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☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る 』(2014)

2016年02月10日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る 』(2014)

監督:エディ・ホニグマン/出演:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
2014年/98分/オランダ/DCP/配給:SDP

【作品概要】
聴くものが、人生を重ねる時、音は初めて音楽になる。オランダの王立オーケストラの創立125周年記念ワールドツアーを追ったドキュメンタリー。
ウィーン・フィル、ベルリン・フィルと並ぶ世界三大オーケストラである、オランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)。2013年、コンセルトヘボウが創立125周年を記念して、1年で50公演をおこなう世界一周のワールドツアーへと旅立った!アルゼンチンから南アフリカ、ロシアへと、気さくな素顔をのぞかせながら、王立御用達(ルビ:ロイヤル)オーケストラが世界をめぐる。(ユーロスペースHPより)

【感想レビュー】@theater
コンセルトヘボウの裏側を垣間見るドキュメンタリー映画、楽しみにしていました

…が、ドキュメンタリー映画としては…特に目新しいものはなかったかなぁと思います。。
大きく三本の軸がありました。
一つ目は、ツアーで行く先々の観客にスポットを当てたこと。アルゼンチンではタクシーの運転手、南アフリカでは音楽に夢中な女学生達。はたまたロシアでは、元貴族の家柄でスターリンやヒトラーに追われ強制収容所にいた経験をもつマーラーに特別な想いのある老紳士など。コンサートツアーでオーケストラが織り成す音楽が、その土地土地の人々にどのような作用をもたらしているのか、が描かれています。

二つ目は、コンサートツアーを周る団員のプライベートな側面。家族を国に残し、単身でツアーに参加する団員が、電話やネットで連絡を取っている様子など。

三つ目は、各パートの首席奏者が、音楽そのものに向き合っている姿、そしてオーケストラの団員が指揮者の元で音楽を創り上げていく様子を捉えたもの。

そういった三つの軸が、コンサートのその瞬間、化学反応を起こし一体となる素晴らしさ。

オーソドックスなドキュメンタリーのスタイルなのだけど、少し拡げ過ぎたのか散漫になりがちだった気も…
まるでスクランブル交差点の往来のようだ
スクランブル交差点ってカオスなものだしいいのかもしれないけれど、通り一遍な感も否めなかった
うむぅ…。コンサートを聴くことで得る以上の何か…を音楽ドキュメンタリーで描くのは難しそうだなぁと改めて感じました

でも、ヤンソンス指揮、ヴェルディ『レクイエム 涙の日』はほんの断片だったけど、素晴らしかったです

『ヤンヤン 夏の想い出 』(2000)

2016年02月03日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『ヤンヤン 夏の想い出 』(2000)

監督:楊徳昌(エドワード・ヤン)
呉念真(ウー・ニエンチェン)
金燕玲(エレイン・ジン)
張洋洋(ジョナサン・チャン)
李凱莉(ケリー・リー)
イッセー尾形

【作品概要】
少年ヤンヤンとその姉、母、父のそれぞれの苦悩を描いていく。生と死、愛を描いた作品。少年ヤンヤンとその姉、母、父のそれぞれの苦悩を描いていく。2000年の第53回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。

【感想レビュー】
173分…およそ3時間もある作品なのに、しかもDVDだから飽きたら止めてしまいそうなのに、一気に観ました

大きい事件という事件もない(隣家ではある…)家族の話。一緒に住む母方の祖母の自宅療養を機に、家族一人一人が自分と向き合い始める。向き合い過ぎることでかえって家族の歯車が崩れるって、家族あるあるな気が…

私自身、昨年の父方の祖母の死をきっかけに色々と思考がぐらぐらして、嫁の立場である母とちょっとした諍いをしてギクシャクしたり…大なり小なり、冠婚葬祭って親戚も含めて感情的になりがちで、ちょっとバランスが崩れるのかもしれない…

…なもので、なんだかスゥーッと引き込まれて観ました。淡々としているようで、映画の構造が複雑で、面白かったです。父の昔の恋が、娘や息子ヤンヤンの現在の恋と重なっていくくだりなんて、ものすごくシビれました


『真実の半分だけ知ることができる?』

ヤンヤンの父への質問。

ドキってする質問です
これが色々なエピソードに効いてくるのだけど。

ちょっと仏教の半眼の考え方を思い出しました。
驕り、はないだろうか。多くを望み過ぎてはいないだろうか…と、観た後にあれこれ考えさせられる映画で、沁みています

イッセー尾形さんの存在に抜け感があって、映画全体が息苦しくないのも素敵でした

『禁じられた歌声』(2014)

2016年01月23日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『禁じられた歌声』(2014)

監督:アブデラマン・シサコ/出演:イブラヒム・アメド・アカ・ピノ、アベル・ジャフリ、トゥルゥ・キキ
2014年/フランス・モーリタニア映画/97分/DCP/配給:レスペ

【作品概要】
西アフリカ・マリ共和国のティンブクトゥで、少女トヤは、父キダン、母のサティマ、牛飼いの孤児イサンとつつましくも幸せな生活を送っていた。しかし街はいつしかイスラム過激派のジハーディスト(聖戦戦士)に占拠され様相を変えてしまう。兵士たちが作り上げた法によって、歌や笑い声、そしてサッカーでさえも違法となり、住民たちは恐怖に支配されていく。影のように潜みながら生きていく者がいる一方で、尊厳をもってささやかな抵抗を試みるものもいた。が、悲劇と不条理な懲罰が繰り返されていく中、トヤの家族にも暗い影がすこしずつ忍び寄り、ほんの些細な出来事が悲劇を生もうとしていた…。世界遺産にも登録されている古都ティンブクトゥの美しい砂の街を舞台に、愛と憎しみを通して、人間の「赦し」とは何かを描いた壮大な叙事詩。(ユーロスペースHPより)

【感想レビュー】@theater
イスラム映画祭で見逃した作品をようやっと観てきました

スーッと流れていく展開に引き込まれて観ました。時代の流れにじっと耐え、心の芯から湧き上がる思いを歌や音にかえ、精一杯の抵抗を試みるタマシェクの人々。
イスラム映画祭でかかった『トンブクトゥのウッドストック』で、同じ地域の問題を垣間見ていたことで、理解しやすい部分が沢山ありました。
男性は尊厳の象徴である鼻をベールで隠すことが多いことやイスラム世界では珍しい女系社会なことなど。
また、貧困から抜け出すために過激派の手先になってしまう若者達の存在。
負の連鎖は止まらない。。
イスラム過激派に、真のコーランの教えを諭す宗教指導者のシーンは、とても印象的でした。
エアサッカーをするシーンも美しく、気高く…グッときました。
美しい砂の街を捉えた映像の美しさと強いメッセージ性が共存する作品でした

『ムアラフ 改心』(2007)@イスラーム映画祭

2015年12月18日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『ムアラフ 改心』

2007年/マレーシア/87分/35mm/
監督:ヤスミン・アフマド

父親の虐待から逃れて暮らす敬虔なムスリムの姉妹。小さな町に身を寄せた2人は、時に反発しあいながらも支えあって生きていたが、ある時、華人で、敬虔なカトリックの教師と出逢い、お互いの世界観を広めてゆく…。“人を赦す大きな力の源”を謳う信仰と改宗をめぐるドラマ。(ユーロスペースHPより)

【感想レビュー】@イスラーム映画祭
この映画、なんだかとても感じるものがあってじんわりじんわりとくる余韻を味わっております

あまり映画を観て泣かないタイプだけど、ちょっと頬をつたうものに我ながらビックリしたのだった。全体的に監督の?なのか優しい眼差しがあって、その視点があまりにも温かく、そして深くてなんだか泣けてしまったのだと思う。。

敬虔なムスリムの姉妹。そして敬虔なカトリックの家に生まれながら、ある事をきっかけに信仰を遠ざけながら生きる華人の教師が出てきて、人を赦すこととは何なのか?を考えさせられる構成になっています。
ただ、そういった壮大なテーマがありつつも、細かい視点が複雑に絡み合い、信仰心という極めて個人的な側面と多民族で多宗教のマレーシア社会を包括的に捉えた側面とが素晴らしく融合していて、作品に惹き込まれてしまうのです

しなやかさと逞しさ、美しさと強さを併せ持つムスリムの姉妹はとてもキュートで、二人のやり取りやその空気感はとっても魅力的でなんだか神々しいほどだった。
そして、華人の教師の人間らしさといったら、それもまた実にキュートなのだ。母親に対する冷たい態度やお金にキビシイ(かなりケチ…悪しからず)ところとか、その性癖は…ごにょごにょ…なところとか。なんとも愛すべき人物なのです。

ムスリム姉妹も華人の教師も心の痛みを抱えています。人は誰でもそういうものだと思うけど、その痛みとどう向き合うのか。それはやがて、イスラム教とキリスト教という垣根を越え、一つの大きなテーマとなっていく。そして、それに対する答えも、宗教の垣根を越えた普遍的なものへと還っていく。そもそもイスラム教もキリスト教もユダヤ教も、同じ神なのですから。。

華人教師はムスリムの姉妹の姉に恋をする。アラビア語を僕も習うよとまで言い、彼女の元に向かうシーンに、バッハのピアノ協奏曲5番が流れる。バッハは敬虔なプロテスタント信者だったけど、カトリックの為に多くの曲を書きました。それはまぁ仕事だからというのもあるけど…そのバッハが流れるのです。
その他にもアメイジング・グレイスが使われたり。
とってもとっても素晴らしいシーンでした。

また、ゴーイングホームが使われていて。赦すことでhomeに還っていくような感じもして。。信仰心とは、やはり個人的なもので、誰かに危害を加えたりしないものだよなぁ…と改めて感じます。

観たあと、信仰を持たない私ですが思わず自分はどうだろう?と背筋がピンと伸び、胸に手を当ててしまうような映画でした。それでいて胸の奥にじわっと何かが広がって行く素晴らしい映画でした

『法の書』( 2009)@イスラーム映画祭

2015年12月17日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『法の書』

2009年/イラン/94分/35mm/監督:マズィヤール・ミーリー

40歳の独身男性ラフマンは、出張先のベイルートで通訳のフランス人女性ジュリエットに出逢う。2人は恋をして結婚。ジュリエットは改宗し、テヘランにあるラフマンの母と姉妹が暮らしている彼の家に引っ越すが…。宗教の違いからくる家庭内文化摩擦をユーモア満載に描いた国際結婚コメディ。(ユーロスペースHPより)


【感想レビュー】@イスラーム映画祭
面白かったです
もう堪えられなくてイヒヒイヒヒ笑いながら観ました
40歳のラフマンがなんとも愛らしいキャラなのです。40歳には見えないくらい…ちょっと老けているのだけど…でもそこに美女現る…‼ この分かりやす過ぎる筋書き、けれども楽しそうな気配に期待が高まる…というわけ

しかし…家族、いや親戚中の女性陣がラフマンの結婚に関心が向いているというこの恐ろしい状況には身の毛もよだつ…
そいでこの女性陣ときたら、あーだこーだとかしましく陰口をする始末で、それは嫁に対してもそうで…あぁ恐ろしや…。一人だけジュリエットの味方がいて、そこだけは救いなのですが
しかし、そんな状況にジュリエットはメソメソと泣いているようなタマではなかった…。コーランを片手に理詰めで迫っていきます‼…あぁ、恐ろしや…。
そうなると、生まれた時から当たり前に生活に根差してきた信仰心と改宗したばかりの新米ムスリムのプライドがぶつかるわぶつかるわで…。
物語はだんだんと核心に迫っていきます。ぶつかっているのは本当に信仰心なのか?ラフマンを間になんとなーく取られた感から干渉する女性陣の気持ちも見え隠れする。そういうのって、お国柄とかあまり関係なくありそうですよね…
愛については、コーランには書かれていない?らしい。どうやら、そこは二人で築いていかなきゃね、というわけなのです。
また、破壊され廃墟とした街の片隅で子ども達にコーランを教えるシーンも胸に迫るものがありました。

それにしても、こんなにユーモアに富んだ楽しいイラン映画があるとは…

ラフマンを演じた俳優さんが、アミール・ナデリ監督にちょっと似ていて、ソワソワしちゃいました。字幕翻訳はショーレ・ゴルパリアンさんでした