☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『クリーピー 偽りの隣人 』(2016)

2016年06月24日 | 西島秀俊さん☆映画
『クリーピー 偽りの隣人 』(2016)


監督:黒沢清
脚本:黒沢清、池田千尋
出演者:西島秀俊、竹内結子、香川照之、川口春奈、東出昌大、


【作品概要】
第15回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝いた前川裕の小説を映画化。隣人に抱いた疑念をきっかけに、とある夫婦の平穏な日常が悪夢になっていく恐怖を描く。



追記を編集していたら、一度目にUPしていたレビューを消してしまったようなので、この記事は二度目のレビューに加筆したものです。

【感想レビュー】@theater
公開初日に観た『クリーピー』の脳内侵食が本当に止まらず、もう一度観に行きました

2回目なので、初見の時に凄いなと思った音や音楽により集中したりもできて楽しみ方も無限大…!凄いぞ『クリーピー』…な感じです

特に弦楽器群の重低音のビートが、シーンを盛り上げるのに効果的に響いていて素敵過ぎるし、音量だけでなくて音質や音色の濃淡と使用されている各シーンの諸々の濃淡がマッチしていて、とっても素敵過ぎるんです

かと思えばキリキリと耳に付く高音の電子音には神経を逆撫でられるし、全体的に耳に心地よく響く音域があまりなくて不穏さに拍車がかかります。
だから余計に、、、あるシーンで美しく響く旋律にグッときてしまいました

また、濃淡の話しでいえば照明が実に印象的な役割りをしていると思うのですが。
西島さん演じる高倉の横顔の右のアングルが、ことあるごとに反復されていて、その照明の濃淡が、高倉という人物が一筋縄でいかないことを暗示しているし、この人どっちなんだろう?と天秤にかけながら映画を観る楽しさがありました。

そういう意味では、香川さんの演じる西野の照明の当たり方はどうだったかな…。いや、ちゃんと観ていましたよ。西野ももちろん…。
濃淡というよりは照明が黒くなった時の香川さんのフォルムが凄かったイメージです。
高倉と西野のフォルムがあまりに対照的で、高倉には冷徹なイメージ(美し過ぎて隙のないシルエットがかえって…)を持ちましたし、一方、西野にはユーモラスなイメージを持ちました。その対比が面白かったです
でも彼らのシルエットには、永遠に続きそうな無という狂気が感じられて心底ぶるぶるもしました…


そして、初見の時も同様に感じましたが、戸田さんの演じる高倉の同僚が、あまりにもあまりにも自然で、ごくごく普通に居て改めて凄いなと。
クリーピーの世界に存在しているのに、まるで違ったテンションで存在していて、ここにも不穏な世界とごく普通の日常の境界線があったか、と唸る思いで観ました。

不穏さを引きつけてしまうのは、それに呼応していってしまう何かが自らの中にもあるといわんばかり。
戸田さんの演じる同僚も興味本位なところもあるのに、一見すると乗り気でない高倉がどんどんハマっていってしまう怖さというか…。

香川さんの演じる西野は、わりとテンションが安定しているのに対し、高倉はフラットな状態から尻上がりにテンションが上がって行くわけですが。その演技のグラデーションが西島さん改めて素晴らしかったなぁと思いました。
西野に対峙することで、高倉も妻も自らの深淵を見つめてしまうのかもしれない。…そこが一番怖い…。そういうのが一番ホントに怖い…。

そして、同監督作品の『CURE』と同じ方向性ではあるけれど、エンターテイメント性が高く、映像がより洗練されている印象を持ちました。(『CURE』は立て続けには何度も観たくないほど怖い…。)


でも、黒沢監督といえば!
…な風で揺れる各種カーテン。
ファンタジックな車中シーン。
ゆらゆらする光とか洩れでる光とか。
気味の悪い家屋とか廃墟とか。
そよそよと清々しいはずの草木がザワザワ揺れて嫌な感じとか。
噛み合わな会話とか台詞の間とか。
変な動作とか…
(西野家に続く“安全第一”の柵はシュールで面白かった…!)
とにかく、とにかく最高でした!!

そういえば香川さんの劇中での走りって黒沢清監督の『贖罪』の時に怖過ぎてもう逆に笑えるほどでしたけど、今回も独特な動きがもう怖くて怖くて
香川イズムここに極まれり…!ですね。

竹内さん演じる妻もたいがい不気味だったなぁ…

ふと思ったことですが、黒沢監督の描く女性に、いつもちょっと不思議な感じがしていて。
監督の書籍を読んでみようかな。インタビューや対談の動画とかのお話しはいつも興味深いので書籍…ちょっと値が張りますが近いうち読みたいと思います





『女が眠る時』(2016)

2016年03月03日 | 西島秀俊さん☆映画
『女が眠る時』(2016)

監督:ウェイン・ワン
佐原:北野武
清水健二:西島秀俊
美樹:忽那汐里
清水綾:小山田サユリ
新井浩文
渡辺真起子
リリー・フランキー

【作品概要】
『スモーク』などのウェイン・ワン監督がメガホンを取り、スペイン人作家ハビエル・マリアスの短編小説を映画化したミステリー。海辺のホテルを舞台に、偶然出会った男女の私生活をのぞかずにはいられない主人公の異様な心象風景を描写する。

【感想レビュー】@theater
観る前から、色んな解釈ができる映画だというインタビュー記事をたくさん読んでしまっていたので、そこに対して衝撃みたいなものはあまりなかったのですが、不思議な感覚の映画だなぁとじわじわ感じています。

単純に物語が時系列に展開するわけでもなく、会話が噛み合っているシーンばかりでもなく、妄想の断片が散りばめられ、もとい妄想のさらに妄想の断片かもさえしれなくて、激しいシーンもあるのに、映画全体から温度を感じないという不思議さ。

妄想の内容自体はとてもウェットなのに、映画全体のテイストは奇妙にも澄んでいる感じがとても不思議でした。
そこが怖い感じさえする…

どうとも捉えられる映画ということで、観るたびにまた違った感想を持ちそうですが。
観た直後は、小説家を演じる西島さんがプールサイドで妻の麦わら帽子を日除けに見せかけ顔に乗せ、逆サイドの二人の様子を盗み見る…というところからが既に妄想のようにも思ったのですが。
ちょっと時間が経った今は、小説家は、たけしさん演じる佐原だけを知り、どちらが先かは分からないけれど、リリー・フランキーさんのお店で佐原と女の子とその両親の写真を見たことで、成長した架空の美樹を創り上げたのかも…とさえ思うように。

いずれにしても、この映画で凄かったのは、たけしさんの内面に潜む底知れない狂気を纏った演技。その空気感は、小説家が佐原という人物像をあれこれ妄想してしまうことに、とても説得力がありました。

小説家の(私が思う)妄想のシーンでは、小説家が登場人物達に質問したりする時の台詞の間合いが、妙に早かったことが気になって、それが小説家が、頭の中で状況設定や展開をあーだこーだとイメージし、書き手の自分が登場人物達に問いかけているからのようにも思えたし、ラストの小説家が佐原に声をかけた時の表情が何とも柔和なので、どう考えても実際にはホテルでの出来事は現実にあったとは思えなくなってしまったのです

新井さんやリリー・フランキーさん達の台詞の間も内容も普通じゃなかったし、小説家の頭の中のこの人物はこういう設定みたいなメモのようにも感じました。

淀みなく流れていく展開は心地良くさえあって、最後まで、実はこうでした的な種明かしがされることもなく、
凄いなぁと思いました。

なので、不思議な映画だったなぁと思います

こういう、流れるような映画ってきっと映像ならではの表現かなと思うし、ちょっと印象派音楽のようでした。

西島さんは相変わらず、映画を邪魔しない空気感でそこも見どころでした

『劇場版 MOZU』(2015)

2015年11月09日 | 西島秀俊さん☆映画
『劇場版 MOZU』(2015)

監督: 羽住英一郎
出演: 西島秀俊、香川照之、真木よう子
【作品概要】
家族を失った警視庁公安部の捜査官・倉木が、殺し屋「百舌」を追ううちに巨大な陰謀に巻き込まれるという壮大な物語を、個性的なキャストが熱演、話題を集めたドラマ版。劇場版はさらに、最強のラスボス「ダルマ」をビートたけし、その配下のテログループメンバーを伊勢谷友介、松坂桃李といった超豪華キャスト陣が参加。シリーズ最大の謎「ダルマ」との対決を描き出す。(MOZU公式HPより抜粋)

【感想レビュー】@theater
初日に観て来ました。結論からいうと、大満足でした‼‼‼

地獄の黙示録や北斗の拳(←大好き)のような印象を持ちました

思いがあり過ぎて、以下長くなります

正直、ドラマ→WOWOW→劇場版ときて、そもそもが混み入ったストーリーではないので、内容量的にはWOWOW→劇場版位でちょうど良いのになぁ、シリーズ長いんだよなぁ…などと偉そうに思ったりしていました…。一方で、各シーンの照明や構図などの映像の素晴らしさ、躍動感ある迫力のアクション、そして奇想天外な展開や俳優陣の意表を突く演技などを楽しんでいましたし、惚れ惚れと観ていたりもしました
ただ、如何せん長いなぁ…という印象も拭えず。。
それで、初日にいかなくてもいいかなぁ…と思っていたのですが、王様のブランチで、西島さんが『地獄の黙示録』のアクションチームがフィリピンロケのアクションをトップで指揮したと仰っていたので、俄然行く気になり最終で行ったのあります
『地獄の黙示録』へのオマージュが散りばめられていたので、そのヒントを得てとても観やすかったというのがありました。先月、爆音上映で観たので記憶に新しかったのもあり、ラッキーでした

ダルマを演じるたけしさんのフォルムが、ジャングル奥地に自分の王国を築いた、カーツ大佐にソックリ…‼あれはワザと似せているに違いない…。あのラスボス感…
ハードボイルドでポーカーフェースな西島さん演じる倉木は、カーツ大佐の暗殺を命じられるウィラード大尉と重なるわ重なるわで
『地獄の黙示録』もストーリーがあるようなないような…混沌とした感じだし
『MOZU』も、正義と悪という境界線が混沌としていく様が面白かったです。
そして、MOZUシリーズにはドラマ版から北斗の拳のような印象を持っていますが、劇場版もまたさらに

登場人物の不死身さ
汚れても汚れてもまた同じような感じの倉木の服装…ケンシロウと同じ…
女の色気には眉一つ動かさない倉木の感じ
極たまにニヤリと笑う倉木…これがたまらない
ユリアを探し続けるケンシロウと真実を追い求める倉木が重なる……いや笑ってはイケナイ‼…
マミヤにつれないケンシロウと真木さん演じる明星美希につれない倉木が重なる…
また、御都合主義的な展開とかもでも私はそんな感じが好きですけども‼

とまあ、そんなわけで、劇場版MOZUには大満足なのでした。西島さんのアクションにもシビレたし、松坂くん×池松くんのアクションにもシビレたし、伊勢谷さんや長谷川博己さんの演技にもシビレたし、真木さんがちょっとふっくらして、明星のハードボイルド感が薄れて倉木に恋する乙女ちっくな感じにもなんだか幸せを感じたし、相変わらず香川さん演じる大杉の人間味にホッとして、たけしさんの存在感に震えて、あっという間に時間が過ぎました

それにしても、運動神経のある俳優さんばかりで、見応えがありました。吹き替えなしなのですから、本当に凄い‼
そいでまた、文芸映画が似合う俳優さん達なので、内向的なエネルギーやクールぶりが漏れつつ、キレッキレのアクションをする‼‼…というところに、もうただただ感激したのでありますっ‼

また劇場で観たいです


西島さんがこの2年間、MOZUの中で倉木としてブレずに存在したことにもじんわりしました。人を食ったような意表を突く演技が魅力的だった西島さん、そしてCUT以降の徹底的な役作りをするようになった西島さん。尊敬するたけしさんから、もう壊したらという助言を得て、いったいこれからどんな風になっていくのか。とってもとってもワクワクします
公開を控えている映画もありますし、本当に楽しみです



『脳内ポイズンベリー』(2015)

2015年05月13日 | 西島秀俊さん☆映画
『脳内ポイズンベリー』(2015)

監督佐藤祐市
真木よう子
西島秀俊
神木隆之介
吉田羊
浅野和之 ほか

【作品レビュー】
テレビドラマ「失恋ショコラティエ」などで知られる水城せとなの人気コミックを実写映画化。7歳下の男性と年上の男性とのややこしい関係に苦悩するアラサー女性の脳内世界で、さまざまな役割を持つ脳内会議メンバーが討論を繰り広げるという異色の設定で描く。ヒロインは真木よう子、彼女の脳内世界で会議を取りまとめる議長役にテレビドラマ。(Yahoo!映画より)

【感想レビュー】@theater
やっと観ましたー

もとよりそんなに期待せずに観に行ったのでそこはまぁ…

良かったところは、SPやMOZU、他の映画などで硬派なイメージの真木さんがとってもとっても柔和で可愛いかったこと!
そして真木さんの恋する相手、早乙女を演じる古川雄輝さんが役にハマっていて良かったこと。

浅野さんの眉や口髭もコメディちっくで可愛らしい。

西島さんの議長らしくピシッと伸びた指先や翻弄される感じは面白かった

そして、古川がイチコに年齢の事を言ったくだりは面白かった。脳内会議で議論になり、負の変化を遂げ様々なバージョンが映像で映し出される。スクリーンの上下になる画は漫画ちっくで良かった


しかしながら私には吉田羊さんの演じるネガティブがどうにも受け付けない。ネガティブだが同時にヒステリー。…ネガティブな事をヒステリーに喚き散らす…演出かもしれないけどなんだかなぁ…。(ちなみに他の作品の吉田羊さんは好きだったりします。)

心象風景がガラガラと崩れるくだりは無駄に長いように感じてしまった。
…というより無駄なシーンは元々多い。
それはイチコがダラダラと悩むキャラなので脳内会議でダラダラと無駄な時間が流れるのが致し方ないのは分かるのです。

けれどもやっぱり色んなところが長いかなぁ。面白くなり始めるとテンポが停滞し、また面白くなり始めると停滞するところがなんともはや…。

公式の動画で面白いシーンを幾つも流してしまっているのも勿体無いように思ったけど、大人の事情で仕方ないことなのでしょうかねぇ…

脳内会議で最後に議長が導き出した答えさえ、事前に動画で知ってしまっていたのはちょっと残念であったが…。
かくして西島さんは映画やドラマで、核となるテーマに直結する台詞を言う事が多い。それはファンとしてはとっても嬉しいことです
この台詞を西島さんに言わせたいと思った作り手の方がいたという事がなんだか嬉しいのです

しかしこの映画…事前に動画でザックリ全体像が分かってしまうので、ストーリーにはハナから重きを置いていないのかも。

真木さんの可愛らしさと豊満なバストを愛でる映画でもありマス
そして暇つぶしの恋愛にピリオドをつける処方箋か…




『三年身籠る』(2005)

2014年07月20日 | 西島秀俊さん☆映画
『三年身籠る』(2005)

監督・脚色:唯野未歩子
冬子:中島知子
徹:西島秀俊
緑子:奥田恵梨華
海:塩見三省
桃子:木内みどり

【作品概要】
女優の唯野未歩子が初監督を務めたファンタジー。3年もの間、妊娠し続けた女性と、彼女を取り巻く人々の騒動をユーモラスにつづる。

【感想レビュー】
面白いシーンの数々を、たまに思い出してはフフフと笑ってしまう作品です

初めて観た時は、ファンタジーと分かりながらも、そして随所のユーモアを楽しみながらも、妊娠の扱い方に、生理的に…倫理的に…?、違和感を感じてしまったのですが、観ていくうちに作品のテーマが伝わってきて、そこは越えられました

冬子が、祖母と母と妹と、食卓を囲む様子は、実に印象的です。彩豊かな料理の数々。会話の中身。そこからは、男性の介入を許さない何かを感じさせます。
徹が冬子に作ってあげる料理が並ぶ食卓と対照的で面白かったです。
メンチカツやゴーヤチャンプルー

実家の祖母や母は、なんだか徹を軽視していて、それは徹というより、男性を軽視しているところからきている空気なのでしょうけど、自分がやられたら不愉快だなぁ…と思いながら観ました
そして、冬子を迎えに来た徹に、開かなくて不便していたビンや缶が所狭しと並べられたトレーをいそいそと目の前に置くシーン
徹さん、凄いハイペースで蓋を開けていくシュールなシーンですが、あぁ口元に不機嫌が表れていますね

そして、女系家族の環境で育った冬子は、『お父さん』に手紙を書き続けます。徹は、途中からそれが自分に宛てられたものとして受け取っていますけど、あれはどうなのだろう…。違うような…解釈ですけども。

冬子を演じる中島知子さんの何とも言えない表情と、西島さん演じる徹の無邪気さとが化学反応を起こしている奇妙でユーモラスな映画です