☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『SELF AND OTHERS』(2001)

2013年06月30日 | 西島秀俊さん☆映画
『SELF AND OTHERS』(2001)

佐藤真監督、西島秀俊さん(声)出演。



【STORY】
牛腸茂雄(ごちょう しげお)という写真家がいた。

1946年11月2日、新潟県加茂市穀町に生まれた彼は、3歳で胸椎カリエスを患い、36歳でこの世を去るまでの間に、『SELF AND OTHERS』を初めとする3冊の写真集を自費出版している。

映画は、人間を撮ることに想いをかけた彼の表現世界を、撮影地や彼が残した写真や手記、手紙、草稿などと照らし合わせながら見つめ直していく。
(Movie Walkerより引用)

【感想レビュー】
凄い映画を観てしまいました。

観終えた後に、しばらく心臓が震えるほどに。

不謹慎かもしれませんが、“恐ろしい”のです。
視られているような気さえしてしまうのです。

背筋がゾクッとする、そんな言葉では足りなくて、もう、胃の底がヒンヤリするような…感じなのです。


作品は、ドキュメンタリーなのにも関わらず、牛腸茂雄さんの家族のインタビューなどは、一切ありません。

ただ、ただ、彼の作品を映し続けたり、彼の写真のゆかりの地を映したり。

彼の姉に宛てた手紙や手記を読み上げたり…。

この手記がまた、非常に哲学書のような時もあり…。
この感じ…学生の時に読んだ(読まされた)モーリス・メルロー=ポンティのような感じなのです。


けれども、彼の写真は、とっても温かく、シンプルで力強いのです。
被写体の人物達はこちらを見つめているのですが、ファインダー越しでない感覚にさせられます。
それぞれの眼差しは、牛腸茂雄さんに向けられたものなのでしょうが…。

モノクロのその写真に写っている人物達は、シャッターを切った次の瞬間、もう動き出して、それぞれの生活に戻っていく様が目に浮かぶのです。

そうすると、モノクロなのに、とっても色鮮やかに感じるのです。


そして、西島さんの声。

ナレーションの為の、“声”。

姉に宛てたいくつかの手紙を読む、“声”。

手記を、牛腸茂雄さんの心を代弁するかのように読む、“声”。

牛腸茂雄さんの心の状態の変遷を浮かび上がらせる、トーンや調子で、実に見事に作品に溶け込んでいます。


さらに、牛腸茂雄さんご自身がカセットテープに録音した“声”。
その内容。

誰に聞かせるとも、聞かれるとも、分からない段階でのその録音…。

生々しく、耳に残ります。
あたかも、そばで呼び掛けられているようにさえ感じます。


こうして、牛腸茂雄さんを直接知らなくても、彼の作品を観て、彼に思いを馳せる事が出来るのです。

映画は、1本の木の長映しに始まり、1本の木の長映しに終わります。

ただ、そこに在る、と言わんばかりに。


【追記】
観てから数日経っても、毎日この映画の事をふと思い出しては考えてしまいます。

『SELF AND OTHERS』には、夭折の写真家を追憶する、懐かしむ…あるいは感傷に浸るような類では無い何か…。

牛腸さんの本質に挑む気概のようなものを感じるのです。

彼の本質を垣間見て、とても恐ろしかったのです。

畏怖のようなものを抱きました。

彼の作品はとてもさり気ないけれど、時が経った今でも尚、そこから新鮮な温度を感じましたし、今は亡き彼に会ったような気さえしました。


もしかすると、牛腸さんが撮った方々の写真を見ているうちに、その方々の眼差しを通して、私も牛腸さんに会ったような感覚になったのかもしれません。


こういうドキュメンタリー映画があるんだな!!! …と驚愕した作品になりました。

西島さんの映画を鑑賞する旅の、記念すべき52本目(あと1本…‼)に観たのがこの作品で、とっても嬉しいです




『ホーリー・モーターズ』(2012)

2013年06月30日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『ホーリー・モーターズ』(2012)

レオス・カラックス監督、ドニ・ラヴァンさん、エディット・スコブさん、エヴァ・メンデスさん出演。

レオス・カラックス監督が「ポーラX」から13年ぶりに発表した長編新作。



【STORY】
朝から深夜まで、白いリムジンでパリ中を巡り、年齢も立場も異なる11の人格を演じるオスカーの1日の旅を描く。
(Movie Walkerより抜粋)

【感想レビュー】@theater
不思議な感覚にさせられる映画でした!

幾層にも積み重ねられた、非常に観念的な作品です。

エキセントリックなシーンが沢山あるのですが、どれも細部に至るまで意味があって、造り込まれている感じです。


でも、決して押し付けがましくないのです。

後から後から「あのシーンはこういう意味だったのかな?」と何度でも噛み締めたくなりました。


登場人物達の台詞も行動も。

映像美も音楽も。

凄くワクワクしながら待ってしまうのです。

次に起こる事を!!

なかなか出来ない映画体験をしました

『2/デュオ』(1998)

2013年06月29日 | 西島秀俊さん☆映画
『2/デュオ』(1998)

諏訪敦彦監督、柳愛里さん、西島秀俊さん出演。

本作品は、脚本というものを破棄し、10ページ程度の簡単なストーリーだけを用意して撮影。
その結果、俳優の即興ゆえの緊張感やリアリティ、繊細さが映像の中に刻み込まれている。
(TSUTAYA onlineより抜粋)

【STORY】
俳優を職業とすることへの挫折感から「結婚」を口にし、意味のない失踪を繰り返したり、自分への苛立ちを恋人の優にぶつける圭。

これまで彼を支え続けてきた優は、そんな圭の焦燥と向い合ううちに、自らの姿さえも見失いかけていた…。
(TSUTAYA onlineより抜粋)

【感想レビュー】
凄い映画です。

俳優の即興演技という、実験的な映画という事は知っていたので、余計に混乱しました。

淡々とした日常が過ぎていくようで、不穏や狂気の種は、いつでも、どこにでも、誰にでも潜んでいる…という事を、まざまざと思い知らされる映画でした。

日常に潜む狂気は、あまりにも痛くて、そして本当に恐ろしいです。

観ながら、胃がキリキリと痛むほどに…。

これがきっと、予定調和のお芝居であるなら、ここまでの緊張は強いられないと思うので、これはもう、半分ドキュメンタリーのような域に達しているという事なのでしょうか…。

設定はあるけれど、台詞がない。
撮影の現場で起きている事は、もう限りなく真実…という、なんだか難しいシチュエーションなのです。

その緊張感から生まれた空気は、画面を通してさえ体感できました。

西島さんも柳さんも、素晴らしかったです。









『カルテット!人生のオペラハウス』(2012)

2013年06月29日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『カルテット!人生のオペラハウス』(2012)

ダスティン・ホフマン監督、マギー・スミスさん、トム・コートネイさん出演。

【STORY】
イギリスの田園風景が広がる中にあるビーチャム・ハウス。
そこは引退した音楽家たちが身を寄せるホームだった。

資金難のため存続の危機にあるビーチャム・ハウスのためにコンサートを開催しようと準備が進められていた…。

【感想レビュー】@theater
劇場で観ている間、

クスクスしたり、
(1人で観ていたのでヒッソリ…)

思わず声を立てて笑ってしまったり、

気付くと泣いていたり…。

最後は、

思わず拍手までしそうになりました!!
(してたかも…)

ユーモアに富んでいて、おしゃれで、ジーンときて、観た後にエネルギーが湧いてくる映画でした

ずっと、ピアノを弾き続けようと改めて思う作品でした


70歳を過ぎたホフマンの初監督作品。

ホフマンのメッセージ
↓↓↓↓
「人生を強く生きるということ、それだけだ。与えられた人生はわずかな時間しかない。グズグズしないで 今すぐ動こうということだよ」

“ビーチャム・ハウス”は、オペラ「椿姫」で有名な音楽家ヴェルディが創設した、イタリアのミラノに実在するホームです。
この映画は、「ヴェルディの憩いの家」をモデルにしているそうです。





『愛、アムール』(2012)

2013年06月29日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『愛、アムール』(2012)

ミヒャエル・ハネケ監督、ジャン=ルイ・トランティニャンさん、エマニュエル・リバさん、イザベル・ユペールさん出演。

【STORY】
パリ都心部の高級アパルトマンで穏やかに暮らす、ともに80歳代の元ピアノ教師の老夫婦の物語。

【感想レビュー】@theater
物語は、夫婦で妻の愛弟子のピアニストの演奏会へ赴き、興奮と愛弟子の成功とで、満ちたりた一夜を過ごすところから始まる。

でもそれは、一時のこと。

かつて、音楽が溢れていたであろう2人のアパルトマンは、今は静けさに包まれています。

弟子のピアノの音。
自分達の練習する音。
アンサンブルの音。
歌。

かつては、生きた音楽が家の隅々までを包んでいたはずなのに。

そう思うと、本当に胸が潰されそうになります。。


老々介護を実感を持って考える事は、私にはまだ難しいけれど、

この夫婦の愛の形、選択を否定することなど、誰にも出来ないだろう…と思いました。

劇中に、ほんの少しだけ流れるシューベルトの即興曲:作品90-3の旋律は長調の曲なのに物哀しい。。