☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『神田川淫乱戦争(R-18 35mm)』 (1983)

2015年09月29日 | 邦画(クラシック)
『神田川淫乱戦争(R-18 35mm)』 (1983)

監督:黒沢清
主演:麻生うさぎ、美野真琴、岸野萌圓、沢木ミミ、森太津也、周防正行、黒沢清

【作品概要】
神田川を挟んだ向かいの家のマザコン少年を救うため、あきことまさみが走る!自主映画で名を馳せた黒沢清の商業映画デビュー作。ゴダール的演出によるピンク映画であり、助監督に水谷俊之、周防正行、塩田明彦が名を連ねた歴史的作品。(シネマヴェーラHPより)

【感想レビュー】@theater
二週間ほど前に行ったのですが…やっとUP。黒沢清監督特集。


意外に面白かった…!です。またしてもサッと事前に作品チェックをしただけでスケジュールを組んで観たので、ここまでいわゆる男女の絡みが多いとは思わなかったのもあってちょっと面食らいましたが…

川を挟んでスクリーンに向かって左側のマンション?の住人の女とその女友達。精神的に鬱々としている様子はなく、かといって空虚というような闇は皆無。ただただ、求められるままに恋人と肉体関係をもつ日々を送っている。暗いというわけでもないし空っぽというのとも違う感じ。なんだろう。面白いことは求めていそうな感じ

どなたかのレビューに“ノンポリ”とあって、あぁなるほどとしっくりきたのですが

また女性の描き方に、男性が感じる女性の怖さを感じたりしました。。
いいムードだったのに、次の瞬間には笑うことができたり、怒ることができたりする気分屋っぽい感じとか。


そして、青年のマンションはスクリーンに向かって右側。過度な受験勉強を母親に押し付けられる青年。権威絶対主義的な窮屈な感じ。青年がフルートを道化師のような動きで吹く。この動きがまたじわじわと効いてきます。そいで母と近親相姦になるのですが…。あれよあれよとトンデモナイ方向に展開していくストーリー


あらゆる絡みのシーンは、もういいだろう、次のシーン早く来て…と思うほどに毎度少しずつ長く…、そして冷静に思ったのが、モザイク無しでも決して大事なところが見えないような密着度や角度がもはや凄い技でありました
(にも関わらずラストのモザイクには笑ってしまったが…!)

全体的には、何だか意味があるようで無いような感じもあり、そこが面白かったです

『百円の恋』(2014)

2015年09月19日 | 邦画(1990年以降)
『百円の恋』(2014)

監督:武正晴
出演者:安藤サクラ、新井浩文

【作品概要】
32歳のパッとしない女性がボクサーとの出会いから、毎日をサバイブしながら恋愛とボクシングに目覚めていく姿を、安藤サクラが演じた人間ドラマ。(Yahoo!映画より)

【感想レビュー】
WOWOWの録画で観ました。
いやぁ~本当に凄かったです‼ただいま感動中です

中心の二人だけでなくて、家族はもちろん、ちょこちょこ出てくるコンビニやボクシングジムの登場人物たちさえも鮮やかに息づいていて、断片だけど、生身の人間としてリアルに感じました…

安藤サクラさんや新井さんの演技や存在感が凄いのは言わずもがなですが、実際に俳優の肉体の変化を通して伝わってくるものに、ひたすら感動し夢中で観ました
映像越しでもビシビシと
やっぱりそこはリアルだからかなぁ。

サクラさんの、まるでダンスのステップを踏むような軽快で俊敏な動きのシャドーボクシングは絶品すぎたぁ

うっすらとそしてゆっくりと、でもじわじわと前に進んでいく再生物語。
観たあと、心に温かいものが広がる素敵な映画でした


『それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』(2013)

2015年09月17日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』(2013)

監督:タラール・デルキ

【作品概要】
サッカーボールを銃に持ち替えた青年。非暴力を貫きカメラで記録し続ける青年。戦争のなかに生きるシリアの若者たちを追ったドキュメンタリー。

2011年に始まった「アラブの春」と呼ばれる民主化運動の波。その影響を受け、シリアでも2人の青年が立ち上がった。サッカーのユース代表チームでゴールキーパーとして活躍していた当時19歳の青年バセットは、そのカリスマ性から若者を惹きつけ、平和を訴えるシンガーとして民主化運動のリーダーになっていく。彼の友人で、有名な市民カメラマンである24歳のオサマは、デモの様子を撮影し、インターネットで公開することで、民主化運動を広げようとする。バセットは歌で、オサマは映像で、それぞれ非暴力の抵抗運動を先導していたものの、2012年2月、政府軍の容赦ない攻撃によってホムスで170人もの市民が殺害されたのを機に、バセットと仲間たちは武器を持って戦い始める。彼らはなぜ戦い続けるのか、生きることとは、戦争とは、ふるさととは……。シリアの民主化運動の中で生きている人々の“リアル”を映し出した作品。(アップリンクHPより引用)

【感想レビュー】@theater
ずっと観なければと思っていた作品にようやく行って参りました!シリア内戦を少しでも知ることができたら…。
始め…アラブの春の頃、立ち上がった若者たちはキラキラしていた。熱をもった群衆は肩を組んで輪になっては大声で合唱していた。
民主化リーダーのバセットという若者は、アジアでも二番目のキーパーで有望な選手だったそうだ。彼は扇動がうまい。コーラン調の即興のような自作の歌も、うまい。そして見た目の美しい青年だ。そんなバセットの類まれなるリーダーぶりは、若者達をさらに熱狂させたのだろうと感じた。
若者達はアサド政権を倒して自由を手に入れると、固く信じている。一方、そんな若者達に年長者たちは言ったそうだ。アサド政権をあまくみてはいけない…と。年長者たちはアサド政権の怖さを知っているが、若者達はよく知らなかったのだ、と振り返るナレーション。

そして、バセットが民主化リーダーをするのも、始めの二、三ヶ月であれば元に戻れたという。アサド政権がバセットに取り引きをもちかけたのだ。国営放送(確か)で、自分が間違っていたと謝罪すれば、またサッカー選手に戻してやるよ、人気になれるよ、と。
でも彼は、冗談じゃない、そんなものなら自分のやり方で手に入れられる、と突っぱねる。

政府が、戦車を出して国民を爆撃する。反撃をした若者だけではなく、平和の言葉を掲げるカードを持って訴えた若者も、撃たれて亡くなった。
死者がたくさん出る。若者達が応戦する。平和の為の集会や歌は、いつしか武器に取って変わっていった…。その変化は自然な成り行きのようであり、しかし結局は民主化や平和を望む意志と相反することでもある…。
彼らのグループの中に、武器ではなくカメラを手に記録し発信する事で闘う青年オサマがいた。彼のような選択をできるだろうか。

このような状況下で、自分だったらどうするのか?どういう行動をとるのか?とるべきなのか?心では違うと思っていても、鳴り止まぬ爆撃音の中で、恐怖心から武器を手に取りはしないだろうか?

身につまされる思いがする…。

街はアラブの春の頃とは様変わりし、破壊につぐ破壊によって、瓦礫の山が広がる。とても人が住めたものではない。市民が通りに出ると、政府の狙撃手や戦車からの攻撃を受けるので、連なった家々の壁を壊して中を通って移動する。 ここに暮らしていた人々はいったいどこへ行ったのか…。
爆撃に巻き込まれて命をおとした人もたくさんいるだろう…。命からがら逃げ出した人々は今どこにいるのだろう。国を脱出し難民となって新地を求めている人もいるだろう。シリアで息を潜めて暮らしている人もいるのだろう。留まるにしろ脱出するにしろ、深刻な状況である事にはかわりない。

これは対岸の火事なんかではない。すべてはとっくに繋がってしまっているのだから。
難民に対してできることを考えたい。こういった映画を観て知ることやたとえ僅かな寄付だったとしても…。

89分の作品。爆撃音のしない時間の方が少なかった…。