☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『ブンガワンソロ』(1951)

2021年01月01日 | 邦画(クラシック)
『ブンガワンソロ』(1951)

監督: 市川崑
出演者:池部良、森繁久彌、伊藤雄之助、藤田進、久慈あさみ、若山セツ子、小沢栄太郎

【作品概要】
灼熱のジャワで三人の脱走日本兵と美しいジャワ姉妹が繰り広げる悲哀の物語に、脱走日本兵と日本軍軍曹、憲兵隊たちとの死闘が絡むロマン大作。

【逸話】
監督に市川崑の名が記されているが、実は劇中の半分以上は別の監督が撮っている。当初、市川は演出の必要性上海外ロケを念頭に置いて新東宝と撮影交渉を重ねていたが、スケジュールの延滞に加えて封切り日を繰り上げたい新東宝側が別の監督に撮影させ、編集も無断で行って完成させてしまった。市川は監督協会に訴えたうえで新東宝に監督のクレジットを外すよう要望したが認められず、結局は本作を生涯鑑賞することなくこれを契機に東宝へ移籍することになる。(Wikipediaより)


【感想レビュー】
『破戒』に続いて観賞
池部良さんづいております。

終戦直前の南方戦線が舞台で、しかも脱走兵と、それに巻き込まれた隊員を描いていて、捕まったら軍法会議にかけられて死罪かもしれないし…のシリアスな設定にも関わらず、けっこう面白いのです、これがまた

久慈あさみさんが、現地のヒロインを演じていますが、お顔の彫りが深くて、まるで違和感がなく…!
モノクロに映えてお美しい…

そして、池部良さんは、もう言うまでもなく格好良いんです、もう本当に、格好良いんです。

精神的にも肉体的にもボロボロの南方戦線で、池部さん演じる深見伍長がジェントルマン過ぎる…


また、途中で監督が変わっているからなのか、なんなのか(上記の逸話参照)、ミュージカルっぽくなるは、騎馬と馬車のスリリングなチェイスで西部劇っぽくなるはで、てんやわんやです。

フィナーレに向けての疾走感!
…からのラストのあっけなさ。
虚を突かれます。。 

市川崑監督は、生涯一度も観賞する事がなかったとの事ですが、このチグハグ感?が楽しめる魅力的な映画でした




『破戒』(1948)

2021年01月01日 | 邦画(クラシック)
『破戒』(1948)
監督:木下惠介
出演者: 池部良宇野重吉、桂木洋子、山内明、小沢栄太郎

【作品概要】
 差別の問題を真正面から取り上げた島崎藤村の同名小説を、池部良と高峰秀子の主演で映画化。当初は東宝で製作が進んでいたが、争議のため製作が中止、松竹が引き継ぐ形となった。監督は木下恵介。  瀬川丑松は千曲川のほとりにある学校で教鞭を取っていたが、自分が被差別の出身者であることを隠して生きていた。父の「決して身分を明かしてはならない」という教えを守り、丑松は親友や思いを寄せる女性にさえ、事実を打ち明けられずにいた。代議士の高柳が丑松と同じ被差別出身の妻をめとり、丑松に「お互いに秘密を守ろう」と言ってきたが、丑松は「そんな女は知らない」と突っぱねてしまう。
allcinema ONLINE(外部リンク)より

【感想レビュー】
もう、もう、もう本当に池部良さんが、終始、超絶イケメンなんですね…

あの髪型は…本当に1948年なのか!?
2021年を迎えた今日、街を歩いていても、あぁ、現代のイケメンな青年ですね、っていう感じで通用する感じなのですが…
池部さん、30歳の頃ですね。
いやはや、そのお美しさは神がかかっております。

そして桂木洋子さんが可愛いらしくて
お琴のシーンがとっても素敵です。

また、けっこうエモーショナルな音楽がずっとバックにかかっていて、メロドラマ感が凄いです。
これはむしろ楽しむところ…?
お芝居なのか、はたまたそういう演出なのかは分からないですが、大袈裟な感じはあるものの、音楽の雰囲気とマッチしているので、調和しています

内容は、自由と平等、偏見と差別という重厚な社会問題を描いているのですが、葛藤する主人公:丑松に寄り添う友人や想い人の存在が温かく、ラストも爽やかで希望が感じられました



ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ(2008)

2020年12月17日 | 邦画(1990年以降)
ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ(2008)

【作品概要】 
“引きこもり作家”として知られる滝本竜彦の同名ベストセラー小説を映画化した青春ドラマ。平凡な高校生が謎のチェーンソー男と戦う美少女と出会い、その戦いに巻き込まれていく。

目的もなく平凡な日々を送る高校生の陽介(市原隼人)は、謎めいた制服の美少女、絵理(関めぐみ)と出会う。彼女はチェーンソーを振り回す不死身の大男と毎晩戦っているが、その理由は分からない。つまらない日々を埋めるように、陽介も“チェーンソー男”との戦いに没頭していくうちに、絵理との距離が近づいていくが……。(Yahoo!映画より)

監督: 北村拓司
出演: 市原隼人, 関めぐみ, 三浦春馬, 浅利陽介, 板尾創路


【作品レビュー】
ペーパービューの配信で見放題に入っていた三浦春馬さんの出演作品というのもあって、観ました。

思いがけず楽しく、ぐいぐい入り込んで観ました。

数分置きに笑えたり、胸が熱くなったりさせられる映画です。

謎のチェーンソー男は、10代特有の心の葛藤の象徴的な存在。

現実とファンタジーの境い目を、多感な高校生達の妄想と現実逃避の日常という設定が妙に説得力をもたらしていて、なんとも面白いです。

関めぐみさんの目力
アクションが格好良いです!

市原隼人さんの表情、台詞のない横顔は映画的な魅力があります

浅利陽介さんが出てくるとホッコリしますし!

三浦春馬さんの演じた青年は…、
とてつもない生のエネルギー故に、命を燃やしてしまうような役どころで、色んな意味で周囲に影響を及ぼすような青年でした。
観ていて、それは現実の三浦春馬さんとどこか重ねてしまって辛くもあるのですが…、
作品はB級っぽさも含めて面白いです!

観て良かったです。


『熱帯雨』(2019) Wet Season @東京フィルメックス2019

2019年12月05日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『熱帯雨』 Wet Season
【作品概要】
シンガポール、台湾 / 2019 / 103分
監督:アンソニー・チェン (Anthony CHEN)

「イロイロ/ぬくもりの記憶」以来となるアンソニー・チェン待望の監督第2作。前作のキャストを再び起用し、中学生と担任の女性教師の間の感情の揺れ動きを繊細に描く。トロント映画祭のプラットホーム部門でワールド・プレミア上映された。
(フィルメックス公式ホームページより)

【感想レビュー】
物語性のある作品で、等身大のシンガポールに潜り込んだような感覚になりながら観ました

俳優陣が素晴らしくて、心の繊細な揺らぎが直に伝わってくるようでした。
中学生役の俳優さん/コー・ジア・ルーは、存在感のある眼差しがとても魅力的でした
なんだか憎めない可愛らしさがあります。
中華武術の技も迫力があって素晴らしく、身体性を伴った彼の魅力もあって、中学生と女性教師との恋という危うい展開を、興醒めせずに観ていられたのかなぁと思います。

上映後のQ&Aによると、俳優の選考にとても時間がかかったようで。
結局、前作『イロイロ/ぬくもりの記憶』と同じ俳優さんになったとお話しされていました。

女性教師役の俳優さん/ヤオ・ヤンヤンの妻の顔、義理の娘としての顔、教師の顔、女の顔…色んな顔にぐいぐい惹き込まれました

現在、シンガポールの中国系の人達は8割が英語を話すらしく、母語である中国語が軽んじられる傾向にあるとのこと。
中国語の教師は、シンガポールでは人材不足で、隣国のマレーシアから補填することもあるそう。
母語の危機は何を招くのか。。

また、介護、不妊治療、家庭不和、あらゆる問題が絡み合っております…

社会全体の危機、家庭の危機が、現代の病であるアイデンティティークライシスを浮き彫りにしていきます。

ただ、生と死の営みは、どんなに高度な文明社会になっても、そこだけは生々しさを持って繰り返されることが印象的でした。

複雑化した問題も、シンプルな選択が明るい未来を予感させるラストに。
熱帯雨の後に晴れ間が覗くように、爽やかなラストでした。

よく考えると、ん?教え子の子?
ん?…
…と、なりますが、まぁ、映画なので…そこは…。



上映後のQ&Aの様子


『水の影』 (2019) Shadow of Water @東京フィルメックス2019

2019年12月01日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『水の影』 Shadow of Water

【作品概要】
インド / 2019 / 116分
監督:サナル・クマール・シャシダラン (Sanal Kumar SASIDHARAN)

マラヤラム語映画界の俊英シャシダランがインドの女性問題を3人の登場人物に凝縮して描いた問題作。若い男がガールフレンドを連れ出し、先輩格の男の運転する車でドライブに出るが……。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映。
(フィルメックス公式ホームページより)

【感想レビュー】
観てから1週間ほど経ちましたが、思い返しては胸が塞いでおります。。

涙、雨、シャワー、川を流れる水、滝壺に激しく落ちる水。
ほぼ全編、あらゆる水の音、それらの表現の多彩さが凄まじい映画でした。

ドライブ中に、若い男が車からガールフレンドのストールを戯に落とすフリをしつこく続けるシーンも、

先輩格の男が川で素潜りして魚をたくさん捕まえ、川岸の女性に向かって次々と投げるシーンも、

女性からしたら苛立ちしかない…。
彼女はただ、ただ泣くばかり。
なすすべもなく泣くばかり。

男性に対する女性の積年の苛立ち、嘆きが比喩的に描かれていました。

そうかと思うと、先輩格の男に酷い事をされたにも関わらず、妙に従順に彼に付いて行く女性も描かれています。

そこには、積年の根深い苛立ちがありつつも、男性に従順になってしまう、あるいはならざるおえない、という病んだ社会の深い絶望を感じます。。

インドの女性達の性の孤独さに思いを致します。

でもこれって…。
現代の日本でもグラデーションこそあれど、ある問題だよなぁと思いぐるぐる考えております

結局、性のことはなかなかオープンにはならないので、どんなに親しい人が悩んでいても、それを察するのは難しい。。

鬱屈した表現が続きますが、116分を感じさせない、最後まで、結局どうなるの!?と、惹きつけられる映画でした