☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『戦場のメリークリスマス』(1983)

2016年04月29日 | 邦画(クラシック)
『戦場のメリークリスマス』(1983)

監督:大島渚
出演者:デヴィッド・ボウイ、坂本龍一
、ビートたけし、トム・コンティ
音楽:坂本龍一
【作品概要】
第二次世界大戦下のジャワ山中の日本軍捕虜収容所を舞台に、極限状態におかれた男たちの心の交流を描いた人間ドラマ。

【感想レビュー】
そういえばちゃんと観ていないぞ…ということで借りました
そもそも80年代の始めは観ていない作品が多いです。幼少期だったことと日本に居なかったというのもありますが。。


男性しか出てこないこの映画の中には、支配する者と支配される者間の友情や純愛なる片想い、上官に対する思慕の念、故郷に残してきた大切な者への想いなど、それぞれの想いが詰まっている。極限状態で自分をぎりぎり保つ術だったのかもしれない…。いずれにしても想像を絶します。


そして、主要な役を演じるのが、プロの俳優でないというところが面白かったです。テレビドラマだったりすると演技が拙いと気になってしまいますが、映画だと味になるのが面白いです

デヴィッド・ボウイがとにかくとにかくとにかく美しかった…
もう、本当に本当に美しかったです

だから、坂本龍一さんが演じるヨノイ大尉が一瞬にして心を奪われたというのに、ものすごい説得力がありました。坂本龍一さんの演技の不自然さが(失敬…!)ヨノイ大尉の挙動不審な感じとうまく融合していてなんだか良かったんです…

そして、たけしさんの表情がすごい存在感でした。この作品の世界にいながら、なぜか違う次元にいるかのような不思議な感じ

たけしさんの不思議な感じはこの後の出演作品でも感じることですが、戦場のメリークリスマスは真骨頂だなぁと思いました

それにしても。大島渚監督は強烈な作品作るなぁ…と思うのであった…。





『ツィゴイネルワイゼン』(1980)

2016年04月25日 | 邦画(クラシック)
『ツィゴイネルワイゼン』(1980)

監督:鈴木清順
出演者:原田芳雄、大谷直子

【作品概要】
4人の男女が、サラサーテ自ら演奏する「ツィゴイネルワイゼン」のSPレコードを取り巻く、妖艶な世界へと迷い込んでいく。ロケは鎌倉で行われた。釈迦堂切通し、光明寺、旧有島生馬邸(現存せず)などが画面の印象を強めている。1980年キネマ旬報ベストテン第1位、ベルリン映画祭特別賞、ブルーリボン賞最優秀監督賞、第4回日本アカデミー賞最優秀作品賞等受賞。上映時間2時間24分[1](1980年シネマ・プラセット作品)。『陽炎座』(1981年)、『夢二』(1991年)と並んで「(大正)浪漫三部作」と呼ばれる。(Wikipediaより)

【感想レビュー】
すごく面白かったです
色気のある怪談のようでした。ぶるぶるしながらも夢中で観ました。一人一人の人物像が謎めいていて、浮世離れしている感じが、よりいっそう怪談のようにさせています…
さらにロケ地の鎌倉が効いていて、釈迦堂切通しを行ったり来たりするうちに、時空が歪んでいくような妙な錯覚を覚えます…

妖艶で、怪しくて、登場人物達の一挙手一投足からもう目が離せません
そして原田芳雄さんのお色気よ…!
大谷直子さんの美しさよ…!
思わず崇めてしまうのであった…


それにしても。
鎌倉の釈迦堂切通しといえば。
西島秀俊さんファンとしては『真木栗ノ穴』が浮かびますが
そうか、『ツィゴイネルワイゼン』へのオマージュがあったのかなぁと思いました。
これらのカットとかにも。



文学的で重厚感のある怪談でした上品で香り立つような…

『陽炎座』と『夢二』も観なければ…!



『四川のうた』(2008)

2016年04月16日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『四川のうた』(2008)

監督:ジャ・ジャンクー

【作品概要】
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した『長江哀歌(エレジー)』のジャ・ジャンクー監督によるセミ・ドキュメンタリー。大地震が起こる直前の中国四川省・成都で再開発のため閉鎖される巨大国営工場「420工場」を舞台に、そこで働いていた労働者たちが語るさまざまなエピソードを通し、中国がたどってきた激動の歴史を浮き彫りにする。文化大革命や自由化政策など、目まぐるしい政治的変動の中でたくましく生き抜いてきた人々の姿が深い感動を誘う。(Yahoo!映画より)

【感想レビュー】
じわりじわりと染み入っていくような映画でした。

「420工場」で生きてきた多くの人たちの想いが、観ているこちらに静かに降り積もっていくような…。

取材で得た素材からイメージを抽出して、数人のプロの役者に演じさせている部分があって、そのパートが印象的です。そこが浮き上がってみえるのものの、実際に工場に関わっていた人達のパートの印象は薄くなるどころか、生々しく迫ってきます。

プロの役者のパートは、俳優が雄弁に台詞を語り、実在の工場関係者達のパートは、動画だけど静止させて、ただカメラのフレームを見る、という数秒止まっているように感じるシーンが差し込まれます。
ただ、黙ってカメラを見る彼らを観ているうちに、彼らの前に、横に、背後に、内に、そこに息づく生身の人間が浮かび上がってくるようで、震えました。

集団主義から個人へ。一人一人の人間が自由に発想し人生を生きていく、その事こそが中国の真の近代化なのだとすれば、過渡期を捉えた素晴らしいドキュメンタリーだと思います。
朝鮮戦争やベトナム戦争の軍需で景気の良かった420工場の繁栄と衰退が象徴的に描かれています。工場の廃墟はコンクリートの塊と化し、取り壊しの音が虚しく響く。。
一方、新しくそこに建設される施設は、かつてそこで何事もなかったかのような、ハイセンスな建物が立ち並ぶのだろうな…。日本もかつてそうであったように。今もそうであるように。。

ドキュメンタリーの手法も興味深く
て、観ることができて良かったです




『柳と風』(1999)

2016年04月13日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『柳と風』(1999)

監督:モハマッド=アリ・タレビ
脚本:アッバス・キアロスタミ

【作品概要】
 学校のガラスを割ってしまった少年がお金もないのに弁償を迫られ、新しいガラスを取付けるために奮闘する姿を緊張感あふれるタッチで描いたイラン映画。脚本は「友だちのうちはどこ?」のアッバス・キアロスタミ。イラン北部の村。少年クーチェキは誤って学校の窓ガラスを割ってしまう。学校の先生からは窓ガラスを元に戻すまで授業を受けさせないと言われるが、父親にそんなお金の余裕はない。やがてなんとかお金を工面してガラスを買いに行くクーチェキだったが……。(Yahoo!映画より)

【感想レビュー】
観終えて今、心がポカポカしています。素晴らしい映画でした

いつもネタばれとかあまり気にしないでブログを書いておりますが、この映画は特に展開が大事なので注意いたします

始めは転校生の少年が主役なのかと観ていたらそれは違うし、ん?あれ?あれ?と思っているうちにどんどん展開されていく心地良さ。

学校から家までの道のり。発電所までの道のり。ガラス屋さんまでの道のり。そして再び‼学校までの道のり。
牧歌的な風景も見応えたっぷり。気の遠くなるであろう距離を、あっちへこっちへと駆け巡ります。

途中からはもう、手に汗を握りつつ少年の顛末を見守ることに…‼

一家の生計をたてるためには子どもだって立派な働き手である家庭にとって、学校へ通わせることがいかに大変なことなのか。
また、転校してきた少年の家庭の裕福さが伺える描写が秀逸でした。裕福であることで生まれる彼を包むゆったりとした空気と主人公の少年とのコントラストがとても印象的です。

子どもたちの世界から見る“大人たち”の描写も素晴らしくて、胸の奥がジンとしてきます

『友だちの家はどこ?』も素晴らしかったですが、『柳と風』にもグッときました