●意外なビッグニュースを3本
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和七年(2025年)9月3日(水曜日)弐
通巻第8930号
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★休刊のお知らせ 小誌は明日九月四日~五日が地方講演旅行のため休刊です
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中国人学生、留学先をロシアへシフト
何を学ぶ? 暗号アルゴリズム、宇宙工学?!
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9月3日、北京の軍事パレードにプーチン大統領が出席し、習近平、金正恩と並んで中国の超音速ミサイルなどの先端ハイテク兵器を“鑑賞”する。
大きなうねりが起きていた。米国が中国人留学生のビザを制限してから、それまで大ブームだった米英、豪、NZへの留学生は微減し、一方で日本への留学が増えた。ところが倍増したのがロシアへの留学である。
ロシアは中国人にとって数学や科学を学ぶには良いが、野心的な留学生が志向する半導体設計や量子コンピューティングを学ぶには適していないとの評判がある。
ロシアに留学する中国人学生の31%がロシア語、22%が経済経営学、29%がその他の人文科学を学んでいると所轄官庁の統計はいう。技術、医学、自然科学を専攻しているのはわずか18%である。ロシアが航空力学、素粒子物理学、石油精製、芸術といった学術面で強みを持つ分野とは相反する現象である。
ロシアのヴァレリー・ファルコフ科学高等教育大臣は「2024~2025年度に5万6000人を超える中国人学生がロシアの大学に入学し、他方、2万1000人を超えるロシア人学生が中国で学ぶ」と述べた。
事実、中国人学生のロシア領事館へのビザ申請が倍増した。ファルコフ大臣は、「数学、物理学、化学、地球科学、生命科学における連携促進のため、共同基礎研究所を設立する計画があり、また学位・学位の相互承認に関する政府間協定案も最終決定に近い」と述べた。
「前言撤回、朝令暮改」のトランプ大統領は8月26日に一転して、「60万人の中国人留学生を米国に受け入れる」とした。2023~24年度に米国に留学した中国人留学生は277,398人。
したがって60万という数字はその2倍以上。トランプの計算によれば、海外留学生の最大のグループが中国からであり、年間140億ドル以上の貢献になる。
授業料は地元の学生より3 倍から 4 倍高い。 トランプは「留学生がいなければ下位15%の大学は廃業してしまう。中国人留学生は米国の大学にとって非常に重要だ」とリアルな数字を挙げた。
☆○◎☆み◎☆◎○や○☆◎○ざ☆○◎☆き☆◎☆□
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トランプの長男と次男が韓国へ所謂「トランプコイン」の売り込み
トランプ一家の暗号資産は本業の不動産資産を超える?
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トランプ大統領の次男エリックは9月9日に韓国で開催される「アップビットDカンファレンス」で講演する。演題は「暗号通貨ビジネス」に関したテーマである。
次いで長男のドナルド・トランプ・ジュニアが9月22日に「韓国ブロックチェーンウィーク」で基調講演を行う予定である。
トランプ兄弟がそろって韓国入りする背景は何か?
トランプファミリー挙げての暗号通貨ビジネスは、破竹の進撃。大統領家族の利権に群がる世界の投資家は中国から中東諸国の富豪に拡がり、彼らはなにがしかの計算があって集中的に、所謂“トランプコイン”に投機している。
最近上場された“トランプコイン”とは「ワールド・リバティ・フィナンシャル」(WLFI)が基軸だが、これらトランプ家の暗号通貨保有額は約50億ドルと推定される。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、トランプ一家はWLFIトークンの総発行量の25%を保有している。今やトランプ家最大の金融資産でなり、本業の不動産の価値を上回る可能性があるという。
韓国の暗号通貨の主要取引所は、すでに「WLFI」を上場した。
「トランプ一家との強い結びつきから、このコインは大きな注目を集めています」と業界関係者は述べる。
「しかし、コインの価値はトランプ氏の個人ブランドに完全に結びついているようです。大統領の任期が終われば、あるいはそれより早く、熱狂は冷めるかもしれません」(「ザ・コリア・タイムズ」、9月2日)
https://www.koreatimes.co.kr/economy/cryptocurrency/20250902/trump-familys-crypto-push-lands-in-korea
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米商務省がTSMCならびに韓国の半導体メーカーに対して
VEU(検証済み最終使用者)を取り消すと発表、動揺が拡がる
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米国商務省は、台湾のTSMCと韓国のサムスン電子とSKハイニックスに対し、「検証済みエンドユーザー(VEU)」ステータスの失効を通知した。免除措置は4ヶ月後に失効する。
しかし、いまごろ何故?
TSMCは声明で、「TSMCは米国政府から、2025年12月31日をもってTSMC南京工場に対するVEU認可を取り消すとの通知を受けた。状況を評価し、米国政府との協議を含む適切な措置を講じ、TSMC南京工場の操業中断がないよう引き続き全力で取り組む」とした。
米商務省は、「以後、操業維持に必要なライセンスを発行する」としているが、ライセンス取得までの待ち時間が懸念材料である。げんじつに申請は滞留しており、官僚的な遅ればかりが原因ではない。政治的意図が濃厚である。
サムスンやSKハイニックスと比較すると、TSMCの中国における製造拠点は比較的小規模、南京工場は旧世代16ナノ技術を採用している。韓国企業2社に対しての輸出管理免除理由は「米国企業を「競争上の不利な立場」に置く「輸出管理の抜け穴」を米国が塞ぐ目的だとした。SKハイニックスが後に買収した中国・大連の旧インテルの工場のVEU指定も取り消した。
このVEU(検証済み最終使用者)失効が発効すると、中国工場への半導体製造装置メーカーは、逐一、ライセンスを取得する必要がある。高度な製造装置ばかりかスペアパーツ、製造工程で消費される化学物質まで、あらゆるものが含まれるのだ。
とくに影響が大きいのは韓国のサムスンとSKハイニックスで、それぞれが3兆円規模の投資をしている。サムスンの西安工場は世界のNANDフラッシュメモリ生産量の約35%を占めている。SKハイニックスの無錫工場は世界のDRAM生産量の40%を占めている。
半導体製造装置はアプライドマテリアルズ、ラムリサーチ、KLAテンコールといった米国企業によって事実上独占されているので他国製の装置に置き換えることは不可能。
サムスンとSKハイニックスの中国工場は閉鎖されるか、低価格帯の製品しか生産できなくなる。
具体的な対中半導体規制戦略の一環だろう。
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令和七年(2025年)9月3日(水曜日)弐
通巻第8930号
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★休刊のお知らせ 小誌は明日九月四日~五日が地方講演旅行のため休刊です
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中国人学生、留学先をロシアへシフト
何を学ぶ? 暗号アルゴリズム、宇宙工学?!
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9月3日、北京の軍事パレードにプーチン大統領が出席し、習近平、金正恩と並んで中国の超音速ミサイルなどの先端ハイテク兵器を“鑑賞”する。
大きなうねりが起きていた。米国が中国人留学生のビザを制限してから、それまで大ブームだった米英、豪、NZへの留学生は微減し、一方で日本への留学が増えた。ところが倍増したのがロシアへの留学である。
ロシアは中国人にとって数学や科学を学ぶには良いが、野心的な留学生が志向する半導体設計や量子コンピューティングを学ぶには適していないとの評判がある。
ロシアに留学する中国人学生の31%がロシア語、22%が経済経営学、29%がその他の人文科学を学んでいると所轄官庁の統計はいう。技術、医学、自然科学を専攻しているのはわずか18%である。ロシアが航空力学、素粒子物理学、石油精製、芸術といった学術面で強みを持つ分野とは相反する現象である。
ロシアのヴァレリー・ファルコフ科学高等教育大臣は「2024~2025年度に5万6000人を超える中国人学生がロシアの大学に入学し、他方、2万1000人を超えるロシア人学生が中国で学ぶ」と述べた。
事実、中国人学生のロシア領事館へのビザ申請が倍増した。ファルコフ大臣は、「数学、物理学、化学、地球科学、生命科学における連携促進のため、共同基礎研究所を設立する計画があり、また学位・学位の相互承認に関する政府間協定案も最終決定に近い」と述べた。
「前言撤回、朝令暮改」のトランプ大統領は8月26日に一転して、「60万人の中国人留学生を米国に受け入れる」とした。2023~24年度に米国に留学した中国人留学生は277,398人。
したがって60万という数字はその2倍以上。トランプの計算によれば、海外留学生の最大のグループが中国からであり、年間140億ドル以上の貢献になる。
授業料は地元の学生より3 倍から 4 倍高い。 トランプは「留学生がいなければ下位15%の大学は廃業してしまう。中国人留学生は米国の大学にとって非常に重要だ」とリアルな数字を挙げた。
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トランプの長男と次男が韓国へ所謂「トランプコイン」の売り込み
トランプ一家の暗号資産は本業の不動産資産を超える?
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トランプ大統領の次男エリックは9月9日に韓国で開催される「アップビットDカンファレンス」で講演する。演題は「暗号通貨ビジネス」に関したテーマである。
次いで長男のドナルド・トランプ・ジュニアが9月22日に「韓国ブロックチェーンウィーク」で基調講演を行う予定である。
トランプ兄弟がそろって韓国入りする背景は何か?
トランプファミリー挙げての暗号通貨ビジネスは、破竹の進撃。大統領家族の利権に群がる世界の投資家は中国から中東諸国の富豪に拡がり、彼らはなにがしかの計算があって集中的に、所謂“トランプコイン”に投機している。
最近上場された“トランプコイン”とは「ワールド・リバティ・フィナンシャル」(WLFI)が基軸だが、これらトランプ家の暗号通貨保有額は約50億ドルと推定される。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、トランプ一家はWLFIトークンの総発行量の25%を保有している。今やトランプ家最大の金融資産でなり、本業の不動産の価値を上回る可能性があるという。
韓国の暗号通貨の主要取引所は、すでに「WLFI」を上場した。
「トランプ一家との強い結びつきから、このコインは大きな注目を集めています」と業界関係者は述べる。
「しかし、コインの価値はトランプ氏の個人ブランドに完全に結びついているようです。大統領の任期が終われば、あるいはそれより早く、熱狂は冷めるかもしれません」(「ザ・コリア・タイムズ」、9月2日)
https://www.koreatimes.co.kr/economy/cryptocurrency/20250902/trump-familys-crypto-push-lands-in-korea
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米商務省がTSMCならびに韓国の半導体メーカーに対して
VEU(検証済み最終使用者)を取り消すと発表、動揺が拡がる
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米国商務省は、台湾のTSMCと韓国のサムスン電子とSKハイニックスに対し、「検証済みエンドユーザー(VEU)」ステータスの失効を通知した。免除措置は4ヶ月後に失効する。
しかし、いまごろ何故?
TSMCは声明で、「TSMCは米国政府から、2025年12月31日をもってTSMC南京工場に対するVEU認可を取り消すとの通知を受けた。状況を評価し、米国政府との協議を含む適切な措置を講じ、TSMC南京工場の操業中断がないよう引き続き全力で取り組む」とした。
米商務省は、「以後、操業維持に必要なライセンスを発行する」としているが、ライセンス取得までの待ち時間が懸念材料である。げんじつに申請は滞留しており、官僚的な遅ればかりが原因ではない。政治的意図が濃厚である。
サムスンやSKハイニックスと比較すると、TSMCの中国における製造拠点は比較的小規模、南京工場は旧世代16ナノ技術を採用している。韓国企業2社に対しての輸出管理免除理由は「米国企業を「競争上の不利な立場」に置く「輸出管理の抜け穴」を米国が塞ぐ目的だとした。SKハイニックスが後に買収した中国・大連の旧インテルの工場のVEU指定も取り消した。
このVEU(検証済み最終使用者)失効が発効すると、中国工場への半導体製造装置メーカーは、逐一、ライセンスを取得する必要がある。高度な製造装置ばかりかスペアパーツ、製造工程で消費される化学物質まで、あらゆるものが含まれるのだ。
とくに影響が大きいのは韓国のサムスンとSKハイニックスで、それぞれが3兆円規模の投資をしている。サムスンの西安工場は世界のNANDフラッシュメモリ生産量の約35%を占めている。SKハイニックスの無錫工場は世界のDRAM生産量の40%を占めている。
半導体製造装置はアプライドマテリアルズ、ラムリサーチ、KLAテンコールといった米国企業によって事実上独占されているので他国製の装置に置き換えることは不可能。
サムスンとSKハイニックスの中国工場は閉鎖されるか、低価格帯の製品しか生産できなくなる。
具体的な対中半導体規制戦略の一環だろう。