頼子百万里走単騎 "Riding Alone for Millions of Miles"

環境学者・地理学者 Jimmy Laai Jeun Ming(本名:一ノ瀬俊明)のエッセイ

学会をなめるなよ(2015年4月)

2019-05-14 01:00:53 | 日記

“AIIBの誕生はアメリカにとって衝撃。中国が世界の王座に座るプロセスにあると考える人が増える。しかし、近い将来にと考えるのは誤り。中国には、自身が越えなければならない、あまりにも多くの課題。その核心が農村問題と農地問題。”

という、愛知大学高橋五郎先生のコメントをめぐり、とある華人研究者(経済学)からの批判が来たので、少し議論に付き合いました。

華人「日本人の漢文学者(加藤徹)によれば、中国の将来を正しく予測できた日本人はこれまでの経験では、一人もいない。AIIBの話について、論点をすり替える人が日本に多すぎます。参加なら参加、不参加なら不参加。余分のことを論じても無駄。この点に関して、イギリスなどは馬鹿ではないでしょう。漢文学者だから、いっていることがおかしいと思いません。おそらく、過去の事実と評論家や学者の議論を統計データでみれば、一人も正しく予測できていないのは事実です。中国の動向を黒幕のように論じるのは勝手にすればいいけど、そんなに単純明白だろう? AIIBはアジアインフラ投資を目的とする銀行です。中国は農業を含めて国内事情が深刻だから、AIIBをやれるわけがない。なんとわかりやすくて、単細胞のような仮説でしょうか。専門が違っても、事実を言っている学者の方が信用できると言いたいです。漢文学者だからといって、その見解が論外というのは違うと思います。漢文学者をバカにしていませんよね? それに、専門が経済学でしたら、本問題の論点を中国の内政問題にすり替えるのはまずないです。」

小生「AIIBをやること、王座に座ること、別物ですよ。王座に座りながら国内に奴隷制みたいな構造を放置したままになる、というのは客観的に理解できます。」

華人「それは日本のいつもの見方でしょう、目新しいものは一つもないです。〜〜したままになる、というのは予測ですよね?」

小生「中国からの具体的な見通しや動きが示されていません。改善されたときに何が予測されるのかについても。恐らく×農民人口の変化が伴うわけですから、副作用もあります。「したまま」のほうが地球環境的には問題がないのかもしれません。目新しいのではなく以前から指摘されてます。三農問題の具体的な解決策の見通しってあるんでしょうか。広大な国土なのに農業もあるアメリカ。当然農民もいますが、農業経営スタイルは別物です。中国はその道を選びますか。その場合、今の農民はどのように生きていきますか。都市住民のようになるのですか。すべての人社現象が予測の通りになるのではないが、社会経済のメカニズム研究は日々行われ、パーツパーツの知見は蓄積していきます。一つ一つの問題が先にどうなりえるのか。この可能性からかい離したような方向に、1,2の事象が偶然向かうことがあっても、すべての事象が向かうことが可能でしょうか。その「漢文学者」がレビューをちゃんとやっているかどうかです。「経済学者」はレビューをちゃんとやっていて、確実に言えることだけを述べている(理系的には、学者はそうあるべきなのだが)としたら、それは言い当てていないということにはならないのでは。」

華人「漢文学者(加藤徹のことらしい)をやはりなめていますね。その学者の著書を読んでみてはどうでしょうか。文学や漢文研究は一種の歴史研究でもあります、いい加減なことは言わないです。むしろ、数字を使って論理的に説明しています。」

小生「政府ではなくて中国を対象とする研究者の視点です。中国から言及はありますが、それでちゃんと解決するのか疑問、ということです。欧州でも、IIASAとかが世界規模の将来予測研究をしています。理系の人は理論、理屈、理詰めで納得できない場合、そこから先へは進みません。農業の最適化だけを考えれば、10億人くらいの農民の多くが、非常に狭い耕作地でわずかな収益を得て、残りの時間を都市での副業に費やす。食糧供給で最適化するなら、このスタイルはベストではない。では、農業を離れた農民は、どうなるのでしょう。」

華人「つい最近まで中国は先進国のように消費主導型の発展にシフトしないといけないと経済学者たちがいっていましたが、一転してやはり投資主導型を維持した方がいいと。」

小生「「選択と集中」はどの社会でも必要悪ですから否定しません。以前の日本のように一定均質化した社会では、そのひずみが見えにくかっただけです。今後は「選択されなかった人々」をどうケアすればいいか、そのコストとかも考えなくてはなりません。実態がわからなければ、信じることもなめることもできません。そのように決めてかかること自体が非科学的、妄想ではないですか。」

華人「農村問題と投資銀行の問題はどうつながっているのでしょうか。」

小生「財政は専門外である私にも、政府の財源を国家の優先課題にどう振り分けていくのか、が問題であることはよくわかります。投資銀行で得られた富を三農問題の解決に役立てるのであれば支持しますが、政府首脳はちゃんとそうしてくれるでしょうか。価値観の分かれる問題については、学会での投稿論文の審査と同じような「理詰め」だけで議論すべきだと考えています。主観が入ると不毛な戦争にしかならないので。」

華人「日本の研究者はなんでも自分の専門と結びついて考える傾向が強いです。だったら、学問の細分化をやめて、農学における投資学という学問を作ったほうがいい。日本は他の国をはるかに越して宇宙国になったかもしれません。」

小生「専門に近いか遠いかではなく、理詰めで説明できるかどうか。ただ分野に精通していない人よりは精通している人のほうが正しい情報を多く持っています。それは事実です。それゆえ、学会というものもある。」

華人「議論の初めに論点はどこなのかはっきりしないと議論しても意味がない。この問題、AIIBと農業の関係は私の知り合いの経済学者に聞いてみます。」

小生「ちゃんと研究している人なら、関係ない、ではなくて、結果的にこのような相関が考えられる、という意見を述べてくれると思います。地球環境予測の分野でも、我々は膨大な相関図を描きます。」

華人「私のような事実と結果のみで問題を判断するような人には値しないかもしれない。世にどのような成果を残せるのか、不毛な論争をしても無駄だと思って無駄の議論してしまったのかな。」

小生「価値観の相違や感情が支配的なナーバスな分野を議論する場合は、それに徹することが必要です。言えることだけを述べる。これが我々の基本姿勢です。」

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客観的な分析に対して主観をくだくだ、の次元です。日米に対する被害妄想を基礎として。正論は「三農問題を連想する人はいない、、、」などと。連想ではなく、高橋先生は社会システムとしての相関性を論じているのです。
加藤某の著作でそういっているから。という論文が出てきたら、レビューが不十分と判断されます。それだけに価値を見出すなら、リジェクトになるでしょう。学術論文を複数示せと書かれる。あの武田邦彦がこんな環境予測をしている、とだけ書いてあると同じにしか見えないので。
「AIIBとの関係は最後にもう一度言いますが、中国国内問題として論じられるのは間違いです。見識が違いますので、これ以上の議論はできません。」だそうです。国内か国際かで敷居を設ける議論はどこにもありません。すべて、地球規模の問題の一要素としてとらえます。個別の国の事情だから国際システム分析のパラメーターにしないということはありません。地球環境問題をシステムとして考える場合、個別の国の因子もすべて扱います。

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1 コメント

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Unknown (本人)
2024-06-10 00:40:09
日本人(および国外の)経済学者で正しく予想できた人はいない、とか、M大学の漢文学者K教授(専門家でも何でもない)がそのように言ってた、とか、誇らしげに愚説を振りかざしていたK大学の中国語教師(経済学)は今、中国経済の現状が小生のような素人の想像したとおりになっている現状をみて、過去の自身の言説をどう恥じ入っているのか。
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