頼子百万里走単騎 "Riding Alone for Millions of Miles"

環境学者・地理学者 Jimmy Laai Jeun Ming(本名:一ノ瀬俊明)のエッセイ

2016年5月シンガポール(ヒートアイランド対策国際会議)

2019-04-17 19:41:05 | 旅行

29日
 圏央道の開通で、成田行きのバスが便利になったと思いきや、時間が中途半端ゆえ、成田での待ち時間が長くなるだけであった。今回は、ソウル経由のアシアナを使ってみた。ハンギョレ新聞片手にマッコリを飲み、ビビンバを食す。韓国映画「暗殺」は大変勉強になる。綾瀬はるかが演じたスナイパーを彷彿とさせる全智賢。
 ソウルでの乗り換えは30分。成田からのフライトがガラガラで、CAを即席の韓国語教師にして楽しんでいたら想定外の落とし穴が。こんなところを経由するから、因縁の相手(同じ分野なのでやはり参加するのか)に、今回は搭乗口で接近遭遇。同じ飛行機に乗っているというだけで気分が悪い(恨み骨髄)。

Transit here. Final visit was March 2013. Good exercise of Korean conversation with CA.

 ソウルからのシンガポール便には、さすがに日本人はいなかったと思う。CAにもこちらの話す韓国語はサプライズだったろう。夕飯はサムパブ(葉っぱで豚肉を巻いて食べる)にした。中級韓国語の教科書を読み進めているうちにマッコリが回って爆睡。
 チャンギに到着。口を開くとしたら、シングリッシュかマンダリンか。幸い荷物は真っ先に出てきたので、(再び顔を合わせぬよう)速やかにゲートを出る。レートは街中がよいらしいので、空港では1万円分だけ。シンガポール版スイカを改札で購入。こちらで通話する相手もいないだろうから、SIMカードの購入は中止(2011年購入のアンドロイドは最近遅くて仕方がない)。地下鉄東西線の車内はガラガラ。

 最寄り駅から歩くこと数分、ほどなくチャイナタウンのはずれにある宿泊先に到着。フロントのおっさんは華人。シングリッシュで始めて途中からマンダリンにスイッチ。部屋は窓ありの12平米。A4サイズの窓が上方についているが、申し訳程度。日中の日射を考えればこれでいいのかもしれない。トイレ兼シャワー2平米は香港と同じく、シャワーを使えばトイレもびしょ濡れ。テレビはわずか3チャンネル。見る価値はなさそうだ。電源はBF。持参した万能プラグでは対応できず、フロントでレンタル。
 今回のミニマムのミッションは、31日午後の座長と1日午後の講演だけである。離日直前までいろいろやっつけ仕事にはまっていたので、仕上げをどこかでしなければ。

30日
 インドネシア華僑経営の朝飯やで甘い焼きサンド(温泉卵2個付き)とミルクティー(4ドル)。大陸からの出稼ぎ風女性スタッフに分量(物価は高いと思い込んでいたし、スー(4)がシー(10)と聞こえたので)を英語で聞いてみると、オーナーのおっさんに向かって「バンウオ(帮我)」と。英語がわからないのではなく、そんなことを心配して聞く人がいない故だろう。

 地下鉄東北線から環状線に乗り継ぎ、数駅で国立大学の最寄り駅に到着。ここからは学内の無料バスが複数系統出ている。10分とかからずに、会場のある大学中央に到着。学生の多数派は華人で、予想したより多くのマンダリン(標準的な発音ではない)が聞こえてくる。マレー系のムスリムも少なくない。共通語は英語というより、シングリッシュ(早口にして不自然なアクセント)だ。午前中は複数の基調講演がつづく。最先端の研究報告ではなく、一般向けの講演に近い。学術レベルでいえば、日本国内の研究集会のほうが総じて高い印象を受ける。ソウルの搭乗口で目撃してしまった人物の姿が会場にない。参加者名簿にも見当たらない。偶然同時期に別のミッションがあったということか。頭痛の種は一つ消滅。

 夕方、知人夫妻に招かれていたので、予約してくれたお店の最寄り駅(約1㎞)からタクシーを拾う。華人の運転手が行き先を聞いて乗車拒否。なかなか捕まらない。少し歩いて、マレー系ムスリムが運転手する車両を止める。ドアを開けるなり「アッサラーム・アライクム」。これでは相手も断りようがないだろう。時刻通りに到着。夫人が急きょ入院になってしまったので、旦那だけがやってきた。広東料理を食べながら、あれこれ有意義な情報交換。夫妻はともに日本の大学院に在籍した人であるが、日本人らしからぬ小生はマレーシア華僑みたいな印象なのだそうだ。
 ホテルに戻る途中で著名な中華街である牛車水を歩き回り、運動量は十分と見て、夜食のおかゆ(魚)と青菜炒めを食べる。アジア出張時のこういう習慣が、かつてメタボになった原因の一つなので、とにかく運動量とのバランスで決めている。屋台ストリートの狭い路地を、トライショー(自転車付きリクシャー)がかなりのスピードで走り抜ける。客は欧米人ばかり。

31日
 今朝の朝飯は魚団子のライスヌードル。絶品。チャイナタウンのバックヤードは美しくデザインされた緑の回廊となっている。雲が多いので太陽が見えないが、赤道直下を感じさせない快適さである。

 昼もラクサ。ここはヨーロッパから遠いので、参加者のほとんどはアジア(日本と中国、台湾、香港、シンガポール)。昨日から英語とマンダリンを半分ずつしゃべっている気がする。中国系の学生の発表は金太郎飴みたいなストーリーが多く、面白みに欠けた。字が小さくて読めない。指導教員がチェックしていないようだ。シンガポールからも地理学系と建築学系の両方から参加があり、仲が悪そうな印象を受けた。
 夕方のセッションで座長を務める。地中海諸国の演者が多い。キプロスにおける疫学調査(貧困世帯の空調問題)の報告は興味深かった。北キプロスは目下トルコの傀儡国家として分断状態にあるが、そのあたりの説明はなかったので、座長としてもそこに突っ込まざるを得なかった。前のセッションが大幅に遅れ、時間もかなり押している。座長のスキルが必要とされる場面が少なくない。夜の懇親会行きバスが出発する5分前になんとか終わらせ、聴衆を乗り場へ一斉に向かわせる。
 夜はなんとノンアルコール。モヒートに見えたドリンクは、ミント入りキュウリジュース。しっかり騙された。例によって、中国twitter微博などのフォロワー(参加学生ら)が増えた。ホテルに戻ったのは2130ころだったので、近くで肉骨茶(バクテー)を食す。ライスはつけない。本場の味。辛くするとなおうまい。

6月1日
 朝から雨。熱帯雨林気候帯特有の降水らしい。ドイツの大学からドイツ気象局(DWD)に引き抜かれた友人が、国際旅費の使いにくさを嘆いていた。年度末の定例二国間会議には、我々のほうで招聘したほうがよさそうだ。日本の国研にいる友人も、自分で取ってきた科研費が命綱だと言っている。講演の最終仕上げがいまひとつ。気がのらない、というか、学生の学位論文みたいな構成というよりは、大御所のレビューに近い内容。この齢になって学生みたいな話をするつもりはない。多少偉そうにレビュー講演でもしたほうが、いい貢献になるのかもしれない。他人の発表にあれこれツッコミを入れつつ、自身の講演も勢いでやってしまった。研究としての完成度はあまりないが、内容が人目を引くもの故、質疑がセッション後までつづいた。閉会式で、イタリアが「団体賞」を受賞した。参加者150名程度の国際学術集会で、団体賞とは手前味噌な。前回(2年前)は小生自身(履歴書にも書いている)を含めて日本代表団が受賞していることを忘れかけていた。

Rain of Af climate zone.

Award of country. Winner is Italy.

 夕方、一時間ほど運動してから、華人の友人とゲイランの屋台で南アジア式ムスリム料理を堪能する。ブリヤニ(羊肉ライス)6ドルとヤギのスープ4ドル。華人のビール売りおばさんも酒を置いていないはずの店内へどんどん入ってきて商売。そのあとで著名な国際的置屋街を散策。「越南楽園」なる名の店舗。ベトナムの女性ばかりなのだろう。店名を音読したら、門番の男が大声で「No! Chinese. Do not come.」と我々を恫喝。
我々「Not Chinese but we are Japanese.」
男「Japanese, No!」
 ちょっとツッコミたい場面であるが、客になるわけでもないのでスルー。以前、華人や日本人がトラブルにでもなったのか、あるいは、スプラトリー諸島の一件以降の国際情勢を反映してのことなのか。近くには、法輪功(大法)関係組織の事務所もあった。帰りはバスに乗ってみる。思ったより中華街は近かった。シンガポールはコンパクトだ。

Muslim dinner at the Geylang area. Mutton rice and capra soup.

2日
 朝から強い日差し。太陽を見ると、一瞬方向を読み間違える。北にあるものと認識するのに時間がかかるようだ。フライトは深夜なので、例のごとくフィールド調査に出かける。バスに乗り間違い、アラブ街に行くつもりが先にリトルインディアへ。下車して南インド料理(タミール風マトンカレー)で腹ごしらえ。ボリュームはあるがもたれないのでお勧めだ。インド人街を抜け、南東へ行くべきところ、南西へと歩いてしまい、(遠回りの末)ブギス経由でアラブ街へ。まもなく旧暦の端午の節句。屈原のハリボテ立像(ちゃち)が笑える。モスクでは正午の礼拝が始まっていた。しばし歩き回り、地中海風ムスリムカフェで休憩。店のおばさん(華人)は、小生を華僑と思って話していたが、携行していた「歩き方」を見つけ、日本人だったのかと驚いていた。トルコ式前菜(メゼ)とチャイ。物価は観光地。近くに、マレーシアへ往来するバスターミナルがあった。ジョホールから毎日通ったら大変だったのだろうか。その後オーチャードロードへ移動。オーチャードタワーに入って驚いた。ほとんどのテナントが華人系エロ按摩の類。

Tamil mutton curry and turkish meze.

 大雨になる前にと思い、マリーナベイ地区へ。時遅く、かなり降ってきた。地上200mのスカイパークからは湾岸開発の全貌や、熱帯性スコールの断面などが見えてためになった。傘は禁止らしいのだが、客はみなさしている。風は思ったほど強くない。周囲の建物は非常に斬新だ。
 ホテルで荷物をピックアップし、空港へ向かう。駅名のプレートを見ていたら、タミール文字の規則性に気がついた。タイ文字並みの難しさと思われる。駅のアナウンス(4か国語)で、マレー語のpleaseはhapi hapiであることを思い出した。タミール語はなんとも形容しがたい。ヒンディーよりも聞き取りにくく、カタカナで表記しにくい印象。買いたいお土産はあまりない。6時間のフライトの後、インチョンでも買いたいものがほとんどなかった。2時間ラウンジで休憩し、搭乗直前に海苔を爆買(思ったより高い)。
 成田で「Youは何しに日本へ」取材クルーに遭遇。毎日来ているのだろうか。
そういえば、欧米人のyouにばかり声かけてないか。華人だと偽ってインタビューを受けようかと思いついたが。

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5 コメント

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Unknown (本人)
2019-08-02 16:16:53
中学生に熱帯雨林気候(Af)を説明するならこういう写真もあったほうがいい。
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Unknown (本人)
2020-06-01 00:16:50
2014年の「団体賞」は日本が受賞して、小生も壇上にいたが、2019年はどこだったのだろう。開催国インドだったのか。閉会式にいたはずなのに記憶がない。居眠りしていたのか、帰りの交通手段(まさかリクシャーで空港へ?)を気にしていたのか。。。
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Unknown (本人)
2020-06-02 00:15:42
日本(つくば)の南インド料理屋でもこういう「皿」にしたら面白いが、廃棄物は増えるし、安定調達ができるか。
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Unknown (本人)
2021-05-31 15:20:33
シンガポールの華人が太っている理由は、、、
Dangerous late night snack for Chinese of Singapore
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Unknown (本人)
2023-06-07 00:09:57
たまっていた未執筆の論文をどんどん世に出し始めたのもこのころ。
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