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☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『トンブクトゥのウッドストック』(2013)@イスラーム映画祭

2015年12月17日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『トンブクトゥのウッドストック』

2013年/ドイツ/90分/ブルーレイ/
監督:デズィレ・フォン・トロタ

サハラ砂漠に暮らす遊牧民“トゥアレグ”が、自らの文化的アイデンティティを内外に示すべくマリで毎年開催してきた音楽祭「砂漠のフェスティバル」。その2011年の模様を詩情豊かに描いた音楽ドキュメンタリー。平和を望み、伝統と女性を尊ぶ彼ら特有の音楽が耳に心地好く響くが、現在関係者の多くが難民となっている。(ユーロスペースHPより)

【感想レビュー】@イスラーム映画祭
是非とも行きたいと思っていたイスラーム映画祭。何かの特集上映の時は混んでいることが多いのですが、いつもよりも若い客層な感じで、学生さんも多い雰囲気でした。
イスラム教といっても、多くの国で、多くの民族が信仰しているので、様々な視点で作られている映画を観ることはとても興味深く、充実しました


サハラ砂漠の誇り高き民、トゥアレグのドキュメンタリー。数千年にも渡り遊牧民としてサハラ砂漠を往き来して暮らしてきたトゥアレグ。
ラクダで移動するトゥアレグの一行が夕日に照らされ、まるで影絵のようにくっきりとスクリーンに刻印される。やはり砂漠の民といえば、このイメージが強いので、そこは観れて嬉しいです
伝統的な暮らしをするトゥアレグ達に息づくイスラム教について、様々な人が語ります。自分達のことを『ケル・タマシェク』と呼んでいました。
女性の比較的自由な装いに比べ、男性の方が顔を覆うように布を巻きます。目だけを出し、鼻を覆うようにするのは、厳しい砂漠の自然から体を守るためではなく、鼻が尊厳の象徴だからだそうです。鼻を守るは、つまり尊厳を守るということ。
また、古くから女性をとても大切にしているとも。女性は周囲の為に生き、与えることができる存在だから、大切にされうるべきなのだそうです。繁栄の象徴なのですね。よく、イスラム教では女性は大切にされるべき存在なのだと云われるけど、その内実は多岐に渡るのだなぁとつくづく思いました。

しかし、彼らを取り巻く環境は過酷そのもの。1960年代前後にできた国境により生活圏が分断されてしまうという弊害が、そこにはありました。水を求めて移動するも国境に阻まれるからです。伝統的な暮らしをしたいトゥアレグにも、常に水不足な環境というのは過酷を極めます。
音楽祭でも、砂漠はとても美しい。けれどもそこで暮らすことは、厳しい自然と共に生きるということなのだ、と歌われていました。

取り巻く環境の変化は、水不足だけではありません。過激派の台頭。また、自国に豊富な資源がありながら、それを搾取し続ける自国政府と西側諸国…その捻れが引き起こす紛争。。貧困は、生きていくための犯罪を生んでしまう…。負のスパイラルだ。

一方で希望もあります。教育を充実させてきた結果、若い世代には視野の広い考えを持つ人達も多いのです。若者達が口々に自らの考えを述べているシーンは印象的でした。

そして、武器からは何も生まれない。武器を楽器に持ち替えよう。そこで音楽祭なのです。自らのアイデンティティを示すため、音楽祭は外部の人に向けてもPRされ、多くの人達が訪れていました。音楽に力がある。音楽にはそのパワーがあると…胸が熱くなります。
…けれども、ドキュメンタリーで熱い想いを話していた人々の多くが、現在、紛争によって難民となっているのが現状だそうです。

繰り返される同じリズム、繰り返される同じメロディーに徐々にトランスしていくようだった。。“ラクダ置き場”が必要なトゥアレグの素敵な音楽祭が、また再開されますように…。

『山河ノスタルジア』(2015)@東京フィルメックス

2015年12月01日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『山河ノスタルジア』 Mountain May Depart
中国、日本、フランス / 2015 / 125分
監督:ジャ・ジャンクー(JIA Zhangke)
配給:ビターズ・エンド、オフィス北野
【作品解説】
急激に発展する中国社会で翻弄されながらも力強く生きる一人の女性の半生を、過去・現在・そして未来と26年にわたる壮大なスケールで描いた傑作。野心的な実業家との間に、結婚、出産、離婚を経験したタオは、父親の葬儀で離れて暮らす息子と再会するが……。

【感想レビュー】@フィルメックス
クロージングの作品でした。授賞式と上映とQ&Aまであって盛りだくさんでした

ジャ・ジャンクー監督の作品は『罪の手ざわり』を2年前のフィルメックスで観ただけなのですが、その時の印象が強く、今回もエッジの効いた感じかしらん、と構えていたら、『山河ノスタルジア』には、温かさやユーモアなど、作品全体になんだか愛嬌が感じられて、また違った印象を持ちました

過去現在未来が描かれています。
登場人物達の男女のほのかな恋模様がやけにおぼこいなぁ~と思いながら観ていたら、実はそれは過去で、時間軸はシンプルに進行していきました。
生まれた土地を離れ、また戻ってくる人物。生まれた土地に根を張る人物。生まれた土地からはどんどん離れて人生を歩む人物。まさに三者三様でした。

世界中で、生まれた土地を離れて人生を歩む人が多くいます。それは自分の意志だったり、やむおえない状況があったり、理由は多種多様であるわけですが、その二世、三世の世代になっていった時のアイデンティティーが、今、まさに多くの問題の根幹にあるわけで、とってもタイムリーな作品だなぁと思いました。

抒情的ななかにも、ユーモアもあるし、餃子には母親の愛が詰まっているしで、若い息子の未来に希望の兆しがあるのがまた救いでした


Q&A



役者陣は、過去現在未来の時間軸で、若者役から老けていく役までを演じなくてはならないわけですが…素晴らしかったです

『青春神話』(1992)@東京フィルメックス

2015年12月01日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『青春神話』
Rebels of the Neon God / 青少年哪吒

台湾 / 1992 / 106分
監督:ツァイ・ミンリャン (TSAI Ming-liang)
【作品解説】
夜の台北を舞台に、刹那的に生きる若者たちを描いた青春群像劇。街で見かけたリー・カンションを主人公の予備校生に起用し、映画史に残るコラボレーションの始まりとなった長編デビュー作。東京国際映画祭ヤングシネマ部門ブロンズ賞、トリノ映画祭最優秀新人監督賞を受賞。

【感想レビュー】@フィルメックス
土曜日、フィルメックスの特集上映ツァイ・ミンリャンに行って来ました

特集の一本目ということで、ツァイ・ミンリャン監督とリー・カンションさんが上映前の舞台挨拶に…‼
舞台挨拶があるとは知らなかったのでビックリしました

1992年の作品ということで、リー・カンションさん…お若いお若い‼
青年でいらっしゃいます。ちょっと病んでいる感じがなんともリアリティ…

一方は仲間とつるむタイプの青年で、一方は孤独な青年。家族の愛の気配が感じられない青年と家族に愛をかけられて育った青年とも言い換えられそうです。自由な青年と籠の中の青年。
でもどちらも青春を持て余している感じ。接点のなさそうな青年達の距離がジワジワと詰まっていくその繊細な描写に、次の展開が待ち遠しく思わず前のめりになります

また、ここぞ!…という時に必ず入る音楽がもはや耳から離れません…‼

楽しかったです


舞台挨拶


『コインロッカーの女』(2015)@東京フィルメックス

2015年11月28日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『コインロッカーの女』
Coin Locker Girl

韓国 / 2015 / 111分
監督:ハン・ジュニ(HAN Jun-hee)
配給:「コインロッカーの女」上映委員会
【作品解説】
チャイナタウンで闇貸金業を営む“母(オモニ)”に育てられたイリョン。彼女は生まれた直後にコインロッカーに置き去りにされた女性だった。ハン・ジュニの監督デビュー作である本作は、仁川の暗黒街を舞台に二人の女性の愛憎関係を描いたパワフルな作品である。 (フィルメックスHPより)

【感想レビュー】@フィルメックス
『消失点』に続いて観ました
3本目ということもあって、ちょっとくたびれていたところに、スカッとエンターテイメントな作品がきてテンションがあがりましたっ

来年の2月に一般公開が決まっているそうです
ですので、ネタばれしないように少しだけ…。

韓国映画のエグさとかバイオレンス過多な感じが好きな方はもうちょっとって思うかもしれないです…うーん、いやその基準は分からないですけども。。

女版ハードボイルドという感じがまたシビれるし、画が格好良過ぎるし、細部に色々と伏線があって、それが効いてくるのといい、色々とバランスが良くて、スタイリッシュな印象を持ちました。ちょっと爽やかにさえ感じるのは映像美のためかしらん。。女優陣が素晴らしいです

三代に渡る母と娘の話しで、臓器売買とかドラッグとか貧困とか、社会の暗部が描かれつつも、しっかりエンターテイメントな作品でした

レストランでかかっていたショパンのバラード1番(確かそうだったと思うのだけど)は、曲の背景とされているアダム ミツキェヴィチの『コンラード・ワレンロット』をあえて伏線にしたのかなぁ…などとちょっと思いながら観ました
どうだかは分からないですが

同日の最終上映の『私の坊や』は観れませんでしたが、観た3本はどれもアイデンティティーが関わってくる作品したが、まったく違う方向性で表現された作品を観ることができて、とってもハッピーでした






『消失点』(2015)@東京フィルメックス

2015年11月26日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『消失点』 Vanishing Point

タイ / 2015 / 100分
監督:ジャッカワーン・ニンタムロン(Jakrawal NILTHAMRONG)
【作品解説】
森で起こった殺人事件を追う若いジャーナリスト。家庭がありながら若い女との関係を続けている中年のモーテルのオーナー。二人の物語は微妙に交錯し、やがて思いがけない展開を迎える。ロッテルダム映画祭タイガー・アワードを受賞したニンタムロンの長編デビュー作。 (フィルメックスHPより)

【感想レビュー】@フィルメックス
『タルロ』に続いて観ました

しかし実に難解で、終始顔面がってなっていたと思う…うぅ…。
でも上映後のQ&Aで、監督が丁寧に丁寧に説明してくださったので、ほんとうに有難かったです

もっと物語性が強い作品なのかと思っていたけど、ストーリーはあってないようなもの(監督もQ&Aでそのように仰っていた…)どころか、断片的過ぎてとりとめもなく進行していくように感じました。。確かにジャーナリストとモーテルのオーナーの視点はあるのだけど、それぞれの物語がその枠の中で、理路整然と続いていくかというと、どうもそうでもない様子なので非常に戸惑ってしまうのです。各々の視点においてもイメージの断片が連続していくようです。

これは…一体…。もう、新しいを越えた何かなのでは…。

でも、タイトルの『消失点』を考えればいつか交わるはず、ハズ…ハズ‼
と思いながら観て、その瞬間は唐突に訪れる。本当に唐突に…‼

Q&Aで監督が両親が事故にあった時のことをお話ししていらっしゃいましたが…きっとそのイメージが強烈にあって、突然に訪れるタイプの“死”というものに対して、心に深く刻まれているイメージを作品にしたのではないかということを感じました。
人が、その人自身として存在していると証明できる記憶。脳内世界のイメージの断片。それはとても儚くて、刹那的なものだけど、それを映像化するという実験的な作品なのかな…
監督は確か、予めストーリーはしっかり作ってあって、人物の詳細も決めていた。それを細かな細かなピースにした、みたいにも仰っていたので、編集作業にかなりのこだわりがあって、実験的な編集をすることで、まったく新しいタイプの映画になったのかも…と思いました。
時間の経過や記憶、死、というものがキーワードな作品でした

また、僧侶が出てくるのですが、『お互いに許し合うのだよ』というような台詞は、この作品の中で初めて心が動く瞬間でした


上映後のQ&A