☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『さらばラバウル』(1954)

2014年10月30日 | 邦画(クラシック)
『さらばラバウル』(1954)

監督 本多猪四郎(本編)
円谷英二(特撮)
若林大尉:池部良
小松すみ子:岡田茉莉子
片瀬大尉:三國連太郎
野口中尉:平田昭彦


【作品概要】
『さらばラバウル』は、1954年2月10日に公開された日本の戦争映画。製作、配給は東宝。モノクロ、スタンダード。
昭和19年、ラバウルにいる海軍基地航空隊の零戦乗りの若林大尉は撃墜の多さと同時に、部下に厳しいことで鬼隊長の異名をとっていた。出撃のたびに損耗が多く、特に「イエロースネーク」と呼ばれる敵機に、味方機は次々と落とされていった。(Wikipediaより)

【感想レビュー】
零戦の話。やはり、実際に戦争を経験した俳優陣の演技に、演技以上の何かを感じる作品でした。
。池部良さんをWikipediaで調べると、次のような事が書いてありました。
『1944年に南方戦線に移動される。5月12日、輸送船が敵潜水艦に撃沈されセレベス海に投げ出され10時間泳いだ後、日本海軍の艦船に救出されインドネシア北東部のハルマヘラ島へ配属された。 “シネマの天使編(29)”. 産経新聞 (2011年3月21日). 2011年4月17日閲覧』(Wikipediaより)
凄過ぎる…。こんな壮絶な戦争体験をしていて、たとえ演技であったとしても、色んな事がフラッシュバックしなかったのだろうか…。並々ならぬ気概を感じる演技でした。部下を亡くした後の憔悴し切った様子や瞼の細やかな揺らぎに、押し殺している哀しさや怒りが滲んで…。

零戦や特攻隊をモチーフにした映画はあるけれど、どちらかというと分かりやすく感傷に浸るような色合いが濃いものが多い気がします。けれど、『さらばバラウル』は、そういった色が極力抑えられているように感じました。数多くの飛行機乗りの死に、涙も乾いた女性の空虚な様子が、胸に迫ります。
実際の戦闘映像を使用した箇所があって、そこは辛かったです。。

しかしこの作品、特撮が円谷英二さんで、ゴジラやウルトラマンしか知らなかったので、なんだか貴重な作品を観たなぁと思いました!



『恋人』(1951)

2014年10月28日 | 邦画(クラシック)
『恋人』(1951)

監督:市川崑
池部良(遠藤誠一)
久慈あさみ(小田切京子)
千田是也(小田切恵介)
村瀬幸子(小田切節子)
北林谷栄(佐伯さん)
森繁久彌(ダンスホールのマネージャー役、実名で出演。)
【作品概要】
『恋人』(こいびと)は、劇作家梅田晴夫が書いたラジオドラマ『結婚の前夜』を原作として、1951年に新東宝で製作された日本映画である。モノクローム作品で、監督は市川崑。(Wikipediaより)


【感想レビュー】
70分のモノクロ作品。古い映画の魅力が香り立つような作品でした
池部良さん…本当に素敵過ぎる!がっしりした肩幅も端正なお顔立ちも…
そして、久慈あさみさんは、美しいし可愛い過ぎる!ちゃきちゃきしていて、やりたい放題なお嬢さんを演じていますが、肝心な事は言えない女心の切なさを演じていらっしゃいます
表情がくるっくる変わって可愛いです


モノクロなのに、晴れ渡った空や沈んだ空の様子が伝わってくるし、なんだか心の機微を表しているような気がします。

ダンスホールのシーンや、終電を逃した小田急線‼駅構内の様子がとっても素敵でした

池部良さん出演作品をめぐる旅も始まってしまった!

色んな旅の途中ですが...(*_*;。でもまぁマイペースに進むぞ♪

『素敵な歌と舟はゆく』(1999)

2014年10月23日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『素敵な歌と舟はゆく』(1999)
製作: マルティーヌ・マリニャック 監督・脚本・編集・出演: オタール・イオセイアーニ
出演: ニコ・タリエラシュヴィリ/リリー・ラヴィーナ/フィリップ・バス/ステファニー・アンク/ミラベル・カークランド/アミラン・アミラナシュヴィリ/ジョアサン・サランジェ

【作品概要】
オタール・イオセリアーニ監督、脚本、主演で贈る、多彩な登場人物が織りなす恋や冒険を独特のタッチで交錯させた群像コメディ。


【感想レビュー】
オタール監督作品3作目を観賞。
素晴らしく感動しております

この作品でも、社会に対する皮肉がユーモアたっぷりに描かれていました。個性豊かな登場人物が沢山出てくるのに、一人一人が生きて作品に在るという感じ。
すべてが心地よく流れていつの間にかラストを迎えます。

登場人物の立場(社会的地位や世代)はもちろんのこと、性格や思考がちょっとずつ噛み合っていかないところが本当に面白いです!
それは家族であっても。
ちぐはぐな感じが、台詞やしぐさなどの動作や行動に現れていて飽きさせません。
そうそう、人間や人間関係ってこういうものだよなぁ、としっくりきます。実にシュール!

それがまた流れるような劇中音楽に乗って展開されるので、またまた面白いのです。

何気に、人種差別や貧困の問題が、あらゆる社会的地位の登場人物達によってサラリと描かれています。
オタール監督演じる立派な御屋敷の父が、ホームレスのおじさんとワインで分かち合い、歌で会話するシーンはもう…!
人生にお酒と音楽とそれを分かち合える友がいれば!…もうそれだけで幸せなんじゃないか!…みたいな。

ラストの父と息子の選択は、まさに人生の価値観の選択。
どちらの選択を取るかと聞かれたら、もちろん父の方側でありたい。
他者を切り捨てるのではなく、色んな人がいる事を分かった上で、尊重する心を忘れたくない。
主張する事と批判する事は違うことだから。尊重する事と迎合する事も違うことだから。
けれど、人生は思うようにうまくいかないという痛みも肝に命じておきたい…。これは簡単なようで難しいと日々感じている事ですが…。
でも、オタール監督の『月曜日に乾杯』を観ていても思ったけれど、本当に良い人がいない。
それは、一般的に言われる“良い人”とはちょっと違う。他者に対して、愛想が良いとか、思いやりがあるとか、親切だとか、そういうのとは別で、人は、結局は自分の為に生きているということ。それを自覚して生きていれば良いかなぁ…。むむむ、どうでしょう。。
だから、ラストの父の選択も、社会的地位を気にしないとかそういう美徳だけではなくて、ある意味快楽主義的な自分の欲求を満たすためじゃないかなぁ、と。監督自身が演じているから、もしかしたらちょっと自虐的な自戒かもしれない…。両面あるのだよ、みたいな。
登場人物の良い面も悪い面も描かれていて、でもそれこそが人間賛歌だし、オタール監督の温かい眼差しなのだなぁとつくづく感じました。


コウノトリ?ヨーロッパが舞台なのでシュバシコウ?が、なぜかその御屋敷で飼われていて、こんなちぐはぐなのに、それでも、なんだかんだ平和で幸せじゃないか、みたいな感じもあって温かかった。

笑いつつ、癒されつつ、心の深いところにおちていく映画でした!








『乾いた花』(1964)

2014年10月22日 | 邦画(クラシック)


『乾いた花』(1964)

監督 - 篠田正浩
村木 - 池部良
冴子 - 加賀まりこ
葉 - 藤木孝
古田新子 - 原知佐子
玉木 - 中原功二
安岡 - 東野英治郎
礼二 - 三上真一郎
船田 - 宮口精二
次郎 - 佐々木功
相川 - 杉浦直樹
溝口 - 平田未喜三
今井 - 山茶花究

【作品概要】
白黒ワイド、96分。製作は文芸プロダクションにんじんくらぶ、配給は松竹。原作は石原慎太郎の短編小説である。公開前に(配給)会社側から難解という理由で8ヶ月間お蔵入りとなった後、反社会的という理由で成人映画に指定された。(Wikipediaより)

【感想レビュー】
こんなに洒落て粋な作品があるのか!...と驚きつつ、もうただひたっすら魅せられて食い入るように観ました。なんか、専門的な事は分からないけど、編集の仕方が古く感じかなかったというか、現代に通ずるように感じてびっくりしました
池部良さんが格好良すぎる

池部さんの出演作品は『早春』しか観ていないので、是非他の作品をと思い観たのです♪
小津映画でのあの色気は衝撃的で、記憶に残る俳優さんの一人となりました

そして『乾いた花』。何か、時代や社会に対する疎外感と静かな憤りと憂いがあいまって生じるその凄味と男の色気が立ち昇ってくるというか、、、。
とにかく存在感が際立って凄まじかったです!
肉厚な身体しかり、声のトーンやテンポしかり。

冒頭の映像は高度経済成長を感じさせる画だったけど、池部さん演じる村木のモノローグの内容は、妙に納得いくものだった。『三丁目の夕日』シリーズみたいに、貧しくても希望のある明日をみんなが夢見ているわけではない...。
横浜のホテル、横浜商店街、ドヤ街、映画的魅力に溢れる映像でした
路地裏を歩く村木の哀愁たるや!

加賀まりこさんはあんなに華奢で、可愛らしいお人形のような容姿で、一番乾いた人物を演じている。
村木と冴子は似た者同士なわけですね。

最後の台詞、ちょっと聞き取りにくかったけど、『飢える』
でした。ちょっと考えて、それしかないよなぁと思ってネットで引いたら、やっぱり聞き取りくいけど、そうだと仰っている方をお見かけしました!

それにしても、賭場のシーンがたくさん出てくるのだけど、早口言葉みたいな掛け声?面白かったな。
『どちらもどっちもどっちもどっちもどっちもどっちもどっちもどっちも』みたいなの。


うぅ...DVDが欲しくなっている…


『月曜日に乾杯』(2002)

2014年10月15日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『月曜日に乾杯』(2002)

監督、脚本:オタール・イオセリアーニ
ヴァンサン:ジャック・ビドウ
妻:アンヌ・クラヴズ・タルナヴスキ
母:ナルダ・ブランシェ

【作品概要】
退屈な日常にうんざりした中年男の気ままな旅を描くコメディ。

第3回東京フィルメックス・特別招待作品
ベルリン国際映画祭2002銀熊(監督)賞受賞
2002年/フランス・イタリア/カラー

【感想レビュー】
流れるような映画でした
こういうの好きだなぁとしみじみ思いながら観ました
役者の風貌が、老若男女とも綺麗過ぎないのが良かった←失敬!(ん?でも若い男女と少年は綺麗だったか)。でも、主人公を演じるジャック・ビドウのだるだるのお腹やだるだるの頬っぺたが実に中年男のくたびれた感じを醸し出していて、そういうのは、リアルな日常生活の延長に映画を感じる事ができて、こういう人生を教えてくれるような映画には大切な要素だと思うのです!

そしてそして、実父の旧友のイタリアの公爵を監督自身が演じていますが、アカデミックに音楽を学んだ監督ならではだなぁと思ったのが、ショパンのバラード第4番の最後のカデンツを省いてちょっと変えて弾いたところ。
虚栄心からレコードを流して弾いたふりして、停めて(‼)、最後のカデンツだけを弾くのですが(‼‼)、実際の楽譜と変えたのは、真に音楽の神様に対して誠実だからだと思いました

それにしても…ヒーヒー笑いながら観ました

田舎の生活も都会の生活も、老若男女のどの世代をとっても、国を変えても、結局はどこでも同じ。隣の芝生は青いって思うけど、結局はそうじゃないっていうのが、ちょっと皮肉に、でもとっても温かくてとっても深い眼差しで描かれていて、じーんってきます。

ふぅ、癒されました