☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『浮雲』(1955)

2016年05月25日 | 邦画(クラシック)
『浮雲』(1955)

監督:成瀬巳喜男
主演者:高峰秀子、森雅之(大映)、岡田茉莉子、山形勲、中北千枝子、加東大介

【作品概要】
とめどなく落ちぶれていく自堕落な男と、そうと分かっていながら結局どこまでも男についていってしまうひとりの女の宿命を描いた愛と悲劇の物語。戦時中、赴任先のインドシナで、妻ある男・富岡と出会い愛し合ったゆき子。終戦後、妻と別れて君を待っている、との言葉を信じ富岡のもとを訪れたゆき子だったが、富岡はいつまでたっても態度をはっきりさせようとしない。途方に暮れたゆき子は外国人の愛人となり、富岡のもとを去るのだったが……。(Yahoo!映画より)

【感想レビュー】
なんてドラマチックな映画なの…!と噛り付いて観ました

森雅之さんの目元の隠な感じがちょっとだけ苦手なのですが…。この作品はもちろんのこと、『羅生門』といい『雨月物語』といい、一度見たら目が離せない色気を纏っていらっしゃる…

いやはや、森雅之さん演じる富岡は本当にどうしようもない男であった…!なぜか次から次へと女性を虜にしてしまう富岡。そして次から次へと女性を不幸にしてしまう富岡。

(絶対に出会いたくないタイプ…!)

戦中、インドシナで出会い生き抜いてきた男女が、戦後に再会し心の空虚さを埋め合う…という筋書きでは飽き足らず、次から次へと展開…いや転落していく男…。そしてそれにズルズルと引っ張られていく女…。

必ず新しい女が現れ、もう嫌な予感しかしないという…
一周してだんだんと笑えてくる展開ですが…

インドシナのシーンは、とても幻想的な画で、見惚れてしまいました。異国の熱帯の地でのロマンス。戦時中とは思えぬシーンでした。

劇中の富岡の台詞にもありましたが。
過去を忘れられず、過去を想い生きていっても、やがてはその過去に縛られ、楽しかった記憶もいつしか色褪せてしまう時がくるという…。突きつけられる現実が痛い…。この辺りの台詞はじわじわと効いてきます…


それにしても。富岡のクズっぷりも凄いけれど、結末を考えると女も凄いかも

とにかく見どころたっぷりで面白かったです







『羅生門 』(1950)

2016年05月18日 | 邦画(クラシック)
『羅生門 』(1950)

監督:黒澤明
出演者:三船敏郎、森雅之、京マチ子、
志村喬

【作品概要】
芥川龍之介の短編小説 『藪の中』と『羅生門』が原作。ある殺人事件の目撃者や関係者がそれぞれ食い違った証言をする姿をそれぞれの視点から描き、人間のエゴイズムを鋭く追及した。(Wikipediaより)

【感想レビュー】
観終えて、古典の奥深さに、もうただただ唸っております

登場人物達が代わる代わる事件の証言をするものの、それぞれ違う証言をするわ関わりたくないから嘘の証言をする者もいるわで、事件の全貌が見えてこない。それぞれがそれぞれの視点で物を言うので実際起きた事、思った事感じた事までが入り乱れて、もはや収集不可能なことに…。そんな中、エンドレス感たっぷりなボレロ似の音楽がシュールに響く。巫女のくだりとかも…これは…もはや喜劇だわ

人間って結局、自分に都合の良いように物事を見てしまうし見ているよなぁ…と思わず感じ入りました


そしてまた凄いのが、映画的な魅力たっぷりの画面

朽ちかけた羅生門の力強い佇まい。
そこに容赦なく降りしきる強い雨。

一転、藪の中の木漏れ日の輝き。
侍烏帽子の男に引かれた白っぽい馬に乗る市女笠の美しい女。その幻想的な雰囲気たりや…
モノクロのグラデーションの表現の多様さに圧倒されました。役者さん達がとってもとっても神秘的でした

寓話のような映画で、何度も観たくなりそうです





『ひめゆりの塔』(1953)

2016年05月17日 | 邦画(クラシック)
『ひめゆりの塔』(1953)


監督:今井正
出演者:津島恵子、香川京子、岡田英次、藤田進

【作品概要】
東映製作・配給。沖縄戦で看護婦として前線に立ったひめゆり学徒隊の悲劇を描いた戦争映画。作品は大ヒットを記録し、倒産の危機にあった東映を救った。第27回キネマ旬報ベスト・テン第7位。1982年(昭和57年)に同脚本・同監督によりリメイク版が公開された。

【感想レビュー】
ひめゆり学徒隊を映画化した作品は多いですが、おそらくその初めとなる作品です。よく戦後8年でこれを撮ったなぁと思いました。
過酷な状況下でありながらも、仲間と歌ったり戯けてみたりする無邪気な様子に普遍的なティーンエイジャーの特徴が描かれていて、過酷さが日常になると人はかえってこうなるのかもしれないと思わされます。

また、陸軍関係者とは対象的に描かれる教師達の人間像が印象的でした。過酷な前線でありながらも、常に生徒達のことを気にかけ思い続けた教師達。
そしてその教師達を慕う生徒達。それだけに、家族と離れ動員された生徒達の孤独さや置かれた状況の非情さが伺えました。

戦争経験者である俳優陣とスタッフですから、画面に説得力がありました。

香川京子さんの凛とした品のある佇まいが、女生徒達の若さと強さと美しさとその輝きと…強烈な生の迸りを象徴しているように思いました。

観なければならない映画ってやはりあるよなと改めて思いました。




『復讐するは我にあり』(1979)

2016年05月13日 | 邦画(クラシック)
『復讐するは我にあり』(1979)

監督:今村昌平
出演者:緒形拳、三國連太郎、ミヤコ蝶々、倍賞美津子、小川真由美

【作品概要】
5人を殺害した西口彰事件を題材にした長編小説の映画化。全国を逃走した男の、犯罪を積み重ねた生い立ち、数々の女性遍歴と父との相克を描く。

【感想レビュー】
これは…!面白かったです‼

『TATTOO<刺青>あり』に引き続きこちらも実録映画。現在みたいにDNA鑑定などの科学捜査がないような時代の犯罪手口や犯罪捜査って、良くも悪くもやっぱり今とは感覚が全然違いますから、観ていてとても新鮮です。
妙に人情があったり、戦後の混乱期を経ての犯罪ですし、周囲の反応もやっぱり今とは違う感じに描かれているなぁと思いました。


俳優陣も凄かったです
犯人を演じる緒形拳さんの異様さといったら…。いわゆるならず者といった風情から大学教授から弁護士に至るまで、それぞれ本物にしか見えない振る舞い、佇まい…

倍賞美津子さんや小川真由美さんなどの女優陣も美しくかったです


犯人の幼少時の長崎の離島でのエピソードが印象的で、その土地の歴史的背景がやはり映画に重厚感をもたらしていました。

それにしても実録映画は面白い






『TATTOO<刺青>あり』(1982)

2016年05月11日 | 邦画(クラシック)
『TATTOO<刺青>あり』(1982)

監督:高橋伴明
脚本:西岡琢也
製作:井筒和幸
出演者:宇崎竜童、関根恵子
主題歌:内田裕也&トルーマンカポーティロックンロールバンド 宇崎竜童
【作品概要】
1979年に起きた事件三菱銀行人質事件の犯人の梅川昭美に材を取った作品。犯人の生い立ちから事件を起こすまでの軌跡を描く。事件自体は省略されている。(Wikipediaより)

【感想レビュー】
おぉぉ…荒廃的な空気に満ち溢れていました。冒頭とラストの音楽が映画の雰囲気にマッチしていてすごく盛り上がります。冒頭の警察病院の長い廊下を行くシーンはゾワゾワッときます…。このシーンは何度も見返したくなります
実録映画ということですが、起こした事件ではなくて、昭和38年、15歳からの半生が描かれています。どんな不肖の息子であろうとも、息子を想う母性は強し!…というのもテーマになっています。
警察が訪ねてきた玄関先で、息子はいつか立派な人間になって見返す日がくると言う母。母親の精神もかなりロックだったりする…

高橋伴明監督の初の一般映画監督作品ということですが、それでもやたら男女の絡みとか多いです。でも昔っぽくて逆に新鮮です。今の映画みたいにそういうシーンを綺麗に撮ろうとしていない風なのが良くて、男性目線な感じ

関根恵子時代の高橋恵子さん、すごく可愛くてお綺麗でした
なんかサラッと脱いでサラッと映画の中に存在している、といった佇まいにザ・女優を感じます。服を着ていてもいなくても凛としている感じが素敵です

映画自体は、蛇足に感じる部分が少しずつ重なってちょっとムムムな時間帯もありましたが、関根恵子さんが美しかったので満足です 男を狂わす女ぶりでした。

女って……こわいなぁ…