子を演じていることも多く、混乱してしまうこともあるのですが、そんな事は、もはや些細なポイントに過ぎません。

冒頭とラストのボレロのシーンはもちろんのこと、他にも印象的な数々のシーンがあります。

パリのキャバレーのキラキラしたシーン。お洒落で粋な大人達。音楽は溢れ、躍動感あるダンスからは生命感が満ち溢れています。スクリーンが弾けるほどのエネルギーでした

戦争のシーンは一転、溢れていた音楽が影を潜め、暗く、重苦しい空気が辺りを包みます。その対比は胸に迫るものがあります。

戦後のパリ東駅。収容所から引き揚げてくる人達の列車と、ドイツ兵の捕虜がこれから乗っていく列車が並んで停車しているシーンの臨場感。。

戦後のアメリカ。仲の良いご近所さんが集う一角。兵隊に行った息子達の戦死の知らせを郵便配達人から受け取る家族がいる一方で、任務から帰還する夫をサプライズパーティーで迎える隣人のシーンなど。。

時を同じくして、それぞれの物語が展開されていく描写がとっても素晴らしくて引き込まれていきます。


そして例のパリのボレロのシーンへと繋がっていき、空間や時間をゆうに越えていく芸術の圧倒的な存在感に、改めて畏怖の念を抱きました。
凄い映画を観た‼という充実感でいっぱいです