「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和五年(2023)10月17日(火曜日)
通巻第7961号 <前日発行>
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アメリカはなぜ日本の「ラピダス」重視に傾いたのか
半導体設計のアーム社上場は8兆円、その90%株主は孫正義
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米国は台湾のTSMCや韓国サムスンの対中半導体輸出制限を緩和し、投資を容認する方向へ傾いた。
というのも、米国勢のインテルやマイクロンなどが一斉にバイデン政権の対中制裁は無意味だと噛みついたうえ、CSISは、「すでに中国は10ナノ生産に成功した」と分析した。おそらく2024年中には7ナノの半導体生産に成功するだろう。
となると、現在のバイデン政権の制裁はザル法である。
もっとも7ナノはすでにTSMC、SK、サムスン、インテルなどが達成しており、これからの半導体開発戦争は3ナノ、2ナノ、1・4ナノに移行する。独走態勢にあるのが台湾TSMCであり、日本のラピダスは2027年に千歳工場で、2ナノ生産体制に入る(ト予定されている)。
キオクシアは米WD(ウェスタン・デジタル)半導体部門と経営統合へ向かう。
キオクシアはメモリー半導体で三位、WDは四位。両者が統合すれば一位サムスンと二位のSKハイニックスを追い越すことになり、じつはこの統合はキオクシアが63%の株主、WDが37%となって日本有利になるのだ。
さて問題は台湾である。世界一の半導体技術を誇り、3ナノ量産に着手する台湾TSMCは、2ナノ半導体生産も、1・4ナノ開発もバイデン政権が補助金を付けたアリゾナ州ではなく、台湾で生産するとしている。
他方、中国は台湾侵攻の準備をなして台湾海峡では軍事演習に余念が無く、その危機は日増しに増大している。
あまつさえ、中国は台湾を侵攻し、TSMCの工場をそっくり頂くとし、その場合、米国はTSMCの工場を爆破破壊すると軍事専門家のシナリオにある。
アメリカが手のひらを返して日本重視に傾いた背景である。
台湾のTSMCにはカントリーリスクがあり、別の選択肢として日本が代替候補となった。アメリカはラピダスへの協力姿勢に転化したのだ。
(詳しくは拙著『半導体戦争 中国敗北後の日本と世界』(宝島社)参照)
令和五年(2023)10月17日(火曜日)
通巻第7961号 <前日発行>
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アメリカはなぜ日本の「ラピダス」重視に傾いたのか
半導体設計のアーム社上場は8兆円、その90%株主は孫正義
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米国は台湾のTSMCや韓国サムスンの対中半導体輸出制限を緩和し、投資を容認する方向へ傾いた。
というのも、米国勢のインテルやマイクロンなどが一斉にバイデン政権の対中制裁は無意味だと噛みついたうえ、CSISは、「すでに中国は10ナノ生産に成功した」と分析した。おそらく2024年中には7ナノの半導体生産に成功するだろう。
となると、現在のバイデン政権の制裁はザル法である。
もっとも7ナノはすでにTSMC、SK、サムスン、インテルなどが達成しており、これからの半導体開発戦争は3ナノ、2ナノ、1・4ナノに移行する。独走態勢にあるのが台湾TSMCであり、日本のラピダスは2027年に千歳工場で、2ナノ生産体制に入る(ト予定されている)。
キオクシアは米WD(ウェスタン・デジタル)半導体部門と経営統合へ向かう。
キオクシアはメモリー半導体で三位、WDは四位。両者が統合すれば一位サムスンと二位のSKハイニックスを追い越すことになり、じつはこの統合はキオクシアが63%の株主、WDが37%となって日本有利になるのだ。
さて問題は台湾である。世界一の半導体技術を誇り、3ナノ量産に着手する台湾TSMCは、2ナノ半導体生産も、1・4ナノ開発もバイデン政権が補助金を付けたアリゾナ州ではなく、台湾で生産するとしている。
他方、中国は台湾侵攻の準備をなして台湾海峡では軍事演習に余念が無く、その危機は日増しに増大している。
あまつさえ、中国は台湾を侵攻し、TSMCの工場をそっくり頂くとし、その場合、米国はTSMCの工場を爆破破壊すると軍事専門家のシナリオにある。
アメリカが手のひらを返して日本重視に傾いた背景である。
台湾のTSMCにはカントリーリスクがあり、別の選択肢として日本が代替候補となった。アメリカはラピダスへの協力姿勢に転化したのだ。
(詳しくは拙著『半導体戦争 中国敗北後の日本と世界』(宝島社)参照)