☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『世界』(2004)

2016年02月18日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『世界』(2004)

監督/脚本 :ジャ・ジャンクー
チャオ・タオ、チェン・タイシェン

【作品概要】
中国にあるテーマパーク「世界公園」を舞台に、一座の女性ダンサーのリアルな日常を描いたヒューマンドラマ。北京にあるテーマパーク「世界公園」で、ダンサーとして活躍しているタオ(チャオ・タオ)。日々華やかな舞台で賞賛を浴びているタオだが、実は先の見えない現状に焦りと不安を感じ始めていた……。(シネマトゥデイより抜粋)

【感想レビュー】
某ネットレンタルのリストに入れたまま、忘れかけた頃に届くパターンで観ました。いつもこれ…

さて映画はというと、設定や状況が、ほぼ映像で語られ、常に時が流れているという心地良さを味わいました台詞は必要最低限のような感さえありました。

造られた『世界』の閉塞感と人口過多の様は、観ているこちらまでが息苦しくなってくる。
出稼ぎのロシア女性。
上空を飛ぶ飛行機。香港行きの切符。
偽造パスポート…etc…。
外の『世界』を感じさせる幾つものエピソード。でも、彼女の『世界』はここだけ。。
2000年の始めの中国の様子が伺えます。

ジャ・ジャンクー監督作品は、フィルメックスで『罪の手ざわり』や『山河ノスタルジア』の二本しか観たことはないのですが、抑えたトーンの中で静かに降り積もっていく狂気と突如爆発する狂気とが同居する怖いイメージを持っていて、『世界』にもまた、同様の印象を持ちました。
目には見えない社会の空気感が、繊細な描写の連続で幾層にも降り積もっていき、気が付くと、とても深く身動きの取れない場所に連れていかれたような疲労感。。
ラストの展開も含め、しばらく無言になってしまった…。

それから、チャオ・タオさんが美しくてうっとりしました

『ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る 』(2014)

2016年02月10日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る 』(2014)

監督:エディ・ホニグマン/出演:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
2014年/98分/オランダ/DCP/配給:SDP

【作品概要】
聴くものが、人生を重ねる時、音は初めて音楽になる。オランダの王立オーケストラの創立125周年記念ワールドツアーを追ったドキュメンタリー。
ウィーン・フィル、ベルリン・フィルと並ぶ世界三大オーケストラである、オランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)。2013年、コンセルトヘボウが創立125周年を記念して、1年で50公演をおこなう世界一周のワールドツアーへと旅立った!アルゼンチンから南アフリカ、ロシアへと、気さくな素顔をのぞかせながら、王立御用達(ルビ:ロイヤル)オーケストラが世界をめぐる。(ユーロスペースHPより)

【感想レビュー】@theater
コンセルトヘボウの裏側を垣間見るドキュメンタリー映画、楽しみにしていました

…が、ドキュメンタリー映画としては…特に目新しいものはなかったかなぁと思います。。
大きく三本の軸がありました。
一つ目は、ツアーで行く先々の観客にスポットを当てたこと。アルゼンチンではタクシーの運転手、南アフリカでは音楽に夢中な女学生達。はたまたロシアでは、元貴族の家柄でスターリンやヒトラーに追われ強制収容所にいた経験をもつマーラーに特別な想いのある老紳士など。コンサートツアーでオーケストラが織り成す音楽が、その土地土地の人々にどのような作用をもたらしているのか、が描かれています。

二つ目は、コンサートツアーを周る団員のプライベートな側面。家族を国に残し、単身でツアーに参加する団員が、電話やネットで連絡を取っている様子など。

三つ目は、各パートの首席奏者が、音楽そのものに向き合っている姿、そしてオーケストラの団員が指揮者の元で音楽を創り上げていく様子を捉えたもの。

そういった三つの軸が、コンサートのその瞬間、化学反応を起こし一体となる素晴らしさ。

オーソドックスなドキュメンタリーのスタイルなのだけど、少し拡げ過ぎたのか散漫になりがちだった気も…
まるでスクランブル交差点の往来のようだ
スクランブル交差点ってカオスなものだしいいのかもしれないけれど、通り一遍な感も否めなかった
うむぅ…。コンサートを聴くことで得る以上の何か…を音楽ドキュメンタリーで描くのは難しそうだなぁと改めて感じました

でも、ヤンソンス指揮、ヴェルディ『レクイエム 涙の日』はほんの断片だったけど、素晴らしかったです

『恋人たち』(2015)

2016年02月04日 | 邦画(1990年以降)
『恋人たち』(2015)

監督・脚本:橋口亮輔/出演:篠原篤、成嶋瞳子、池田良
2015年/日本/140分/ビスタ/5.1ch/配給:松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ 

【作品概要】
不条理に満ちたこの世界を、それでも慈しみ肯定する―
今を生きるすべての人に贈る絶望と再生の物語。
通り魔殺人事件によって妻を失った男。退屈な日常に突如現れた男に心が揺れ動く主婦。同性愛者で、完璧主義のエリート弁護士。不器用だがひたむきに日々を生きる3人の“恋人たち”が、もがき苦しみながらも、人と人とのつながりをとおして、ありふれた日常のかけがえのなさに気づいていく姿を、『ぐるりのこと。』『ハッシュ!』で知られる稀代の才能・橋口亮輔が、時折笑いをまじえながら繊細に丁寧に描きだす。(ユーロスペースHPより)

【感想レビュー】@theater
昨年、話題になっていたので気になっていた作品です

不条理に満ちた世界を描いているというだけあって、なかなかに抑圧された空気感…。じわじわと苦しくなっていきます。。

やり場のない怒りは、一体どこへ向かうのだろう。

妻を無差別殺人事件で亡くし、先の見えないやり場のない怒りに、打ちのめされている男性。

また、一見するとごく普通の家庭を築いているかのように見える夫婦の、ある種の不自由さ。姑と同居する嫁の蓄積していく不満。化粧っ気のない女性の渇いた日常と生々しい性。

また、身体と心の性が一致しておらず、自身がそうだと気付いた時から生じたある種の生きにくさを、エリートの仮面を被ることで抑圧してきた男性。(話し方がアンガールズの田中さんにちょっと似ていてツボだった…)

メインの3人だけでも、かなりお腹いっぱいの内容です

あぁ…だからこういう心の機微に目を向ける映画は苦手なのだ…そこに幸せはないのだから…と思いつつもスクリーンからは目が離せない

何でしょうかね。。
なんか、セットといい、役者さんのあえてのだらしない身体つきといい、生々しい生活臭がしてきそうな描写といい、リアルな力強さがありました
音や声も生っぽくて、臨場感がありました。無名な俳優陣の存在感も光る。

お笑いで、いがちな人物を誇張して模倣するネタがありますが、そのさらに模倣のような演技があって、他がリアルだから、妙に浮くそのシーンの間はなんともいたたまれない。。浮いた存在にしたかったのかもしれないから、狙っているのかもしれない…

シュールで笑えるところがちょこちょこあるのだけど、劇場で笑っている人がいないので、なんとなく堪えるのが大変でした…

かなり現代社会を抉る内容でした。たくさんの登場人物の吹き溜まりのような日常が、ラストは少しずつ流れ始める。それはちょっと急な展開な気もしたけど、映画を終らせないとならないので、仕方ないのかな…と思いつつ。

みんながかなり吹き溜まっていたので、そこは、みんなしてきっと星のめぐりが悪かったのだな…と思うことにして…
でも、首都高の下の川を船で行くくだりは、スムーズな流れを感じさせるもので、希望のあるラストで良かったと思いました


あ、それから光石さんと女性が鶏を原っぱで追うシーンはすっごい良かったです…‼あのシーンは展開も含め、音楽も、何もかもが震えるほど良かったです

『ヤンヤン 夏の想い出 』(2000)

2016年02月03日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『ヤンヤン 夏の想い出 』(2000)

監督:楊徳昌(エドワード・ヤン)
呉念真(ウー・ニエンチェン)
金燕玲(エレイン・ジン)
張洋洋(ジョナサン・チャン)
李凱莉(ケリー・リー)
イッセー尾形

【作品概要】
少年ヤンヤンとその姉、母、父のそれぞれの苦悩を描いていく。生と死、愛を描いた作品。少年ヤンヤンとその姉、母、父のそれぞれの苦悩を描いていく。2000年の第53回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。

【感想レビュー】
173分…およそ3時間もある作品なのに、しかもDVDだから飽きたら止めてしまいそうなのに、一気に観ました

大きい事件という事件もない(隣家ではある…)家族の話。一緒に住む母方の祖母の自宅療養を機に、家族一人一人が自分と向き合い始める。向き合い過ぎることでかえって家族の歯車が崩れるって、家族あるあるな気が…

私自身、昨年の父方の祖母の死をきっかけに色々と思考がぐらぐらして、嫁の立場である母とちょっとした諍いをしてギクシャクしたり…大なり小なり、冠婚葬祭って親戚も含めて感情的になりがちで、ちょっとバランスが崩れるのかもしれない…

…なもので、なんだかスゥーッと引き込まれて観ました。淡々としているようで、映画の構造が複雑で、面白かったです。父の昔の恋が、娘や息子ヤンヤンの現在の恋と重なっていくくだりなんて、ものすごくシビれました


『真実の半分だけ知ることができる?』

ヤンヤンの父への質問。

ドキってする質問です
これが色々なエピソードに効いてくるのだけど。

ちょっと仏教の半眼の考え方を思い出しました。
驕り、はないだろうか。多くを望み過ぎてはいないだろうか…と、観た後にあれこれ考えさせられる映画で、沁みています

イッセー尾形さんの存在に抜け感があって、映画全体が息苦しくないのも素敵でした