☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『女学生ゲリラ』(1969)

2014年09月28日 | 邦画(クラシック)
『女学生ゲリラ』(1969)

監督:足立正生
脚本:出口出
出演:芦川絵里、花村亜流芽 、万屋真理、 杉山健、 平岡正明


【作品概要】
出口出による脚本を足立正生が監督した、若松プロダクション作品。評論家の平岡正明が生徒会長役で出演している。ちなみに「出口出」は足立ら数人の共同ペンネーム。
 不良の高校三年生の明子、絹代、時子は、劣等生を冷遇してきた学校への復讐を誓い、卒業式を妨害する計画を立てていた。同級生の誠一と五郎を加えた五人は、三年生全員の成績表と卒業証書を盗み出した後、色仕掛けで自衛隊員から奪った武器を持って、山岳地帯のアジトに立てこもるのだったが…。(Yahoo!映画より)

【感想レビュー】
足立作品2本目。引き続き『映画/革命』を細々と読み進めながらの観賞です。
そして、DVDの特典のインタビューで、若松孝二さんと足立正生さんのお酒の席でのインタビューを、なぜかとても愛おしい思いで観ました

まずは、『女学生ゲリラ』の感想を。
結論から言うと、けっこう面白くてびっくりしました。ブラックで笑えるところもあるし、ストーリーが展開していくシーンの連続がぶっ飛び過ぎて面白いというのもたくさんありました。
各々のシーンの行動だけをみると、迷子になってしまいそうですが、想念の連続と考えると、流れで観れます。

学校や教師という権力に宣戦布告し、男女のグループで徒党を組み、山岳アジトを築くのですが、盛りのついた若い肉体関係やちょっとコントみたいな内ゲバも始めるはで…あれ、これ山岳ベース事件の前の公開なのに。なんなんだ…予見するかのような作品…?
でも、終始、私が戸惑いながら感じたのは、足立監督の冷めた視点。
結局、山岳アジトには学校=体制側が来るは来るのだけど、二度目?に追い返した後は来ない…。見張りを続けながら、一体何と闘っているのか分からなくなるわけです。
象徴的に出てくるのは、戦争で精神を病んでしまった旧日本兵の存在。実際に戦地に行って、身体にも精神にも深い傷を負ってきた存在。対して、若い彼らの闘いは…。
どうしたことか足立監督のその冷めた視点は、『映画/革命』の中でも感じる事であり、幾つか垣間見たインタビュー動画でも感じる事であり、もっと言えば先日観た『赤軍PFLP・世界戦争宣言』にも感じるところなのです。

確かに、日本大学の学生運動の最前線にいたらしいですが、それもどこか冷めた感じ。
そこから歳を重ねたにも関わらず、なぜベイルートで行動(どうやら情報を担当していたらしいですが…)に加担したのか…謎はますます深まるばかりです

足立正生監督の謎をめぐる旅が始まってしまった
先が長そう…。



『赤軍PFLP・世界戦争宣言』(1971)

2014年09月24日 | 邦画(クラシック)
『赤軍PFLP・世界戦争宣言』(1971)

監督:若松孝二、足立正生

【作品概要】
内容(「キネマ旬報社」データベースより)
鬼才・若松孝二、足立正生監督らがレバノンの赤軍派、PFLPと共同し、パレスチナ解放のために闘うアラブゲリラの日常を描いたドキュメンタリー。未だ話題の人物である元赤軍リーダーの重信房子のインタビューなど貴重な映像を満載した1枚。
内容(「Oricon」データベースより)
若松孝二・足立正生がカンヌ映画祭の帰り道でレバノンのベイルートに向い、現地の赤軍派、PFLPと共同し、パレスチナ解放のために闘うアラブゲリラの日常に迫った伝説的ドキュメンタリー。世界革命のためのニュースフィルムであることを目指すため、既存の劇場公開を拒否し、全国各地の大学や工場などで独自の上映運動が行われた話題作。元赤軍リーダー、重信房子のインタビューなども収録した貴重な映像資料としても価値あり。

【感想レビュー】
うーん、これまたとにかく早口…
内容は、世界革命を目論む赤軍のプロパガンダ映画だ。とはいえ、私は何か特定の思想や概念に傾倒しているわけではなくて、足立正生という人物に興味を持って、資料として観ました。

ところどころ、赤軍メンバーの声だけのインタビューや重信房子の映像付きのインタビューも出てくるのだけど、これがもう何かあまりのお粗末さに、虚しさを覚える…。重信房子のインタビューは、とにかく早口で、内容は堂々巡っている感が否めない。
よく言われる事だけど、結局は物事の本質が見えなくなり、自己正当化の為の理論武装のように聞こえて仕方なかった。

また、本篇の中で全くの無音になる時間が幾つかあって、それは当時のベイルートの人々の生活や、パレスチナ解放のために闘うアラブゲリラの日常を訓練も含めて映し出していて、そこが無音なことと、現地の赤軍メンバーのスピーチが雄弁であるにも関わらず空虚なことが、何とも皮肉に思えて仕方なかった。
無音の編集であることに、どんな意図があるのか分からない以上、それは単に私の勝手な観方ではあるのだけど…。

本篇の最後に、パレスチナの歴史説明がある。古代カナン語で“勇敢なる兵士”を意味する。2000年前の侵略者ヘブライ人と闘い、ローマ帝政十字軍と闘い、近代シオニズムと闘い、4000年前から闘う人民だ、という説明。

そんな土地柄にちょっとお邪魔して一体何が出来るというのか…。
日本ではない何処かを目指し、自国を飛び出したが、結局、日本ではない何処かはあり得なかったわけだ。


社会学者の宮台真司氏は、『映画芸術』の記事の中で、足立映画のモチーフが、『「ここではないどこか」がありえないという不全感に満ちた世界を、②性と暴力で切り裂こうとするが、③結局は「ここ」に戻ってしまう、という循環形式にあることが分かり、私はハマった。』と言っている。
この “循環形式”を嫌というほど理解しているはずの足立正生監督が、何故この時、被写体と同化してしまったのか…その謎はまだ分からない。

『映画/革命』(著者:足立正生、聞き手:平沢剛)という河出書房新社から出ている書籍も読んでいるので、まだ読破出来ていないけど、何か新しい事が分かりますように…。







『赤い航路』(1992)

2014年09月23日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『赤い航路』(1992)

監督:ロマン・ポランスキー
ヒュー・グラント
ピーター・コヨーテ
エマニュエル・セニエ
クリスティン・スコット・トーマス

【作品概要】
結婚7年目のイギリス人夫婦・ナイジェルとフィオナは、自分たちの愛を確かめるためにイスタンブル行きの豪華客船で地中海クルージングの旅に出た。その船上でナイジェルは、車椅子のアメリカ人作家・オスカーとその妻のフランス人・ミミに出会う。オスカーはナイジェルにミミとの馴れ初めを話し始め、パリでの出会い、過激な性生活、車椅子になってからの生活などを語っていく。(Wikipediaより)

【感想レビュー】
なんていうか…吸引力がありましたっ!
うーん!思わず唸る。面白い…というか興味深かったです。
劇中の台詞に、“炎の啓示”と“卑猥は神聖”というのが出てきますが…。

多くの人が、ヒュー・グラント演じる品行方正な人物やその妻の視点を通してこの映画を観るのじゃないかな。
少なくとも私はそうでした。そして、悪魔の誘いとも思えるある夫婦の数々のエピソード。
これは…罠なのか。
誰しも心の奥深くに秘めていそうなある炎がじわりじわりと炙り出されていくようだった。
やっぱり…こういうのが一番怖い
思わずポランスキー監督自身をなぞって考えてしまいますが…
いや、でもあまりにぶっ飛んでいたので、深いテーマがありながら、きっちりエンターテイメント映画として観れました



『袋小路』(1966)

2014年09月14日 | 西洋/中東/アジア/他(クラシック)
『袋小路』(1966)

監督:ロマン・ポランスキー
出演者:ドナルド・プレザンス
フランソワーズ・ドルレアック
ライオネル・スタンダー(英語版)
音楽:クリストフ・コメダ

【作品概要】
外界と遮断された古城に住み、理想の暮らしを満喫していた中年男とその若妻のもとに逃走中の2人組のギャングがやって来る。

【感想レビュー】
久しぶりに映画を観ましたー

いやぁ、やっぱりポランスキー作品はハズれない…

冒頭のひたすら車を押すシーン。
音楽、いかにもギャングな肌の焼けた男、瓶底眼鏡の神経質そうな男、古城、スキンヘッドの城の主、奔放な若い妻、鶏たち…。
出てくる人物、出てくる設定、すべてがシュールで惹き込まれていく。
奇妙な魅力であっという間に観終わりました
まさに袋小路なジリジリとする緊張感と思わず笑ってしまうシーン。
もし、サイレントだったとしても、とても魅力的な作品に違いないと思う数々のシーン

フランソワーズ・ドルレアックは、妹のカトリーヌ・ドヌーヴとそっくりで、始めは同一人物かと思ってしまった。煙草を吸いながらワンピを着るシーンの背中の美しさたりや…あのシーンはもうテンションが上がりまくりでした