Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、183

2017-05-20 19:48:25 | 日記

 父は口をへの字に曲げたままで、義弟の勢いに返答も出来ないままその勢いに飲まれていました。すると、

「やぁ、あんたさん、来てくれたのかい。」

病室の入り口で明るい声が響き、蛍さんの祖父が顔を見せました。

「あんたの威勢の良い声が向こうまで聞こえたから、私も心丈夫で急いで駆けつけて来たよ。」

祖父は嬉しそうに満足げな笑顔を浮かべると、

「朝ご飯がまだなんじゃないか、一緒にどこかで食べて来よう。」

と叔父を誘いました。叔父も祖父のこのにこやかで明るい対応に、

「やぁ、お父さん、久しぶりです。この前はお世話になりました。また、良いものを頂きましてありがとうございました。」

そう言って笑顔になると、2人で和やかに話を始めました。

 叔父は僕は朝ご飯は済ませて来ました。でも、お父さんが食べに行かれるならご一緒しましょう。

また商売の話しなど向学のために聞かせてください。この前の話の続きが聞きたいなぁと嬉しそうに語り掛けました。

 おお、うんうんと、祖父もご満悦の体で、じゃあそこの食堂でと、話がまとまったところで2人は蛍さんの父を振り返り、

「お前その子の事は頼んだよ。大事な孫なんだから、気を付けるんだよ。」

「兄さん、ちゃんと見てやってください。ホーちゃんは僕にとっても可愛い姪なんです。どうかよろしくお願いします。」

そう父と義弟に言い置かれて、蛍さんの父は連れだって仲良く行ってしまった彼らに、むすっとして、

「何だい。2人して。」

と、そっぽを向くのでした。

何が確りなんだ、何がちゃんと見てやってくださいなんだ、お父さんだなんて、誰がお前の親なんだ。

と、蛍さんの枕元でブツブツ言っていました。

 蛍さんには事情が分かりませんでしたが、急に叔父が現れたので驚いてしまいました。ほぼ半年ぶりに会った感じです。

何時も優しい叔父なので、久しぶりにその顔を見る事が出来た事は嬉しく思ったのですが、

目の前で父と叔父がどうやら喧嘩めいたことをしていたようなので、昨日の伯母と父の険悪な様子が再び思いだされて、

何だか酷く気が重くなってしまいました。

蛍さんは目を閉じるとまたすやすやと眠りの世界に入ってしまうのでした。

次に蛍さんが目を覚ましたのは、その日の午後に近い頃だったでしょうか。枕元には叔父が付き添っていました。


ダリアの花、182

2017-05-20 10:13:06 | 日記

 この叔父の立てた騒音で、何事かと父が病室に戻って来ました。

「やあ、君、来てたのか?」

父は真顔で驚いたように言うと、一寸緊張したような、気を張ったような面持ちになりました。

 如何してここが分かったのか、如何やってここまで来たのか?そんな事を父は叔父に聞いていましたが、叔父が

「姉さんから。」

と言うと、ははぁんとこれで分かったと、蛍さんの父は合点しました。

「それでは、あれは実家にいるんだな。これで漸くあれの行方が分かった。道理で此処にいないはずだ。」

多分、蛍さんの母は如何してよいか分からず、自分の実家を頼って里に駆け込んだものと思われます。

急を聞いた蛍さんの叔父が心配し、朝1番に病院へ駆けつけてくれたのでしょう。

 「君、バスで来たのかね?」

ああ1番バスで、そう叔父が父に興味無さそうに言うと、父は叔父の無気力な様子に如何したんだねと尋ねてみます。

「如何したって、…言っても。」

叔父は言い淀みました。

「こっちの方が如何したのかって聞きたいよ、姉さんの話ではてっきりホーちゃんは、」

そこ迄言って叔父は言葉を飲み込むのでした。

 「ああ、その件なら解決したんだ。」

「解決したというか、心配なかったんだよ、元々、いやぁ、ははは、実は勘違いでね。」

そう父が言うと、勘違い?そう言って叔父はふっと笑みを漏らすと、そんな事だろうと思った。そう言って父を睨むと、

「そっちは勘違いで済むけど、こっちはそうはいかないんだよ。」

向こうじゃ皆昨夜から一睡もしないでホーちゃんの事を心配していたんだ。夜通しだよ。みんなで如何なったんだろうって、

そっちに電話しても誰も出ないし、大丈夫なら大丈夫と、こっちに連絡くらいしてくれてもいいんじゃないですか、

「そうでしょう、お兄さん。」

そう義弟に言われ、詰め寄られて、父は青ざめて顔を強張らせました。

 「いやぁ、こっちもあれが何処へ行ったか、行方不明で困っていたんだよ。」

何処へ行ったか知らなかったんだと父が言うと、知らないって、それでは姉は捜索願でも出してもらってたんですか?

姉さんが内以外の何処へ行くというんです、知らなくても分かりそうなものだ。大体、あれって姉さんの事ですね。

ムッとしたようにそう叔父は言って、気に入らないなぁと小声で呟きました。それは父にも聞こえていました。

 「ホーちゃんもこんな事になっているし、姉さんの事も放りっぱなしだし、兄さんの所はどうなっているんだ。」

無責任な、一家の主がそんな事でいいんですか。と、義弟の憤懣やる方無い抗議は続きます。