☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『そして人生はつづく』(1992)

2016年10月29日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『そして人生はつづく』(1992)

監督:アッバス・キアロスタミ
脚本:アッバス・キアロスタミ
製作:アリ・レザ・ザリン
出演者:ファルハッド・ケラドマンド、プーヤ・パイヴァール
撮影:ホマユン・パイヴァール
編集:アッバス・キアロスタミ、シャンギズ・サヤード

【作品概要】
「友だちのうちはどこ?」(1987)に始まり、「オリーブの林をぬけて」(1994)で完結するアッバス・キアロスタミの“ジグザグ三部作”の二作目。イラン北部を襲った大地震により崩壊した村を舞台に、「友だちのうちはどこ?」の出演者兄弟を、キアロスタミ監督とその息子が訪ね歩くという設定の中、村の人々の姿をドキュメンタリー・タッチで映し出していく。

【感想レビュー】@theater
1990年のイラン大地震の直後が舞台。ドキュメンタリー風だけど、物語なんです。
『友だちのうちはどこ?』に出演していた職業俳優ではない子役の少年が無事なのか、監督とその息子が会いに行くというストーリー。

テヘランから地方の村コケルまで、その道中に色々ありながらも車で移動する物語

でも、監督役はご本人ではなく俳優さんが演じています。

テヘランからは遠く、道も地震で寸断されていたり、その道のりは遠い。
息子を演じる少年の無垢さがとても良かったです
被災地に行くのに運転する父の後ろから、無邪気にサッカーの話をしたり、トイレに立ったらバッタを捕まえてきたり。微笑まし過ぎる

父も、わきまえなさいなどとは言わず、淡々とドライブは続きます。

やがて車は被災地を走る。

壊れた家。

物が散乱した家屋。

分断された道路。

テントで生活する人もいれば、散乱した家を片付けながら暮らす人もいる。

そんな被災地に住む人々。

しかし大変な変化がありながらも、日常を淡々と生きている人々。

こういう描写、3.11以降は敏感になってしまいます…。

それでも。

車は走っていきます。

『そのルートは道が壊れているから通れないよ』

幾度も行き方を尋ね、幾度もこう言われる監督…

ネバーギブアップなのだ。淡々と。


そして、じわっ…とくる辺りで、“これはあくまで撮影なのです。事実でもあるけど、虚構なのです”
といわんばかりに、演者がカメラの後ろにいるスタッフに呼び掛け、さらに応答の声が差し込まれる…

い、今じわってきてたのに…

こんな調子で、キアロスタミ監督に観ている方はしてやられっぱなしなのであります

映画が虚構であるという考えの最たるものですね

しかしこれ、このテイストで突然されるとビビる…。でも、だからこそ誠実なのですよね。ふむ。


急な斜面のジグザグ道を、懸命に車は上っていく。

上っては、上りきれなくて落っこちてきて(‼︎)、それでも懸命に。


壊れた家の向こうにオリーブの林が見える。


美しいオリーブの林。


説教臭くもなければ、お涙頂戴でもなく、時に映画の表と裏を映し出し、ふいに胸を熱くさせられる。

そんな映画でした


観れて良かったー





『この広い空のどこかに』(1954)

2016年10月29日 | 邦画(クラシック)
『この広い空のどこかに』(1954)

監督:小林正樹
脚本:楠田芳子
出演者:
主人・良一:佐田啓二
妻・ひろ子:久我美子
妹・泰子:高峰秀子
弟・登:石濱朗
母・しげ:浦辺粂子
信吉:内田良平
信吉の妹・房子:小林トシ子
俊どん:大木実
三井:田浦正巳
音楽:木下忠司
撮影:森田俊保
【作品概】
川崎で酒屋を営む一家を背景に、その一家の生活、戦災で足が不自由になった義妹らとの確執を描く小市民映画。妹と姑の生活も描く。

【感想レビュー】@theater
ユーロスペースの“生誕100年 小林正樹映画祭 反骨の美学”特集、1本でも観たいと思っていたので、観れて良かったです

【人生の不条理と人間の運命に対峙し続けた男、小林正樹
世界的巨匠の生誕100年、没後20年記念特集上映】
という特集のサブタイトル?に観たくてソワソワとしておりました

小林正樹監督の作品は、『東京裁判』しか観てないと思う。。

『この広い空のどこかに』は、佐田啓二さんが出てるし特に観たいと思っていました←ここ最近、イケメンを目の保養にしている…。


もうもう大満足でした

観始めた時は、嫁vsお姑&小姑の攻防に辟易しつつでしたが…

佐田啓二さん演じる長男役が格好良いんですねぇ(見た目だけでなく…!)
商売をしながら家族皆を養っている。母、妹、弟、嫁。そして、妹や弟の心配、嫁の実家に仕送りの積立をしていたり。もう全方向に心を配っています。
この価値観、1954年の時代背景を鑑みると納得であります。ひぇ〜‼︎とは思いますが…

現在でもこういう価値はありますけど、全体的には個人の主体性が尊重されているし、映画からは、窮屈さとその一方で、まだまだ戦後復興の過程で貧しかった日本を感じました。

そして、経済成長していく中で、家、家族の在り方がどうあるべきなのかを問う、そんな空気も感じました。

母、兄夫婦、妹、弟の世代間の考えの違いなんかも丁寧に描かれていて見応えがあります

都会では人口増加が激しく、取り残されないように一人一人が必死に生きている、そんな感じ。
復興過程の街並み、バイク二人乗りシーンの爽快感さ、二つのお菓子箱。

そんな中、故郷に帰る者、豊かな自然の中で暮らす決意をする者もいる。

映画の中では、悩みながらも最終的にはどちらも前向きな選択に描かれていますが、現実はそんなうまくはいかなそうな気も…。

でも、世の中が殺伐としていると、この映画のような明るさを欲するのかもしれないなぁとも思いました

私にもボール当たらないかしら👀


弟役の石濱朗さんが、菅田将暉くんとソックリでビックリしました


それにしても。

劇中のやり取りにあったのですが。
恋愛結婚だから嫁が夫に甘えて、夫の家族に礼をつくさなくなりがちなのだ、とか…。
じわじわ効いてきてぶるぶるしております…




『トスカーナの贋作』(2010)

2016年10月25日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『トスカーナの贋作』2010年/フランス・イタリア/カラー/106分

監督:アッバス・キアロスタミ
脚本:アッバス・キアロスタミ、マスメ・ラヒジ(脚色)
撮影:ルカ・ビガッツィ
出演者:彼女 - ジュリエット・ビノシュ、ジェームズ - ウィリアム・シメル

【作品概要】
イタリアの南トスカーナ地方で出会った男女が、夫婦に間違われたことから始まるラブストーリー。『桜桃の味』で第50回カンヌ国際映画祭パルムドールに輝いたアッバス・キアロスタミ監督が初めてイラン国外で撮影した本作は、本物の夫婦のふりをしているうちに互いの心情も変化していく一組のカップルの恋物語を映し出す。妻を、本作で初のカンヌ映画祭女優賞を受賞したジュリエット・ビノシュが、夫をイギリスのオペラ界を代表するバリトン歌手のウィリアム・シメルが好演。名匠ルカ・ビガッツィによるトスカーナの絶景も見ものだ。

【感想レビュー】@theater
こんなに台詞が多くて、感情の起伏も激しくて、そしてなんといっても美男美女が出てくるキアロスタミ監督の作品もあったのですねぇ…!
衝撃…

少し人生にくたびれた中年の悲哀と、でも、まだまだ生々しい男女の空気を感じさせる二人。

とっても面白かったです

畳み掛けるように場面が変化していき、息つく暇もありません


タイトルの“贋作”のように、知らない間柄のはずの二人は、いつの間にか倦怠期の夫婦のように振る舞い始める。
このスピーディーさ…!😳

二人のドライブは延々と続き、ハンドルを右に切り左に切り、車は進む。そして行く先々でワーワーと口論するのだ
もうエゲツないほど…!

道や車や、人生の描写は他の作品にも共通するものかと思いますが、男女や夫婦という設定が新鮮でした

ウィリアム・シメル氏が渋くてカッコよかった

トスカーナの街並みは美しく、なんかもう観ていて惚れ惚れとしました



『桜桃の味』(1997)

2016年10月24日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『桜桃の味』1997年/イラン/カラー/98分

監督:脚本:製作アッバス・キアロスタミ
撮影:ホマユン・パイヴァール
出演者:ホマユン・エルシャディ、アブドルホセイン・バゲリ、アフシン・バクタリ

【作品概要】
“自殺”を通して生きることの意味を語る傑作。


【感想レビュー】@theater
キアロスタミ監督の追悼上映特集、『キアロスタミの全仕事』に行って参りました。
平日なのにとても混んでいました。
ソフト化されている作品も多くはないので、上映の機会があるとやはり混むのですね📽

『桜桃の味』
時間が経つにつれて、じわじわと感じ入るものがあります。
98分間一貫していて、死にたい男がそのちょっとした(‼︎…本人はそんな感じでお願いする)手伝いをしてくれる者、を探すというシンプルなストーリーなのです。
キアロスタミ監督ならではの、“ジグザグ道”はもちろん健在
緩やかに見えたけども。

もう、うんざりするほど、行ったり来たりです。

“道”も。“人生も”…


クルド人も出てくるし、アフガニスタンやトルコなど、周辺の国から来てイランに暮らす人々も出てきます。それは、イランに暮らす人々にとっての日常なのだろうなぁ。

周辺の国で起きる事があまりにナチュラルに入り込んでくる環境に思いを馳せつつ。

でも、彼らとの出会いは主人公にとっては大した意味を持たないようでいて、いや、でも段々と変化していくようでもありました…

骨太で簡潔なテーマの一貫性と、豊かな描写のグラデーションに舌を巻きます。

動いていないようで、確実に動いているような。

こうして、強い一貫性を保った映画を観ると、数日経っても消えない侵し難いイメージが確立されていくのですね

確実に人生は続いていくのだ…という普遍的なメッセージを受け取りました。主人公の表情と、ラストの演出と。


ふと現実に心を配ると、果実は甘く、夕景は美しく、人は温かい。

何処でも、彼処でも。


キアロスタミ監督作品の必修(‼︎)ようやく観れました




『續 青い山脈』(1949)

2016年10月17日 | 邦画(クラシック)
『續 青い山脈』(1949)

東宝=藤本プロ/白黒/スタンダード/1時間23分

■監督:今井正
■原作:石坂洋次郎
■脚本:今井正、井手俊郎
■撮影:中井朝一
■音楽:服部良一
■美術:松山崇
■出演:原節子、木暮実千代、池部良、杉葉子、伊豆肇、龍崎一郎、若山セツコ、藤原釜足

【作品概要】
町をあげた恋愛騒動の行方はいかに…?原は、本作と『晩春』『お嬢さん乾杯』の演技が評価され、毎日映画コンクール女優演技賞を受賞。軽快に自転車に乗る、あの有名すぎるシーンをぜひスクリーンで!

【感想レビュー】@theater
同日に続けて後編も観ました

おかげで前編と後編が混同して記憶してしまっていたりもしますが…

ある女生徒のちょっとした嫌がらせがあれよあれという間に大きくなってしまい、池部良さんと杉葉子さん演じるちょっと良い雰囲気の二人のことが大問題になってしまいます。
そのことで、原節子さん演じる教師は頭の固い皆さんを相手に奮闘するのですが、そのPTA会議のような時に、男性側の池部良さんことは特に言及されなかったような…
まぁ、まぁそうだろうけども…。

でもこの会議、かなりウィットに富んでいて面白かったんです

それで、そのユーモアのポイントなんかも確かに古典的ではあるものの、別に現代にも通ずるもので、なんだか普遍的な空気感のシーンでもありました。


ラストの自転車を皆で漕ぐシーンなんて、もう、もう青春爆発‼︎…なシーンでした🚲🚲🚲

『青い山脈』。歌とは裏腹に普遍的な青春映画でした。みんな、若い日がある。そして年老いるのだなぁと改めて感じ、しんみりしつつ…。でも、映画ってその瞬間の生を捉えるのだから、すごいよなあぁあぁと感じ入りつつ、高揚したまま神保町シアターを後にしました