『ひそひそ星』 The Whispering Star 【オープニング作品】
日本 / 2015 / 100分
監督・脚本:園子温 (SONO Sion)
配給:日活
ロボットが8割、人類が2割になった未来の宇宙を舞台に、様々な星を巡って人間たちに荷物を届ける宇宙宅配便の配達アンドロイド、鈴木洋子を主人公にした物語。壮大な宇宙を旅しながら、3・11の傷跡残る福島を舞台とする、ユニークでリリカルなSF映画の傑作。(フィルメックスHPより)
©SION PRODUCTION
【感想レビュー】@東京フィルメックス
今年は園監督作品がフィルメックスのオープニング上映ということで、もう本当に楽しみにしていました
観ながらゾクゾクするシーン多数…。観た後もジワジワと多方向から色んな感情が渦巻いて、なかなか眠れませんでした。
☆以下、若干のネタばれに注意です↓☆
全体的な作品のタッチは、『部屋 THE ROOM』(1994)や『桂子ですけど』(1997年)などの作品を彷彿とさせるもので、この2作品は以前シネマヴェーラの特集で観て、『愛のむきだし』以降の園監督カラーとは違う一面に驚くと同時に、園作品のなかでもとりわけ好きな作品になっていたので、『ひそひそ星』は原点回帰のような感もあり、なんだか格別な思いで映画を観ました
時間、距離、空間、音…など、園作品のキーワードが満載でした。“時間と距離”は、劇中の言葉にも出てきます。過去現在未来の時間の隔たり。物理的な空間の隔たり。生活音。声。音楽。
また、様々な対比も印象的でした。
モノクロとカラー。アンドロイドと人間。アンドロイドとコンピューター。プロの役者と素人の方々。
宇宙宅配便の配達アンドロイドは、人間の心が分からない。なぜ、他人からみたらガラクタにさえ思える代物を、どれだけ時間がかかったとしても届けてほしいのか。どうやら、人間には“時間と距離への憧れ”があるらしいと気づくのです。アンドロイドは人間のマネッこをしてみる。繰り返す日常。日常の繰り返し。労働の後の煙草。お茶。コンピューターとの会話。届け先の人間との会話。。そしてついには、きっと少しだけ人間の心に寄り添うような瞬間がありました。この辺はじわっときました
冒頭から別世界へワープ。宇宙船が日本家屋というぶっ飛んだ設定だし、アンドロイドを演じる神楽坂恵さんがまたとっても素晴らしくて惹き込まれました。肉感的な身体×アンドロイドというのがなんとも絶妙なバランスです。サイボーグみたいにならない人間味があるのに、アンドロイドだからです。
『人間は、せいぜい生きても百年。』この言葉は個人的には重かったな…。今年は、百歳をあと一年でむかえる祖母が他界したこともあって、人の一生について色々と考えさせられっぱなしなので、“時間と距離”も描いているこの作品の中では重みがありました。
そして、福島が出てきます。津波や原発の問題。『希望の国』の後に監督は、何かの媒体で、何に使うか分からないけど被災地の映像を記録していると仰っていたように思うので、今回の作品にもその映像が、どこかで使われたのかしらん…と思いながら観ました。綿密な取材をする園監督ならではの表現というのが随所に感じられました。今回、プロの役者さんの他に、素人の方々も出てきますが、やはり取材で知り合った被災地の方々とのこと。素朴な雰囲気と相まって、神楽坂さんのアンドロイド感が増していてなんだか好きなシーンです
よく園監督は、3.11以前と以降では、もう何もかもが違い、映画を撮る時に、3.11がなかった世界にできないと繰り返し仰っていて、その部分がこの作品の構造にも大きく関係しているのだなぁと思いました。お若い頃からずっと書いている脚本が幾つもあるらしいので、どうやら、バブルやバブル崩壊のあった80年代90年代に構想し書かれた設定のところに、3.11を経験した現在も書き続けると複雑化するらしいのです。。
『希望の国』や『ラブ&ピース』でもそうでしたが、どこか絶望はしていない感じに少し救われました。2016年の5月公開だそうです!!もう一度観たいです
【上映後のQ&Aの覚え書きメモ】
お言葉の細部まで覚えておらずニュアンスが違うかもしれませんが…
若い頃⇒人生の儚さを感じていた。バブルだった。
1990年に執筆した脚本。若い頃の自分を“彼”という。変な言い方かもしれないけど、“彼”といってもいいほど時間的な隔たりがある。その“彼”が書いたものをリスペクトして、さらに福島を舞台にしたことで、その時の脚本や絵コンテにないことが盛り込まれ、“現在の自分”もある。そういう意味では、若い頃の自分と、現在の自分の二重構造になっている。
当時は予算がなくて作れなかった。その代わり、『桂子ですけど』を作る。予算が違うから形は違うけど、内容は一緒。当時の自分は、お金もなくていつ死ぬか分からない位だったから、今考えていること、撮りたい映画を形にしようと思って、『桂子ですけど』を撮った。
『ひそひそ星』の劇中にちょっと出てくる亀は、やはり『ラブ&ピース』のカメちゃんだった…!!ご質問された方、ありがとうございます!!
音に対するこだわり。
色々作品名を仰っていたけど分からなかったが、ベルリン映画などで観た作品やアレクサンドル・ソクーロフの作品などにも影響を受けているとのこと。映画の50%は音。
また思い出したら加筆します
日本 / 2015 / 100分
監督・脚本:園子温 (SONO Sion)
配給:日活
ロボットが8割、人類が2割になった未来の宇宙を舞台に、様々な星を巡って人間たちに荷物を届ける宇宙宅配便の配達アンドロイド、鈴木洋子を主人公にした物語。壮大な宇宙を旅しながら、3・11の傷跡残る福島を舞台とする、ユニークでリリカルなSF映画の傑作。(フィルメックスHPより)
©SION PRODUCTION
【感想レビュー】@東京フィルメックス
今年は園監督作品がフィルメックスのオープニング上映ということで、もう本当に楽しみにしていました
観ながらゾクゾクするシーン多数…。観た後もジワジワと多方向から色んな感情が渦巻いて、なかなか眠れませんでした。
☆以下、若干のネタばれに注意です↓☆
全体的な作品のタッチは、『部屋 THE ROOM』(1994)や『桂子ですけど』(1997年)などの作品を彷彿とさせるもので、この2作品は以前シネマヴェーラの特集で観て、『愛のむきだし』以降の園監督カラーとは違う一面に驚くと同時に、園作品のなかでもとりわけ好きな作品になっていたので、『ひそひそ星』は原点回帰のような感もあり、なんだか格別な思いで映画を観ました
時間、距離、空間、音…など、園作品のキーワードが満載でした。“時間と距離”は、劇中の言葉にも出てきます。過去現在未来の時間の隔たり。物理的な空間の隔たり。生活音。声。音楽。
また、様々な対比も印象的でした。
モノクロとカラー。アンドロイドと人間。アンドロイドとコンピューター。プロの役者と素人の方々。
宇宙宅配便の配達アンドロイドは、人間の心が分からない。なぜ、他人からみたらガラクタにさえ思える代物を、どれだけ時間がかかったとしても届けてほしいのか。どうやら、人間には“時間と距離への憧れ”があるらしいと気づくのです。アンドロイドは人間のマネッこをしてみる。繰り返す日常。日常の繰り返し。労働の後の煙草。お茶。コンピューターとの会話。届け先の人間との会話。。そしてついには、きっと少しだけ人間の心に寄り添うような瞬間がありました。この辺はじわっときました
冒頭から別世界へワープ。宇宙船が日本家屋というぶっ飛んだ設定だし、アンドロイドを演じる神楽坂恵さんがまたとっても素晴らしくて惹き込まれました。肉感的な身体×アンドロイドというのがなんとも絶妙なバランスです。サイボーグみたいにならない人間味があるのに、アンドロイドだからです。
『人間は、せいぜい生きても百年。』この言葉は個人的には重かったな…。今年は、百歳をあと一年でむかえる祖母が他界したこともあって、人の一生について色々と考えさせられっぱなしなので、“時間と距離”も描いているこの作品の中では重みがありました。
そして、福島が出てきます。津波や原発の問題。『希望の国』の後に監督は、何かの媒体で、何に使うか分からないけど被災地の映像を記録していると仰っていたように思うので、今回の作品にもその映像が、どこかで使われたのかしらん…と思いながら観ました。綿密な取材をする園監督ならではの表現というのが随所に感じられました。今回、プロの役者さんの他に、素人の方々も出てきますが、やはり取材で知り合った被災地の方々とのこと。素朴な雰囲気と相まって、神楽坂さんのアンドロイド感が増していてなんだか好きなシーンです
よく園監督は、3.11以前と以降では、もう何もかもが違い、映画を撮る時に、3.11がなかった世界にできないと繰り返し仰っていて、その部分がこの作品の構造にも大きく関係しているのだなぁと思いました。お若い頃からずっと書いている脚本が幾つもあるらしいので、どうやら、バブルやバブル崩壊のあった80年代90年代に構想し書かれた設定のところに、3.11を経験した現在も書き続けると複雑化するらしいのです。。
『希望の国』や『ラブ&ピース』でもそうでしたが、どこか絶望はしていない感じに少し救われました。2016年の5月公開だそうです!!もう一度観たいです
【上映後のQ&Aの覚え書きメモ】
お言葉の細部まで覚えておらずニュアンスが違うかもしれませんが…
若い頃⇒人生の儚さを感じていた。バブルだった。
1990年に執筆した脚本。若い頃の自分を“彼”という。変な言い方かもしれないけど、“彼”といってもいいほど時間的な隔たりがある。その“彼”が書いたものをリスペクトして、さらに福島を舞台にしたことで、その時の脚本や絵コンテにないことが盛り込まれ、“現在の自分”もある。そういう意味では、若い頃の自分と、現在の自分の二重構造になっている。
当時は予算がなくて作れなかった。その代わり、『桂子ですけど』を作る。予算が違うから形は違うけど、内容は一緒。当時の自分は、お金もなくていつ死ぬか分からない位だったから、今考えていること、撮りたい映画を形にしようと思って、『桂子ですけど』を撮った。
『ひそひそ星』の劇中にちょっと出てくる亀は、やはり『ラブ&ピース』のカメちゃんだった…!!ご質問された方、ありがとうございます!!
音に対するこだわり。
色々作品名を仰っていたけど分からなかったが、ベルリン映画などで観た作品やアレクサンドル・ソクーロフの作品などにも影響を受けているとのこと。映画の50%は音。
また思い出したら加筆します