☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『普通の家族』(2016)@東京フィルメックス

2016年11月30日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『普通の家族』(2016)

【作品詳細】
フィリピン / 2016 / 107分 / 監督:エドゥアルド・ロイ・Jr(Eduardo ROY Jr.)

マニラの街頭で生きる16歳の少女ジェーンと、そのボーイフレンド、アリエス。主にスリなどで生計を立てていた二人の生活は、ジェーンに子供ができたことによって一変する。だが、一か月もたたないうちに、子供は何者かに誘拐されてしまう。二人は子供を取り戻すためにあらゆる努力を払おうとするが……。子供を奪われた主人公たちを媒介に、マニラの煩雑な街並みとそこに生きるストリート・チルドレンたちを生き生きと描いたエドゥアルド・ロイ・Jrの長編第3作。フィリピン・インディペンデント映画界の登竜門であるシネマラヤ映画祭で最優秀作品賞を含む5つの賞を受賞した後、ヴェネチア映画祭「ヴェニス・デイズ」部門に選ばれ、観客賞を受賞した。

【感想レビュー】@東京フィルメックス
11/24(木)の2本目、コンペティション部門の1本。

これまたメインの夫婦役の男女が魅力的で素晴らしかったです

Q&Aにおいて。撮影前に彼らには、ストリート・チルドレンを演じるにあたり、ワークショップに参加してもらったり、実際に現状を見に行ったりしてもらった、とのことでした。

それにしても、あまりのリアルな描写に、ドキュメンタリーを観ているような感覚にさえなりました。

ストリート・チルドレンの中では、お兄さんやお姉さんの立場であり、手練手管な彼らですが、ひょんなことで一般社会の中に入った時の彼らの存在の儚さといい、無力さ、無知さ…。抉られる描写が多数でした。

でも、追ってから逃げる時の身体能力の高さとか、見ていて爽快感たっぷりです!!


タイトルと内容とのギャップ、その狭間に、何か言語化しにくいけれど、フィリピンの現在が切り取られているだろうし、観れて良かったなぁと思いました



Q&Aの様子





『恋物語』(2015)@東京フィルメックス

2016年11月30日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『恋物語』(2015)

【作品詳細】
韓国 / 2015 / 99分 / 監督:イ・ヒョンジュ(LEE Hyun-ju)

美術大学院生のユンジュは、修了制作展のための素材を探すために入った店でジスに出会う。その後、コンビニで偶然再会した二人はつき合い始める。やがて、ユンジュはすっかりジスに魅了されてしまう。それは男性との付き合いでは感じられなかった感情だった……。イ・ヒョンジュが韓国国立映画アカデミー(KAFA)の卒業制作として監督したこの長編第1作は、女性二人の間に展開されるラブ・ストーリーを奇を衒うことなく真正面から描いた作品だ。二人のヒロインの微妙な感情の動きを見事にとらえる手腕はイ・ヒョンジュの才能を十分に感じさせる。チョンジュ映画祭の韓国映画コンペ部門で最優秀賞を受賞。サン・セバスチャン映画祭でも上映された。

【感想レビュー】@東京フィルメックス
11/24(木)、コンペティション部門の1本。

この日は雪☃️でしたが、もちろん楽しみに出掛けました

前日の初回上映と同様に韓国映画。『私たち』が子ども達を描いた作品なのに対し、こちらは大人の女性を描いたかなりアダルトな内容でした👀

Q&Aで監督は、女性同士の同性愛の作品は、韓国ではまだまだ…と仰っていましたけど、日本もまだまだです…と内心思いました。

それだけに、かなり真正面から描かれた内容に驚くと同時に、監督すごいなぁ…とも思いました。
また、とても丁寧な描写から、二人の間の愛情がいわゆる一般的な男女の恋愛と変わらないのだというメッセージや、同性愛ならではの周囲の理解を得難いという問題も、シンプルに受け取ることができました。
ジスは父親に打ち明けられず、周囲にも公言してはいないような描写がある。ユンジュの方は、男友達に打ち明け、彼はその事を驚きはするもののごく普通に受け入れるなど、周囲の受け取り方も、様々な立場で様々な温度があり、リアルに描かれていました。


美術大学院生ユンジュの目を伏せて微笑む控えめな表情が印象的で、一方、呑み屋で働いているジスの意志の強い眼差しも魅力的でした
メインの二人の女優の表情のグラデーションが素晴らしくて、グイグイ引き込まれました。

全般から中盤にかけての恋のホクホク期は特に楽しかったです


また、監督もチラリとご出演されていたと思います


Q&Aの様子



『ザーヤンデルードの夜』 (2016)@東京フィルメックス

2016年11月29日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『ザーヤンデルードの夜』 (2016)

【作品詳細】
イラン / 2016 / 63分 / 監督:モフセン・マフマルバフ(Mohsen MAKHMALBAF)

人類学者の父親と救急病棟で働くその娘のたどる運命をイスラム革命前、イスラム革命中、そしてイスラム革命後の3つの時代にわたって描き、マフマルバフ本人もその一端を担った1978年のイスラム革命の意味を鋭く問う作品。検閲によって25分間カットされた後、1990年のテヘラン・ファジル映画祭で上映されたものの、再度の検閲で上映自体が禁止となってネガが当局に没収されたため、それ以降イラン国内外を問わず全く見ることのできなかった幻の映画。近年、何らかの形でネガがイラン国外に持ち出されてロンドンで復元作業が行われ、本年のヴェネチア映画祭クラシック部門のオープニングを飾った。検閲前のオリジナル版は100分であったと言われる。

【感想レビュー】@東京フィルメックス
11/23(水・祝)の4本目。
特別招待作品フィルメックス・クラシックの1本です。

オリジナル版の100分から37分も検閲によりカットされているとのことで、さらに上映されている部分でも、音声が無音にされている箇所が幾つもありました。

逆に、このシーンはなぜ検閲に引っ掛からなかったのだろう…⁈⁈と思う部分も…。

でも、カットされている部分は反体制の言動をしているわけで、無声であるということ、それこそが、まさに体制からすると皮肉ながら監督のメッセージになってしまっているのですが。

革命前、革命中、革命後の3つの時代を経て、人々の考えが変化していきます。
もっと自らの頭で考えなければならないのではないか。映画はそんなメッセージを投げかけてきます。

とりわけ、夜のシーンが美しかったです。白々しい昼間と打って変わり、闇に紛れて真実が垣間見えるようでした。


【Q&A フィルメックス公式HPより抜粋】
17才の時、体制への反対運動で逮捕された監督は、その5年後に人々の考えが変化し、同じ広場で革命の暴動が起きたことに驚く。さらに10年後、同じ場所で交通事故に遭った人を皆が素通りする光景を目にした。「なぜ革命では助け合ったイラン人が、事故では助け合わないのか。その心の変化はどこにあるのか。それがこの映画の問いです」。作中では、革命前と革命後のイランの体制の変化も説明されている。「もし政治に1つの問題があれば、その背景にある文化には10の問題があると思った方が良い」とマフマルバフ監督は警告する。「私はこの映画をイラン人の姿を映す〝鏡〟として作りました。彼らに〝自分たちの姿を見てみろ〟と言いたかったのです」と作品の狙いを語った。


映画が人々の考えを変え、社会に変化作用をもたらすことについても言及されました。

それにしても検閲とは…恐ろしい。

そして、それでも諦めずに立ち向かって行くマフマルバフ監督の情熱に畏怖の念をおぼえます。
上映後のQ&Aでは、優しいお声のトーンで比較的ゆっくりな英語でお話しになられていました。

ゆったりとした雰囲気ながらも、力強くて熱くて、大きな大きなお人柄を感じました。
会場に居た人達を包み込むような温かさが印象的でした。

映画から感じたことを、監督ご自身からも感じました。不屈の精神。信念の人。
アミール・ナデリ監督にも感じることだけれど

壇上から、客席にいたアミール・ナデリ監督を『イラン映画の父』と紹介し、会場からまた温かな拍手が起きました

上映後は、とても清々しい気持ちになりました

手元にあるマフマルバフ監督の本、読まねばー!!
ぬおぉぉぉ

『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』という書籍です。



この日は、4本を観賞したところで会場を後にしました。


同日に、こんなに豊かな映画体験ができるとは…。
恐るべしフィルメックス…!!








『よみがえりの樹』(2016)@東京フィルメックス

2016年11月29日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『よみがえりの樹』(2016)

【作品詳細】
中国 / 2016 / 85分 / 監督:チャン・ハンイ(ZHANG Hanyi)

舞台は中国陜西省の山間の村。映画は、数年前に亡くなった女性シュウインの魂がその息子レイレイに憑依した、という設定から始まる。レイレイの姿を借りたシュウインは、レイレイの父、つまり自分の夫に対し、自分の願いを伝える。それは、結婚当時に植えた木を別の場所に移植してほしい、というものだった……。チャン・ハンイの監督デビュー作である本作は、一種の幽霊譚とも言うべき作品だ。映画の中では幾つかの不可思議な出来事が起こるが、そういった出来事が奇異なものではなく、ごく当たり前のように描かれている点が興味深い。ジャ・ジャンクーが若手監督作品をプロデュースする「添翼計画」の最新作。ベルリン映画祭フォーラム部門で上映。

【感想レビュー】@東京フィルメックス
11/23(水・祝)、この日に観たコンペティション部門の3本目。

最優秀作品賞に輝いた作品です。

亡くなった妻の魂が、息子の体を借りて、夫の前に現れる。思春期を迎え父親に反抗的な息子が、とたんに声は高くなり落ち着いた物腰の妻になる…!
息子役の男の子が、可愛らしい顔立ちなので、なんかものっすごく馴染んでました
それでまたその状況をナチュラルに受け入れる夫や両親達。

葉の落ちた木々が、枯れた山間の村の実情を無言のうちに語る。限界集落だ。ほとんどなす術もなく、ただただ村の運命を受け入れている。

家の前の木を別の場所に移したい、という願いを叶えるため、息子の体に降りてきた妻をトラックの荷台に乗せ、あっちへこっちへと夫が走らせる。
輪廻転生をシュールに描いた寓話であると同時に、夫婦の静かなロードムービーでもありました

所々、緩慢に感じる時間帯はあったけど、これまた所々、吹き出しそうになる所もありました。

高い木の上に登った山羊達の抵抗とか


Q&Aで、本作の舞台、黄土高原地帯は監督が子ども時代に過ごしていた故郷なのだと仰っていました。監督曰く、冬は娯楽もなく、何もすることがない土地、だそうで。

Q&Aを聞きながら、監督は、そのような土地で過ごしながら、いつ、どのようなタイミングで映画の勉強をしようと思ったのかしら、とふと思いました。






『仁光の受難』(2016)@東京フィルメックス

2016年11月28日 | 邦画(1990年以降)
『仁光の受難』(2016)

【作品詳細】
日本 / 2016 / 70分 / 監督:庭月野議啓(NIWATSUKINO Norihiro)

主人公は謹厳実直な修行僧、仁光。仁光の悩みは、若い娘から老女まで、なぜか女たちに異常に好かれることだった。絶え間ない誘惑に気が触れそうになった仁光は、自分を見つめ直す旅に出る。旅の途中で出会った勘蔵という名の浪人とともに寂れた村にたどり着いた仁光は、村長から男の精気を吸い取る「山女」という妖怪の討伐を頼まれる。かくして仁光と勘蔵は山へと向かう……。奇想天外な妖怪譚を巧みな編集を駆使して描いた作品。時折挿入されるアニメーションやVFXも絶大な効果を上げている。様々なジャンルの作品を発表してきた映像作家・庭月野議啓が4年をかけて製作した長編デビュー作。

【感想レビュー】@東京フィルメックス
11/23(水・祝)に『私たち』に続いて観たコンペティション部門の2本目。

これは…!!!!
フィルメックスの上映作品か!?!?!?!?

…と、あの場に居た多くの方が思ったかと思う。。

なんせ、おっぱいがいっぱいですからね

でもこれが面白かったんです

上映後のQ&Aで、監督が『お金(製作費)が無いから時間をかけた』と仰っていたのですが、なんだか胸が熱くなりました。
以前、監督とお仕事された方が質問されていて、製作費はいくらか?という凄ーい生々しい質問に1,000万円と迷いなくお答えになった庭月野監督。
(この美しい苗字は本名だと仰っていました)

映画はというと、修行僧の仁光が、凄まじい煩悩の渦に飲み込まれていく様が強烈でした。

その表現にアニメーションやVFXが時折り挿入されるのも面白かったです

また、ラヴェルのボレロで踊るダンサーの振付けと仁光の煩悩を払う身体の動きがマッチしていって、世界観がぴったりハマった時の昂りといったら…!!
もうブラボーなわけなのでした

フィルメックスの上映作品で、おっぱいがいっぱいなことのじわじわくる面白さは、最近よく云われる反知性主義をここに感じたことです。

つまり、Q&Aで林ディレクターが仰っていましたが、『仁光の受難』は本気の1本だと言うこと。
みなさん、フィルメックスは貧困に喘ぐ人々を捉えた映画のセレクトが多いとお思いかもしれませんが、そんなことはない、と。多少言い回しが違うと思いますが、そのような事を仰り、また会場から笑いが起きました。
みんな、少なからずそう感じていたという証拠ですよね、ふむ。

貧困に喘ぐ人々、同性愛、宗教、少数民族、など多くのマイノリティーの視点に立った映画に対して、おっぱいがいっぱいで照れ隠ししつつ、この本気の映画を撮るには、相当な知性の蓄積を要するという、この逆説的な面白さも加わり、なんだか痛快でさえありました

監督は、多くの構図を、もう最初から決めていたとのこと。
Q&Aは、上映前の舞台挨拶とは打って変わって温かく面白い空気感だったと思います

人間の煩悩との闘い、面白かったです

配給がつきますように…。