☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『潜水艦イ-57降伏せず 』(1959)

2015年07月24日 | 邦画(クラシック)
『潜水艦イ-57降伏せず 』(1959)

監督:松林宗恵
脚本:須崎勝彌、木村武
出演者:池部良、三橋達也、平田昭彦
音楽:團伊玖磨
撮影:完倉泰一
編集:黒岩義民
配給:東宝

【作品概要】
太平洋戦争における日本の敗北を目前に控えた昭和20年の初夏、河本艦長(池部良)率いる潜水艦イー57は某国の親日派高官父娘を乗せて極秘裏に和平工作を図るべく、カナリー諸島へ向けて出航した。乗組員の多くは徹底抗戦を主張し、和平にも否定的だったが、敵との遭遇などさまざまな困難を経て皆の意思はひとつにまとまっていく。しかしやがてポツダム宣言が発令され……。(Amazonレビューより抜粋)

【感想レビュー】
迫力が凄かった…!

臨場感のある特撮シーンの数々。
それを盛り上げる音楽。
池部良さんの海軍の白い軍服姿にはため息ものだった…
お一人だけ違うんです、、。


潜水艦内の描写はリアルで、乗組員達のやり取りや人間関係に思わず惹き込まれてしまう。

冒頭の人間魚雷のシーンはいとも簡単に…そう本当にいとも簡単に終わり、場面は流れていくが、艦内から様子を見ていた河本艦長をはじめとする乗組員達が、命中したあとに無言になる瞬間には身につまされる思いがした…。
同じように最期、乗組員達が浸水してくる海水をなす術もなく見つめ、もはやこれまでかと一瞬無言になるシーンにも言葉を失う…。

こういう描写がわりとアッサリで、『さらばラバウル』もそうだったけど、その時代の空気を逆にリアルに感じます…。

和平工作の密使、某国の謎の高官とその娘のくだり。娘が艦内に降りて来た時の乗組員達の反応もリアル…
スカートの裾からスッと伸びた足とそれを支えるヒール👠、細い細いウエスト、ふわっとカールされた長い髪。
艦内の奥へ奥へと仕切りを越えて進む娘を後ろからずうっと追い掛けていくカメラ。
長い航海生活で女性に飢えた乗組員達の生唾を飲む音が聞こえてきそうなリアルな描写だった。
でもここはちょっと茶目っ気のある感じだった

料理担当が厨房のネズミを捕まえるシーン、飼っている猿のシーン、魚雷に娘の名前をつけているといい皆で戯れるシーン。
過酷を極める任務とは裏腹にウィットに富んだシーンの数々が印象的だった。

潜水艦物のというと、この作品の2年前の『眼下の敵』も痺れたけど、日本の潜水艦物でここまでグッときたのは『潜水艦イ-57降伏せず 』だけかもしれない。



『勲章』(1954)

2015年07月20日 | 邦画(クラシック)
『勲章』(1954)35mm
監督:渋谷実

主演:小沢栄、香川京子、佐田啓二、永田靖、東山千栄子、岩崎加根子、岸輝子、東野英治郎、松本克平、千田是也、菅井きん、岡田英次、三戸部スエ、杉村春子、東恵美子、鶴丸睦彦 、永井智子、小沢昭一

家族から疎まれる元陸軍中将・岡部は、元部下から再軍備運動のリーダーに担がれて莫大な借金を背負い…。当時の社会を騒がせた再軍備の動きと、権威主義的人間への渋谷の痛烈な批判が響く。後生大事にする勲章ともども、岡部がたどる余りに悲惨な運命に茫然。©仕事(シネマヴェーラHPより)

【感想レビュー】@theater
元陸軍中将が再軍備運動のリーダーにと担がれるも時代錯誤といわれ自我を崩壊していく様が強烈なお話しでした。。

戦後、もう一度再軍備の時代が来るのではないかと、郷には帰らず親戚の離れに身を寄せる鬱屈とした日々を送る元陸軍中将。小沢栄さんの振り切れ方が凄くて惹き込まれる…

その息子役を演じる佐田啓二さんのどこか投げやりで排他的な態度は、彼の身目形が美しければ美し過ぎるほど、哀しく映る…

結局、権力主義の父と非権力主義の息子は共倒れし、自らの幸福を追い求めた娘だけが未来を手にする。
娘役の香川京子さんが美しくて美しくて悶絶

権力主義をことごとく斬っていく痛快ぶりに始めは笑えたけど、再軍備とか…。これを遠い昔と一蹴するには今の日本には我が身過ぎて笑えなかった…。

あと、東山千栄子さんの早口にもびっっくりしました…

『バナナ』(1960)

2015年07月17日 | 邦画(クラシック)
『バナナ』(1960)(35mm)
監督:渋谷実
主演:津川雅彦、岡田茉莉子、尾上松緑、杉村春子、伊藤雄之助、小池朝雄
【作品概要】
華僑の御曹司で大学生の竜馬と、バナナ仲買人の娘でシャンソン歌手志望のサキ子。恋人同士の2人は、車欲しさにバナナ輸入の商売を始めるが…。竜馬のグルメ・パパ役の尾上松緑がいい味を出している。裕福でモダンな華僑家庭を背景に、とぼけたバナナ騒動を描く都会派コメディ。©1960松竹株式会社(シネマヴェーラHPより)

【感想レビュー】@theater
開始時間だけチェックして作品概要を知らずに観に行ったので、冒頭から衝撃…
こういう観方がけっこう好きです

まさに…“とぼけたバナナ騒動”…‼
戦後15年、戦争の記憶の薄い若者世代と激動の時代を経験した親世代。
この時代の若者のといえば、全学連の活動に身を投じるイメージがあるけど、実はそんな事ばかりでもない、みたいなのが垣間見えて面白かったです。
私の父なんかも、学校が閉鎖して行けないから牛乳配達のバイトやなんやかやに明け暮れたと言っていたし…。
そりゃそうなのですよね、皆が皆デモとかしていたわけではないし…!


カラーで観る津川雅彦さんの若かりし頃はうんと肌が綺麗で、しかも空手の型やピョンって高い塀?を跳び越えるアクションとか、殴り合いのシーンとか色々あるのでビックリしました…!


チャキチャキした小生意気な娘を岡田茉莉子さんが演じ、ポンポンと出るちょっと憎たらしい台詞とルックスの可愛さに悶絶しつつ観た…

黒いブーティ×短め丈の黒いパンツという組み合わせや男性のビシッと分けた髪型などが、ここ数年の流行と同じで新鮮に感じられて楽しかったです


尾上松緑さんの優しい笑顔と愛らしいルックスに癒され、杉村春子さんが妙に女性っぽく…(‼)、宮口精二さんのごうつくばりぶりに苦笑してしまう。

それにしてもクラシックカーが凄く格好良かった…!







『予告犯』(2015)

2015年07月13日 | 邦画(1990年以降)
『予告犯』(2015)

監督:中村義洋
出演者:生田斗真
戸田恵梨香
鈴木亮平
濱田岳
荒川良々

【作品概要】
「ジャンプ改」で2011年から2013年にかけて連載されて人気を博した筒井哲也のコミックを実写化したサスペンス。。法では裁けぬ悪や罪をネット上で暴露し、その対象への制裁を予告しては実行する謎の予告犯シンブンシとエリート捜査官の攻防が展開する。(Yahoo!映画より抜粋)

【感想レビュー】@theater
うーん!これは面白いしよく出来てるしなんか色々と凄かった!…とかなり観賞後にテンションが上がりました

(原作は読んでいません。WOWOWは録画したのはまだ未見です。)

近年の日本の闇を羅列しながらも、どこかフワッとした空気感。
そこからは、社会派の手堅い作品と言われるのだけは拒むような意地も感じた。こういう題材でポップなエンターテイメントに落とし込む方がよっぽど難しそうなのに←(偉そ…)…凄いっ
なんだかとっても人間ドラマな作品でした
愛を知って育った者。愛を知らずに育った者。愛を捨てる者。愛を拾う者。

登場人物達は、皆一様に光と影を持っている。人生の浮き沈みなど、すべては表裏一体のことで、それは木の葉のようにいとも簡単に裏返ってしまう。。
頑張れる者と頑張れない者の対比、さらに女性の逞しさや男性の女々しさの対比も面白かったです

“頑張ることが出来る者ばかりじゃない”
“頑張ることが出来た幸せ”…こういったニュアンスの台詞にグッときました。

そしてなんやかやポップにしておきながら、ラスト気付いたら泣かされてた

そして現代社会の闇をあれこれ羅列しながらもフワッとしている造りは、ポップに落とし込むのが狙いなだけでなく、そういった現実を、私も含めて多くの人がニュースで知っていても、また、仕事で関わる事があったとしても…結局は日常生活においてどこか他人事、遠くの事と感じている…そんな空気感を演出しているように思えてならなかった。…←ここが一番この作品に恐れいったところです!

それにしても…窪田くん、いいところ持ってったなぁ





『戒厳令』(1973)

2015年07月12日 | 邦画(クラシック)
『戒厳令』(1973)

監督:吉田喜重
北一輝:三國連太郎
妻すず:松村康世
兵士:三宅康夫

【作品概要】
 別役実の脚本を吉田喜重が監督し映画化。北一輝の思想が大きな広がりを見せ、ついには一輝自身がその思想に押しつぶされてしまう。長谷川元吉の撮影、一柳慧の音楽が強く印象に残る。  北一輝の著書「日本改造法案」に影響を受けた朝日平吾という男が、安田財閥の当主を刺殺し、自身もその場で自殺した。彼の思想に影響を受ける若者が増える中、五・一五事件が起こるがクーデターは失敗。青年将校たちはますます混迷を深める社会情勢を改善すべく、「日本改造法案」を元に武装蜂起を企てる。そして2月26日にクーデターを起こすが、またもや未遂に終わってしまう。
allcinema ONLINE(外部リンク)

【感想レビュー】
観終わってから数日。あまりに凄くて消化に時間がかかっています。…まだ消化出来ていません

世界観が怖かった…というのと、画の構図が冷酷なまでに美しく、それがまたその怖さに拍車を掛けるのと、ラストの北一輝を演じる三国連太郎さんの台詞のシュールさに、この作品の中で初めて笑い、しかしその直後にまた固まる…という表情筋の持って行き場に戸惑う作品でした

相変わらず遠近感のある構図が随所に散りばめられた隙の無い画にうっとりします
冒頭の、立派なお屋敷の塀の所とか。

“戒厳令”というだけあって、終始あらすじ、展開、台詞のやりとりに、ぴーんと張り詰めた空気。

北一輝は、右眼が義眼だったそうで。三国連太郎さんのその表現が本当に凄かった…。視えない右眼は焦点が合わず辺りを漂い、先の見えない日本の未来に観賞する側もただただ不安が増幅されていく…。

音楽が、一柳慧さんの作品で、これまたただ道を歩いているシーンにも関わらず、とんでもない世界観になってしまうという面白さでした


それにしても、吉田喜重監督作品に毎度震えます…