☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『消えた画 クメール・ルージュの真実』(2013)

2014年07月31日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『消えた画 クメール・ルージュの真実』(2013)
【作品概要】
監督/脚本:リティ・パニュ
2013年/カンボジア・フランス/フランス語/HD/95分
『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』などで知られるリティー・パニュ監督が、自身の体験を基にポル・ポト政権下のカンボジアを描く異色ドキュメンタリー。クメール・ルージュの弾圧により家族や多くの友人を失った同監督が、祖国が体験した恐怖の支配を語り継ぐ。当時の映像は支配者層によって大半が廃棄されていたため、素朴なクレイアニメと実写を織り交ぜて失われた記憶を再現し、第86回アカデミー賞外国語映画賞ノミネートなど多方面で絶賛された。
1970年代、共産主義を掲げるクメール・ルージュ(カンボジア共産党)の支配下、国民の多くが不幸な目に遭った。そんな時代に少年期を過ごし、家族や友人を失った映画監督リティー・パニュが自らの体験を基に、恐怖に支配された当時のカンボジアをクレイアニメと貴重な記録映像を織り交ぜて再現していく。(シネマトゥディ)

【感想レビュー】@theater
終映後、すぐには立てないほどだった。渋谷の街がグラグラして視えた。今年観たドキュメンタリー映画の中でも、最も胸に刺さる一本となった。
監督自身の実体験という点が他作品と簡単には比べられない大きな要素ではあるけども。情報(事実)、映像(イメージ)、概念の三者が、相互作用し調和している洗練されたドキュメンタリー映画だ。
当時、プノンペン都市部の洗練された文化の中で育った監督のアイデンティティーから発せられる映画なのだ。

ある日、突然始まった枯渇した土地への移住、個々人の財産の略奪、概念の略奪、強制労働の日々。
概念の略奪…。
そんな事が果たして出来るのか。
監督は言う。拒否は仕草一つに表れる。仕草一つで表現できる。

映画の中で、自分は死者であり、そこで亡くなった死者は自分でもある、というような事を話す監督。血塗られた大地の土で作った人形達は、監督自身であり、人類の誰もがなり得る可能性を秘めているのだ…。

この映画には、例えばホロコーストを告発した『夜と霧』のようなショッキングな映像はほとんどない。ポルポト政権下では、人が物のように扱われたけれど、この映画には、その魂にそっと寄り添っていく姿が感じられる。
家族を失い、天涯孤独になった少年は、自らの土地を捨て、言葉を捨てた。劇中の言葉はすべてフランス語。
忘れたい記憶、けれど忘れ難い記憶の数々を紡ぎ、イメージに昇華する様が胸に迫る。
映画に、監督の怒りが滲む。時には淡々と。時に荒れ狂う波のように。


ドキュメンタリー映画が好きで、色々観ていくうちに、私なりに色んなタイプの作品がある事に気づく。
今年観たドキュメンタリー映画の中でも印象深い4本(『ファルージャ イラク戦争 日本人人質事件…そして』、『アクト・オヴ・キリング』、『北朝鮮強制収容所に生まれて』、『収容病棟』)と比べてみても、本作は、監督自身の体験を基にしている点が、大きく違う要素だ。
映し出されるのは、監督自身であり、身近な無数の魂だから…。洗練された映像の端々に亡くなった方達への真心、愛、尊敬の念が感じられる映画だった。



『おとなのけんか』(2011)

2014年07月26日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『おとなのけんか』(2011)

監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ヤスミナ・レザ 、 ロマン・ポランスキー
ペネロペ・ロングストリート:ジョディ・フォスター
ナンシー・カウワン:ケイト・ウィンスレット
アラン・カウワン:クリストフ・ヴァルツ
マイケル・ロングストリート:ジョン・C・ライリー

【作品概要】
皮肉で知的なブラックユーモアで国際的に高い評価を得ている劇作家ヤスミナ・レザの傑作コメディを『ゴーストライター』のロマン・ポランスキー監督が映画化。上品な2組の夫婦が些細なことから対立、粗野で幼稚な本性が、次第にむき出しになっていく。2人のアカデミー賞女優が火花を散らす罵詈雑言の応酬がなんとも痛快(MovieWalkerより)。

【感想レビュー】
何なんだ、この作品は!
お、面白過ぎる…!!!!!
ネタばれにならないように気をつけます…。
密かにポランスキー監督作品の旅をしています

怪我をともなった子ども同士のケンカを、親同士が形式上の(形式上の!)話しを付ける場面から物語は始まります。
ほぼ、家の中で展開する作品なのですが…。あぁ、解り過ぎる。なぜか次第に夫婦の話しへ…。そしていつしか男女のあるあるバナシへ…

豪華な俳優陣が、もう鬼気迫る演技で…。いやもう演技とは思えないのですが…

あぁ、楽しかったー!
子ども達の方が、ちゃんとしているんじゃないだろうか…

やっぱりこの作品でも思ったけれど、日頃のちょっとずつのすれ違いを、せっかくぐーっと鎮めているのに、そこを刺激するとロクな事がないのが分かります…
ポランスキー監督は、どうしてこう素晴らしく、男女それぞれの想いや心の機微を繊細に捉える事が出来るのだろう…!
すごい…

あ、そしてその家のインテリアが、とてもスタイリッシュで好みです

『収容病棟』(2013)

2014年07月23日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『収容病棟』(2013)

【作品概要】
監督=王兵(ワン・ビン) 撮影=ワン・ビン/リュウ・シャンフイ 編集=アダム・カービー/ワン・ビン
製作=Y.プロダクション/ムヴィオラ 原題=瘋愛 配給=ムヴィオラ
2013年|香港・フランス・日本|237分(前編122分/後編115分)|中国語(雲南語)

中国南西部・雲南省の隔離された精神病院に収容されている患者たちの生活を捉えたドキュメンタリー。殺人、政治的陳情や一人っ子政策違反など、異常なふるまいを理由に収容されている患者たちの知られざる日常を映し出していく。鉄柵に覆われた閉鎖的な空間の中で、自分たちなりの世界と自由を作り出している患者たちの姿が、人間にとって正常と狂気の境は何かと問い掛けてくる。(Yahoo!映画より)

【感想レビュー】@theater
あぁ、また凄い1本を観てしまった

観た後に、あれこれ纏まったことは言えない、言いたくないドキュメンタリー映画…と形容したいけど、観た直後メモという事で書くけども…

実質4時間(!!!)も観たのに、不思議と長沢を感じさせなかった。それは、スクリーンに映っている事は真実だろうという前提があって、そこから目が離せなかったからでもある。

ドキュメンタリー映画の強さ…だとも思う。

どうしてあんな自然な彼らの姿をカメラは捉える事が出来たのだろう。
編集で切ってるのかもしれないけど、監督が彼らに話しかけているようには思えない…。
撮影隊に話しかけるともなく、ごくごくたまに、患者達の中には想いを吐露する者もいる。

ここに居ると、何でもない者だって精神を病む…みたいな事や、政府に対してだったり。

およそ300時間に及ぶ撮影テープを、4時間に編集し作品にしたのだから、当然どこを使ってどこを使わないのか、取捨選択が行われたはずだけど、しかし作り手である監督の主観性は伝わってこない。

中国の現状。
生活苦。
患者達のそれぞれが、生きにくい何かを抱えていそうだ。
それでも、お腹は空くし、眠たくなるし、用は足したくなるし(…トイレでとは限らないけど…!!)、笑うし、泣くし、真顔になるし、でも冗談も言うし、歌うし、恋愛はするし、我家に帰りたいし…。

あれ、一緒ですね、当たり前だけど、柵の中も外も一緒ですね…的な
この空間を撮ることが、中国の今を撮ることなのかも。

ひたっすら前編を観て、後編になった時、今さらながら、撮影隊も彼らと同じ柵の中に自然に居る事にハッとする瞬間がありました。
それほど、本当に自然に柵の中に居て彼らを捉えていたのですね


また一方で、仮退院で我家に帰れたある男性患者は、柵のない世界の行き止まりのない道を歩いていく。
どこまでも、歩いていく。
それは、収容病棟の堂々巡りの回廊と実に対象的だった…。

彼らの生活音が耳に残る。

終映後、トイレの洗面台の蛇口から流れる水の音を普段より大きく感じてギョッとした…。

あの場所のあの空間は、確実に今も存在しているのだろう。
主観性を一見排除したかのようなタッチで描くドキュメンタリー映画に度肝を抜かれました。






『アシク・ケリブ』(1988)

2014年07月23日 | 西洋/中東/アジア/他(クラシック)
『アシク・ケリブ』(1988)

監督:セルゲイ・パラジャーノフ

【作品概要】
1988年/ 74分 デジタル・リマスター版
原作は世界的に知られるロシアの詩人レールモントフによる恋物語。主人公のアシク・ケリブは貧しいながらも心優しい吟遊詩人。大切な娘マグリとの結婚を、その父に認められるために修行の旅に出る。マグリには1 0 0 0 の昼と夜の後に戻ると約束して… 。
(ユーロスペースHPより)

【感想レビュー】@theater
昨年観た『火の馬』も、衝撃的でしたけど、今回もまた怒濤の世界観に打ち震えております

豊かな大地、鮮やかな民族衣裳、踊り、儀式、活劇風な動き。物語は段落ごとに見所をともなって進んでいきます。民族音楽がとにかく素敵です。かと思うと、ギターのトレモロの途中からサンサーンスのロンドカプリチォーソへなっていく編曲が数箇所あって、意表を突かれました

喜びも哀しみも怒りも、力強いのです。理不尽な境遇に遭った自己も投影されているのでしょうかね…。

差し込まれる画や装飾品の数々
劇中の赤と白の色の対比
とにかく鮮烈な印象を受けます。

パラジャーノフの力強いエネルギーが、そのイメージ世界が、怒濤のように流れ込んでくるといった印象でした

生涯で5作品という事で、今回の映画祭で他の作品も観たかったなぁ…



☆2014年に観た映画メモ☆

2014年07月21日 | 映画生活の徒然日記
☆2014年に観た映画メモ☆
ブログに感想を載せてない作品メモ


【スクリーンで観た映画】
・ケルベロスの肖像(2014)

【スクリーンでは初めて観た映画】
・3-4x10月(1990)
・2/デュオ(1997)

【初めて観た映画】
・ぐるりのこと(2008)
・夜と霧(1955)
・マリー・アントワネットに別れをつげて(2012)
・赤い月(2003)

【DVD/WOWOWで二度目以降観た映画】
・ALWAYS 三丁目の夕日
・ALWAYS 続・三丁目の夕日
・ALWAYS 三丁目の夕日'64
・もののけ姫