Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、170

2017-05-12 22:30:47 | 日記

 彩を感じない地味な服装の人々の中で、お医者様のその白衣が白く目立って見えました。

お気の毒にと思うと、悲しむ人々を傍で見ているのが悪いように思えて、蛍さんはまた廊下へと戻って来ました。

 廊下に出てみると、廊下の端に父がいました。蛍さんはすいっと父の傍へと戻って来ました。

その顔を覗き込むと父は泣いていました。赤い目に涙を浮かべ、しくしくと泣き出し、手で涙を拭っています。

「まだ幼いのに、もう行くだなんて。」

そんな言葉を呟いて涙に暮れているのでした。

 『お父さん、他の家の人が亡くなってもそんなに悲しんで泣くなんて、』父は本当に人が良くて優しいなぁと、

蛍さんは感心し、何だかそんな優しい人が自分の父親だと思うと、彼女は感動して誇らしく思うのでした。

 気が付くと蛍さんは病室のベッドに横たわっていました。開けた目には白い天井が映り、あれっと思うと、

彼女には、ここが病院だと思いつく迄には時間が掛かりました。

「あら、起きたんじゃないの。」

そんな声がして、彼女がその声の方を見ると、女の人が2人寄り添ってこちらの方に背を向けてひそひそ話をしていました。

「じゃあ、私が話をしてくるから。」

と、その女の人の1人が振り向いて蛍さんの方に近付いて来るのを見ると、その顔は近所の親戚の伯母さんなのでした。

 「あら、伯母さん。」

蛍さんが声に出しました。おばさんは神妙な顔をしています。怒っている様にも見えました。

「ホーちゃん如何?気分は?痛くない?」

そう伯母さんは聞いてきます。蛍さんは笑って、

「伯母さんまで、私全然大丈夫なのに、皆で騒いでいるのよ。」

と、皆が大袈裟なのだと明るく訴えました。伯母さんもそんな蛍さんの様子に笑顔を浮かべると、

なぁんだという感じでしたが、起き上がろうとした蛍さんの目が、白黒白黒と揺れるように動く様子に、

「大丈夫じゃないわ。」

と慌てて言うと、本人が思っているように大丈夫じゃないんだわと、真顔で寝ていなさいねと蛍さんを静かに寝かしつけるのでした。

 その後伯母さん達2人が水枕や氷嚢を入れ替えて冷たくしてくれたので、気持ちよくなった蛍さんは、

気持ちいいと呟くと、また深い眠りに落ちて行くのでした。

 

 

 


ダリアの花、169

2017-05-12 21:20:10 | 日記

 「死んだりしないわ、気分は悪くないもの。」

病室に戻って来た父にそんな事を言うと、父はしかめっ面をして

「ふん、おまえの意見は当てにならないぞ。お医者様の話ではだめだという事だった。」

と、余程気が動転していたのでしょう、当の重病な蛍さんに、先生の重大な診断を告げるのでした。

 これには、まだ廊下で今後の処置をあれこれと考えていた先生の方が、酷く面食らいました。

『普通の患者と付き添いの間で、言う事が逆じゃないか。』そう思うと、先生は返って可笑しくさえなってしまい、妙に笑顔を浮かべてしまうのでした。

 お医者様が蛍さん親子のちぐはぐな様子に注意を向けていると、廊下の向こうに蛍さんの祖父が姿を現しました。

祖父の姿を認めたお医者様は、彼女の家では蛍さんの父より祖父の方が、こういう重大な話しをするのには適当な相手だと判断すると、

急いで祖父の傍に駆け寄り、離れた病室に彼を引っ張り込むと、孫娘の深刻な状態と、その付き添いに父が不適当だと告げるのでした。

祖父にすると、孫娘の重篤な状態と、自分の息子の不甲斐無さを告げられて、二重に痛手を受けたのですが、

ここはやはり家の家長です。

「分かりました。」

と一言答えると、今後の事についてどうしたらよいか、直ぐに思案を巡らし始めました。

 お医者様が蛍さんの処置をするために立ち去った後、1人病室に残っていた蛍さんの祖父は、

こうしてはいられない、先ずは祖母さんに電話だと、急いで病院に置かれた公衆電話に向かって駆け出して行くのでした。

 どのくらいの時間が過ぎたでしょうか、蛍さんはふっと気が付きました。

如何やら自分は寝ていたようです。室内を見渡すと誰もいません。彼女は身を起こそうとして、おやっと思いました。

ふわりと自分の体が浮き上がったのです。

 「あら、私空を飛べるんだわ。」

不思議な気がしましたが、常々映画のスーパーマンのように空を飛びたいと思っていた彼女は、この事がとても嬉しく感じられました。

その時、病室の入り口に父が現れました。

 蛍さんはお父さん、私飛べるのよと言うと、ふわふわと浮かび上がり、ほらねと父に身振りで示し、凄いでしょうとにこやかに話し掛けました。

ところが父は、凄いなぁと喜ぶどころかしかめっ面をしています。

蛍さんから目を逸らすと、また病室の入り口から外へと出て行ってしまいました。

 『お父さんたら、本当に今日は変だわ。』蛍さんは何だか怪訝な気持ちになりましたが、それより空を飛ぶ楽しさを味わうことに注意が向いていました。

ふわっと病室から廊下に飛び出すと、もうそこに父の姿はなく、彼女が廊下をすいっと飛んで行くと、入口の扉が開いた病室がありました。

 彼女が部屋の中を覗いてみるいと、多くの人が集って、寝台を覗き込むようにして皆下を向いて俯いていました。

蛍さんは、誰か知った人がいるかしらとその人々の顔を眺めてみます。

しかし知ら無い人ばかりだと彼女が判断したその時です。

「ご臨終です。」

お医者様の声がしました。

蛍さんが声の方を見ると、 丁度白衣姿のお医者様が、身を屈めている人々の中から身を起こしたところでした。


ソルティ・ドッグ

2017-05-12 09:44:34 | 日記

 一番に思い付いた名前がこれでした。カクテルを他に知らないという事もあります。 

どうしてこの名前だけ知っているかというと、昔、学生時代に下宿の同期の皆で、学生が良く行く飲み屋さんにった時、

誰かがカクテルを飲んでみようと言い出し、このカクテルの名前を上げました。

有名なカクテルだから、嗜みとして知っておくといいよという事でした。

 それではと、皆で味見してみようと意見がまとまり、2杯くらい注文しました。(回し飲みです、お試しですから。)

下宿人には、ソルティドッグを飲んだことがある人が2人位いて、その人は別のカクテルを頼んでいました。

青やピンクだった気がします。名前は不明です。

 さて、皆でソルティドッグを飲んだ感想は、しょっぱい、塩が如何もね、酸っぱい、さっぱりしていて美味しい、等々、

いろいろでした。

私はというと、やはり塩の味を最初に感じ(当たり前ですね、グラスの周りに塩が付いているんですから)、

何だかさっぱりした酸味を感じる液体、瑞々しい新鮮な味、そしてやはりお酒の味、という感想だった気がします。

誰かが大人の味だと言っていましたが、確かに、当時はまだ分からない味でしたね。

 以降、カクテルは飲んでいないと思います。

先ず、私自身がバーに行くという事が無いという事や、

何かの会合の2次会で出かけても、私は水割りしか飲んだ事が無いというせいですね。

今度機会があれば、マティーニを飲んでみようかしら、

007のジェームズ・ボンドが頼んでいた気がします。オリーブも美味しそうですね。